カルテ番号 そ・6 （13）
次の週に再び風間陽水の治療院に行った。
そして、教えて欲しい事を幾つか訊ねた。
「どうしたら悪影響を受けないようにできますか？」
風間陽水の答えは単純ではなかった。
「良い影響だろうと悪影響だろうと受けるようにできています。
この世に存在しているという事は、影響を受ける為ともいえます。
その影響を活かすかどうかが問題であり、良い悪いは問題ではないと思いますよ」
宗田泉はその考え方をしたことがなかった。
この世には良いモノや良い人や良い影響がある。
そして悪いモノや悪い人や悪い影響があるのだと思っていた。
「良い、悪いは無いのですか？」
「ありますよ。沢山」
「・・・？」
風間陽水は笑って言った。
「良い悪いは立場によって変わりますが、その人にとってはあるのです。
私も悪いモノや悪い人など関わりたくありませんよ」
そしてゆっくりと話を続けた。
「でもね、この世に生きている限りは必ず何かと出会うでしょ。
それは風でも土地でも人でも出来事でも、毎日毎分毎秒出会うでしょ。
出会う相手は自分にとって良いモノも悪いモノもあるわけです。
もっとも良い悪いはその時のその人の判断ですから、実際に良いか悪いかは別です。
とても親切で良いと思った人は実は悪意ある人だった、なんて普通にあります」
（登場する人物・組織・その他はフィックションです）
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