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鉱物の部屋へのいざない

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ゲーテ

2015-07-10 12:57:37 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「ゲーテ」です。「ゲーテ」とはあの有名な文学者の「ゲーテ」の事で、自然科学者でもあって、鉱物の名前「針鉄鉱」(goethite ゲーサイト)にもなっているくらいで、鉱物好きには馴染みの名前だと思います。(ゲーサイトはこのブログでも「カコクセナイト」と「カコクセナイト2,3」の時に登場しております。)

昨日、ずいぶん前から積読状態だった「ゲーテ 地質学論集・鉱物篇」(2010年 ちくま学芸文庫)を取り出して来て、お客様のいない店番中にサラッと読みました。私の店番中の読書は逆説的ながら至福の時間です。それは店をやっている副産物として与えられた貴重な時間だと思っています。

私にとってこれまで「ゲーテ」は偉大な存在だったと思います。「若きウェルテルの悩み」や「ファウスト」などちゃんと読んだ訳ではありませんでしたが、「ゲーテ」の業績についてはある程度は知っていたと思います。例えば、歴史上の天才たちの知能指数ランキングで1位になっている事や植物のつるの観察から直感的に螺旋形を生命の本質として捉えていた事、等々、「ゲーテ」には一目置いていたと思います。鉱物趣味的にも鉱物の名前にもなっている事から「ゲーテ」は尊敬すべき存在だったと思います。

そのような「ゲーテ」の書いた鉱物に関する文献は必読に値すると思っていましたので、その文庫本が出た時は即買いしました。ただ、当時は即買いはしたものの、パラパラとページをめくってみただけでしっかりと読むべき順位は低いと直感してしまった記憶が残っております。そのような本だったのですが、昨日、たまたま自宅の書庫でその本が目に付き、読んでみるか、と思ってしまった次第です。

読後の感想は正直、読むに値しない本という印象です。「ゲーテ」の研究者ならばともかく、地球科学者ゲーテという人物像は陳腐な存在で、真剣に読むに値しない本だと思いました。形態学的持論は理解できるものの、その文学的空想は単なる詩的直観にすぎないものです。それは「ゲーテ」の時代の考え方であって、科学史的にもそれほど意義があったとは思えません。そういう意味で、消耗品的な書籍の一部、というような位置付けになると思います。

それでも良いのです。学問的には哲学や数学に比べると地質学や地球科学の分野は遅れていたような気がします。それは地球そのものを対象としているからで、自然界は複雑で謎だらけだからです。「ゲーテ」といえどもその時代の人物です。現代から見るとそれ以上でもそれ以下でもありません。

その本を読んでいて素朴に思った事がひとつあります。それは「ゲーテ」が収集した鉱物コレクションの存在です。調べてみると、どうも19,000点もの鉱物標本が現存しているらしく、それらをいつか、見てみたいものだと思いました。

「ゲーテ」の書いた本よりも「ゲーテ」の鉱物コレクションの方に興味が移ってしまいました。



ゲーテ地質学論集・鉱物篇 (ちくま学芸文庫)
クリエーター情報なし
筑摩書房
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あんちょこ

2015-07-02 12:24:04 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「あんちょこ」です。「あんちょこ」とは学校の教科書などを解説した「虎の巻」の事です。もしかすると「あんちょこ」も「虎の巻」も既に死語になっているのかもしれません。それは「教科書ガイド」と言った方が適切かもしれません。

「石の華」を始めた頃、その頃は純粋な鉱物趣味のお客さんは少なく、お客さんの大半はいわゆるパワーストーン系の方々だったと思います。その頃、お客さんから必ず尋ねられる事があって、それは石の意味とか効能についてだったと思います。私はそういった事に基本的に興味がなかったので、最初は戸惑いましたが、次第にそれなりの対応をして行きました。そういった時に役に立ったのが石の意味とか効能を一覧表にしてある解説シートです。そのシートを「あんちょこ」と称して使っていました。

今ではそういったお客さんも減り、最近ではその「あんちょこ」を使うケースも無くなりました。どうもようやくそのような「あんちょこ」は必要なくなってきたのだろうと思います。

そのかわり、といっては何か変なのですが、そのような「あんちょこ」とは別の、本来の意味の「あんちょこ」が欲しいと思っている今日この頃です。

その「あんちょこ」とは何かと言うと、「結晶学・鉱物学」の「あんちょこ」(教科書ガイド)の事です。

実は、先日「結晶学・鉱物学」(共立出版)という本を購入したのですが、その本の内容が文系出身の私には難しすぎるのです。その本は「現代地球科学入門シリーズ」の第11巻となっており、大学の専門分野の学生向けの教科書的な本なのですが、興味深い内容の本なので、その本の「あんちょこ」的な本が出てこないものかと思っております。

鉱物趣味が高じるとどうしても避けて通れないのが「結晶学・鉱物学」の知識だと思います。特に「結晶学」には数学の「群論」が必要だと思われますので、「群論」関連の本を何冊か読もうとしましたが、数学の専門書は難解なものが多く、どうしても積読状態になってしまっています。そのような「群論」の「あんちょこ」も切に欲しいと思っております。

「現代地球科学入門シリーズ」の冒頭、「刊行にあたって」の中の文章に多くの科学の書籍が「科学の進歩に伴って急速に時代遅れになり、専門書としての寿命が短い消耗品のような書籍が増えています。」とありました。確かに、科学の分野では数多い書籍の大半はそのような位置付けにされてしまうのだろうと思います。ただし、そのような中でも歴史的に名著という評価を受ける書籍も多々あると思います。

文系で趣味として鉱物を楽しむ私のような存在にとっては、古代ローマの「プリニウスの博物誌」やヨハネス・ケプラーの「宇宙の神秘」などの書籍は決して消耗品ではありません。その内容の科学的正しさよりもその考え方そのものを楽しむのです。それらから科学的真実を学ぶのではなく、文学作品として、芸術鑑賞するのです。

鉱物趣味も趣味です。そこには単なる学習だけではなく楽しみが必要です。

専門書を楽しむ為の「あんちょこ」が欲しい今日この頃です。



結晶学・鉱物学 (現代地球科学入門シリーズ 11)
クリエーター情報なし
共立出版





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