西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

辻原 登著『発熱』を読む

2006-04-16 | 生活描写と読書・観劇等の文化
辻原登著『発熱』を文庫本2冊(文春文庫)で読んだ。「日経新聞」に連載されたもののようだ。辻原さんの本は初めて読む。数日前にラジオで辻原さんの話しを聞いていたので(4月14日ブログ参照)、一定の先入観もあったが、楽しく読んだ。経済界の黒幕二人の対決を背景に、(呉周平:慶大幼稚舎、外務省からコンサルへ)という人物を介して、東大法卒でアメリカ仕込の30歳台のファンド・マネージャー(天知龍)が日本の証券会社や銀行の不良債権問題にトレーディングの妙を尽くして立ち向かうという大きな筋、生まれ育ちの中に親父が東工大建築卒であったが亡くなった、というのがあるが追求がなく少しつまらない。パルテノン神殿や、ガウディの塔(サグラダ・ファミリアであろうー私注)、ル・コルビュジェのサヴォア邸に行った話も出てくるのに・・。同じレベルの経済人(穴吹彰:慶大幼稚舎、呉と同期)と花柳界の二人の女性(綾=母の友人、お茶の水女子大卒、母の死後、学費を出したスポンサー、後に最後の恋人と風子=暴走族時代の妹分、「敵」穴吹の囲い者)+αの女性も絡めて、全国幾つかの土地(原点に加茂町の浄瑠璃寺・・)を行き来し、荘子、源氏物語、シェークスピア、芭蕉、蕪村なども引用、教養になる。花のことも描いている。私としてデリバティブについても少しは勉強になった。まあ、話として「挫折」で終るが、本当の「中枢」=保守派大物政治家が全然出てこないのはリアリティにやや欠け一寸つまらなかった。次を期待したい。
ところで、筆名・辻原 登(つじはら・のぼる)という名の私流の覚え方、解釈:「辻」は四辻、Ⅹ軸Y軸の交点・原点、「原」は原っぱで平面的広がり、「登」は上に登るZ軸である。即ち、名前全体として、三次元空間全体と言う意味だ。