今日の話題はプラトン立体です。本当は昨日書こうと思っていたのですが、昨日は天気が良かったので、JRの車窓から見た白山の影響で白山の話題に寄り道してしまいました。
プラトン立体の話題もたくさんあるのですが、今日はその中からヨハネス・ケプラーの宇宙コップの図版の話題にします。
この図版は澁澤龍彦さんの「胡桃の中の世界」という文庫本の中にある「プラトン立体」というエッセーに出てくる図版です。この有名な図版はヨハネス・ケプラーの奇妙な太陽系モデルで、五つのプラトン立体とその内接・外接円との関係を当時発見されていた惑星の軌道と一致しているというアイデアをモデルにしたものです。
私は澁澤龍彦さんが使用したこの図版を宮崎興二先生の「多面体と建築」という本で見つけました。
実はこの有名な図版は原本の裏写りされた図版なのです。
この図版がヨハネス・ケプラーの「宇宙の神秘」に出てくるものです。図版の左右が逆になっており、下の台座の部分もしっかり付いております。
どうも澁澤龍彦さんは宮崎興二先生の「多面体と建築」を読んでいるし、同じ図版を使っているようです。
その事実はすぐに判明しました。
2006年に国書刊行会から「書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録」という本が出ました。私は澁澤龍彦さんの書斎を一冊の本にまとめたその本を買いました。その本は澁澤龍彦さんの蔵書の目録で一万余点の書目の一覧表です。
その本を見ていると澁澤龍彦さんは文学者だったので文学関連の本が多い中に、一冊、自然科系の宮崎先生の「多面体と建築」があったのです。
恐らく、澁澤龍彦さんは「多面体と建築」の図版をそのまま使ったのだと思われます。
実は2008年の年初に京都大学総合博物館で「数学と芸術」という身近な材料で多面体オブジェを作ろうというイベントがありました。私は名古屋の阿竹克人さんとそのイベントに参加しました。
その時に宮崎興二先生にお会いし、澁澤龍彦さんの「胡桃の中の世界」のケプラーの宇宙モデルの図版の話をしました。
宮崎興二先生は澁澤龍彦さんの存在はご存じでしたが、交流はなく、さらに「胡桃の中の世界」という本の存在もご存じありませんでした。
宮崎興二先生は宇宙コップの図版は二つある、とおっしゃいました。そして「プラトン立体」というエッセーに出てくる「エディンバラの二十面体の日時計」の写真を見て、それを知らないので興味がある、という事をおっしゃいました。先生の興味は図版のことより、自分の知らない多面体物件の方にあられるようで、どうも「胡桃の中の世界」を入手されようとしているようでした。
宇宙コップの図版の裏写りの謎はそのままになっております。