今日は「黄銅鉱1」です。
今、思い出しましたが、このブログを始めた初期に「黄銅鉱」というタイトルで一度書いておりました。そのタイトルとは別の意味で「黄銅鉱1」とします。今日は国産の黄銅鉱です。
尾小屋鉱山は銅の鉱山でしたので、かつては大量の黄銅鉱を産出したはずです。それにも拘わらず、何故か?記憶に残っているような素晴らしい黄銅鉱の結晶を見た事がありません。それらの黄銅鉱は標本にされるよりも産業用の銅として精錬されてしまったのでしょうか?それとも尾小屋鉱山には立派な標本がなかったのでしょうか?私が知らないだけでどこかに潜んでいるのでしょうか?もしかすると尾小屋鉱山近辺に密かに隠されているのかも知れません。分かりません。ただ、黄銅鉱は塊状で産出する事が多いので黄鉄鉱のような立派な結晶には成りにくいものです。
私がこれまでに見た事のある尾小屋鉱山産の黄銅鉱で記憶に残っている標本は兵庫県のシルバー生野で見たものだけです。それと、結晶ではありませんが、巨大な塊状の黄銅鉱を小松の「赤新」という焼肉屋さんで見た事があります。それは10年位前の事です。それはその店には今はもうありません。その黄銅鉱は鉱山稼働当時の鉱夫が飲み代の代わりに置いて行ったもの、という話でした。
尾小屋鉱山産の黄銅鉱の美結晶、いつか見てみたいものです。
さて、今日は国産の黄銅鉱です。
栃木県足尾銅山 産 黄銅鉱(Chalcopyrite)
これは有名な足尾銅山の黄銅鉱です。黄銅鉱の結晶の集合体です。何となくハート型に整形してあるように見えます。
三重県紀州鉱山 産 黄銅鉱(Chalcopyrite)
これも有名な紀州鉱山の黄銅鉱です。細かい水晶のクラスターの上に黄金に輝いて黄銅鉱がのっています。このようなバランスも好ましいものです。
このふたつは標本市場で入手したものです。
私は足尾銅山にも紀州鉱山にも観光として行った事があります。両方に共通していた事はかつての鉱山用のトロッコを観光用として復活させていた事です。私は鉄ちゃんではないのですが、トロッコ電車に乗ると何となく高揚してしまいます。トロッコ電車には人を童心に帰してしまう不思議な魅力があると思います。
足尾銅山にも紀州鉱山にも博物館があり、鉱物標本が展示してありました。そのような展示品で目の保養をした後はミュージアム・ショップで標本を購入したくなります。しかし、両方とも買いたくなるような標本はありませんでした。鉱物標本は何故か?現産地では売っていないのです。それは絶対的な供給量不足のせいかも知れません。国産鉱物の標本は貴重なのです。
国産の黄銅鉱の良品は特に入手困難です。例えば荒川鉱山産や宮田又鉱山の三角式黄銅鉱の結晶等はとてつもない値段が付いています。
実は、かつての日本産の黄銅鉱は世界的にも良標本として有名だったそうです。現在では標本市場でも流通する事が少ないのですが、信じられないほどの黄銅鉱の結晶が存在していたようなのです。
そう言えば、関西のSさんから三角定規大の三角式黄銅鉱の結晶の話を聞いた事があります。見てみたいものです。
三角式黄銅鉱に関しては砂川一郎さんの論文があります。それはWeb上でも見る事が出来ます。論文のタイトルは「所謂三角式黄銅鑛に就いて」(地質調査所月報第2巻第6号 1949年)です。その論文には結晶形態の変化図等も載っており非常にレベルの高い内容になっております。ご興味のある方は是非ご覧になってみて下さい。
三角式黄銅鉱ではありませんが、正三角形の正四面体結晶に見える黄銅鉱があります。
新潟県白板鉱山 産 黄銅鉱・方鉛鉱(Chalcopyrite/Galena)
この標本は正四面体の黄銅鉱と正六面体の方鉛鉱が貫入しているように見えます。なかなか味のある標本だと思います。白板鉱山産の鉱物標本は供給量が多いせいか、比較的安価に流通しています。
標本の価格は需要と供給のバランスで人が決めます。希少性の高いレアものの値段はどうしても高くなってしまう傾向があります。
私の価値基準は一般的な価値基準よりも、見た目の形や色の美しさに重点を置いています。レアものでも見た目重視の価格設定をしています。例え希元素鉱物でも興味の薄いものの値段は安く設定してしまいます。原価は関係ありません。
鉱物標本に絶対的価格基準はありません。私と同じような価値基準の方であれば、お店には一般の流通価格からは考えられないレベル・価格の標本も中にはあると思います。「石の華」は鉱物標本のセレクトショップだと思っています。「これがこんな値段?!」と思うような掘り出し物を探しに来て下さい。お待ちしております。