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鉱物の部屋へのいざない

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ヴェンツェル・ヤムニッツァー

2018-09-07 13:44:05 | 日記・エッセイ・コラム
唐突ですが、皆さんはヴェンツェル・ヤムニッツァーをご存知だったでしょうか?正直、私はこれまで知りませんでした。

ヴェンツェル・ヤムニッツァー(1508-1585)はウィーン生まれ、ニュルンベルクで活躍した金細工師で、当時は非常に有名な人物だったそうです。1568年に「正多面体の透視図」という驚くべき書物を出版します。その本には五つの正多面体に母音字が割り振られていて、それぞれの母音字の領域には24枚ずつの変形多面体の図面が収められています。24という数はギリシア文字のアルファベットの文字数である24に因んで定められたものと思われます。どうでしょうか?その書物は多面体マニアなら思わず唸ってしまうトンデモ本だと思います。(あらゆる形は正多面体とその派生多面体で表現できる。)

これはプラトン立体とも呼ばれる五つの正多面体を五つのアルケー(土、空気、火、水、宇宙)という万物の根源とみなしたプラトン主義の多面体理論をさらに進化させ、万物を表現する文字にも呼応させたものという解釈ができます。私は初めて知りました。

実はこの事を知ったのは「ルネサンスの多面体百科」(丸善出版 デヴィッド・ウエィド著 宮崎興二編訳)を読んだからです。この本は驚くべき多面体の本でした。最初は日本史の関ヶ原合戦の時代以前のルネサンス期のものでありながら、コンピュータを使ったかのような精密な多面体の図版の数々に驚きました。それは、東京理科大学の近代科学資料館で見た明治期の菱田為吉(1868~1943)の多面体木工を見た時の驚きに近いものがあります。多面体模型はコンピュータ無しでもできるのです。

また、そのような驚きはまだ初期の驚きであって、ヴェンツェル・ヤムニッツァーの世界観のアイデアには唸りました。そして、さらに、あのヨハネス・ケプラー(1571-1630)の多面体太陽系模型(五つのプラトン立体と内接かつ外接できる球体との多重入れ子構造)もヴェンツェル・ヤムニッツァーの影響を受けていたらしいのです。それはヨハネス・ケプラーもヴェンツェル・ヤムニッツァーの著書「正多面体の透視図」を持っていたらしいのです。そのような宇宙の概念に心を奪われていたのはその本から着想を得ていたからだとも言われているらしいのです。

正多面体は単に美しいだけではなく、ミクロの世界からマクロの宇宙にまで万物に通底しているという世界観、トンデモながらも実に美しい思想だと思います。

そう言えば、秋山仁さん、中川宏さん、佐藤郁朗さんらの発見したペンタドロン(立体の元素)を思い出します。「平行多面体は元素数1である」、最初は何のことかわかりませんでしたが、その内容を知って唸った事を思い出します。

それから、マッチ箱を押しつぶしたような平行四辺形あるいは菱形の結晶体である方解石の外形が多様である事、鉱物の世界の多様性とも何か?関係があるような気がしております。

最後に今日の写真です。





これはデュモルチエライトで出来た「悪魔の星(エッシャーの星型)」とも呼ばれる菱形12面体の星型のパズルです。ヴェンツェル・ヤムニッツァーの話題に因んで出したいと思います。

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