水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」
カルテ番号 ゆ・1（12）
車のナビも人工衛星からの位置情報に基づく。
アメリカの複数の軍事衛星からの位置測定を応用している。
電波が届かないわけではない。
だがナビは地図を元にして、修正しつつ情報を出す。
本当の電波はいろいろに邪魔され狂っているのだ。
それを、独自の修正用アルゴリズムなどで推測しているのだ。
ナビの位置は、極めて性格な推測から成り立っている。
現在の地図があれば推測計算が成り立つ。
電波がどんでもない位置を出しても、それは電波の狂いとみなすのだ。
電波は山や高いビルなどで反射し、正確な情報を出せない事がある。
ナビならいいが、土地の測量、まして地下の測量は電波が歪んでは出来ない。
その為、幾つもの白紙の地域がある。
そして、弓削独自の考えも、ここにあった。
神も見通せない国（地域）は、地震が少ないのだ。
地震が起こるメカニズムは、地層の動きからとされている。
プレート単独の動き。
プレート同士の衝突。
だが、弓削はそれ以外の要素があると思った。
それが何かはわからない。
だが、影響の一つが電波に関係している。
（登場する人物・組織・その他はフィックションです）
（過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・講演、お話会依頼、悩み相談受付中。日本中出張します。
ブログで書いた「迷説般若心経」 「迷説恋愛論」 「迷説幸福論」
誰か出版してくれぇ～
１８年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Ｙａｋｋｏｏ」)
カルテ番号 ゆ・1（11）
次の日、レンタカーを借りて関東北部に向かう。
行ってみて、土地が気に入ったら滞在も考える。
治療院については、ゼロの立場であたる。
余計な評価はしない。
予約もしないで、いきなり行ってみる。
治療ができなくても、一向にかまわない。
温泉でのんびりすればいいだけだ。
それでも地震の専門家だ。
その立場からの土地のデータは調べてみた。
地盤が固いせいか、大きな揺れは少ないようだ。
海に接していないから、津波も無い。
関東なら安全度は高いだろう。
標高も高いから、日本の半分が沈んでも残るだろう。
そういえばアメリカでの人工衛星からのデータを思い出した。
人工衛星は地上のどんなところも計測できると思われている。
ところが、地形、特に山と山に囲われた地域ではデータが取れない事がある。
電波がちょうど山と山にお互い反射して、膜のようになる事があるのだ。
すると、その下の土地は一切見えない。
神話で、神も見えない国というのは、あんがいこういう地域かもしれない。
その一つが関東北部にあった。
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カルテ番号 ゆ・1（10）
気の合う仲間との時間は楽しかった。
今回は弓削の退院祝いと、ミニ同窓会の体裁で東京に集まった。
だが、研究所は地方にある。
自然科学の研究所は都会では向かないのだ。
それぞれが、また地方に去って行った後、弓削は考えた。
日本に留まるか、海外に渡るか・・・
日本という祖国にある種の思い入れはある。
あるが、研究がしやすい海外も魅力だ。
日本の危機についてのシミュレーションもほぼ完成している。
もちろん弓削のオリジナル推論だ。
だが、特に公にする気はない。
研究者の欠点ともいえる。
研究するところまでで、その先までの情熱は無いのだ。
無いが、機会があったら研究を渡してもいい。
名前を伏せてだ。
とりあえず、何もすることがない。
日本か海外かも決まらないのだ。
引っ越し先探しもイマイチ気が乗らない。
といって、このまま東京にいるほど勇気はない。
紹介された治療院の地域で、しばらく療養でもしていようか。
1年くらいは、ホテル住まいでもいい。
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カルテ番号 ゆ・1（9）
弓削が言った。
「おまけに、俺達のほとんどが首輪付きだ。
何しろ自分で稼ぐ能力が無い集まりだ。
下らない研究もしなくちゃならねぇしな。
まぁ、多少の判断力はある。
ロクでもない事に使われるようなら、研究成果は封印するさ。
評価され、褒めてもらいたいわけじゃない。
役立たずの汚名くらいいつでも着てやるさ」
ここにいる三人は、そういう仲間だった。
世の中は、御用学者やマッドサイエンティストばかりじゃない。
数は少なくても、マトモな研究者や経営者もいるのだ。
マトモは、通常、人前に出ないという共通点がある。
自分の足で人生を歩いているのだ。
自分を主張する必要がないからだ。
欠点として、個立が孤立になりがちだ。
先ほどの一人が言った。
「弓削、もし、そこから声がかかったら協力するか？」
弓削は言った。
「俺は研究バカだが、多少は人も見る。
アメリカでいろいろなタイプと出会ってきた。
一応、相手を見てから決めるよ。
勘でいうなら・・・面白そうだ」
研究者にとって、勘が重要な要素だと知っている。
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カルテ番号 ゆ・1（8）
弓削はその話に興味を持った。
「その人は銀座のクラブのオーナーママだ。
かなり変わっている人らしい。
研究バカの研究者と社会に貢献したいマトモな経営者。
結び付けて、社会に何かをさせたがっている。
だが、余計な口は一切出さないで、本人は海外だ。
その研究バカの研究は・・・
気象、地質、火山、そして地震関係者だ」
一瞬、誰も言葉を発しなかった。
ここにいる三人は、その目的が判る。
弓削はため息をついて言った。
「世の中、まだまだ見捨てたもんじゃねぇな」
「ああ、俺達研究者は、自己満足を追いかけている。
人類の危機よりも研究を優先するバカだ。
社会に出るのは、得意じゃないからな」
もう一人が言葉を続けた。
「研究をするのは、俺達だが、利用するのは別な人だ。
社会に害を為す利用もあるし、救う利用もある。
ダイナマイトや原子力もそうだ。
マトモに使ってくれればいいが、人間のマトモは少ない。
俺達を含めて、な。
社会にアピールするのが得意で、上手く使ってくれるなら理想だ。
それだから、どんな凄い発明発見をしても、やたらに発表はできない。
眠っている発明や発見はかなり多いはずだ」
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カルテ番号 ゆ・1（7）
誰でも知っている事だ。
研究者なら、尚更知っている。
安全な地域を探すのは難しいが、危険な地域は明白だ。
もはやレッドゾーンに入っている。
「まぁ、そうだよな。
必ず遭う災害地に住むのは、別な目的がある場合のみだ。
自殺願望とか、命よりも儲けが大事とか」
弓削はアメリカで調べたデータからの推論がある。
詳しく発表すれば契約違反でとてつもない賠償になる。
だからデータは出せない。
それに、自然はデータ通りになるとは限らない。
それでも言外にほのめかす事はできる。
「まぁ、数年は地方にいるよ。
これでも、まだまだしたい事があるんだ」
研究者仲間も頷いた。
「俺も地方の研究所から当分出ないつもりだ。
弓削、身体を完全にして、また楽しい時間をすごそうぜ」
もう一人の研究者仲間が言った。
「今の弓削の話に関係するかもしれん。
実は、あの治療院を教えてくれた人がいる。
今は海外に行っている。
俺達金に縁の無い研究者と、金を持っている経営者を結びつけた」
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カルテ番号 ゆ・1（6）
「有名なのか？」
研究者仲間は笑って言った。
「いや、無名だ。
有名は二流、三流だと知っているだろう。
俺達の研究者だって同じだろ。
有名な第一人者は、実は二流がほとんど。
世間にアピールする能力は一流だけれどな」
弓削も笑って言った。
「それなら、信用できるな」
「ああ、合うか合わないは判らない。
だが、試す価値はあるようだぜ。
俺の信頼できる筋から直接聞いた話だ。
まぁ、変わっている治療師らしいが・・・」
もう一度、同じ言葉を弓削は言った。
「それなら、信用できるな」
場所を聞くと、関東北部の温泉地らしい。
温泉にのんびり入れるなら、近々行こうと思った。
それから専門の地震の話になった。
「おい、弓削、何か知っている事を教えろ」
「研究者が秘密を言うわけないだろ。
言わないが、俺はここには住まない。
住む場所は決めていないが、住まない場所は決めている」
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カルテ番号 ゆ・1（5）
社交的でないから、研究者仲間といっても少ない。
それでも変人同士だから、話は合う。
日本の研究所も紹介してくれるという。
給料はアメリカの三分の一以下だが・・・。
弓削は給料について、それほど気にしていない。
問題は、設備と自由な研究雰囲気なのだ。
そうなると、日本の研究所は難しい事が多い。
金を出す国が、何かと意味の無い口も出す。
そんな変人仲間が、弓削の癌を心配してくれる。
癌はどんな治療をするか、も大切だが、その後がもっと大切なのだ。
治療後のケアが、その後の再発を左右する。
変人だが、研究者だからいろいろ知っている。
その変人仲間が試す価値がある、という治療院を紹介してくれた。
気功治療だという。
研究者は、科学的な裏付けのないモノを嫌う人が多い。
確かに、馬鹿げたものも多い。
だが、科学的というものも、馬鹿げたものが多いと知っている。
だから、大病院だろうが大学病院だろうが、信用はしていない。
数年で判断がコロコロ変わるような医学だ。
あらゆる学問、科学がまだまだ不安定で欠陥だらけだと知っている
それでも他よりマシだから病院で治療を受ける。
研究者だ。
頭から既成の考えで判断しない。
自分で調べ、確かめる。
だから、気功と聞いても、頭から否定はしない。
この世に、わけのわからないものは、山ほどある。
というより、解明できているのは１パーセントくらいだろう。
「そのうち、行ってみるよ」
弓削はそう応えた。
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カルテ番号 ゆ・1（4）
既成の考え方。
既成の知識や学問。
その上に立っての研究者は、決して新たな発見は出来ない。
多くのデータがあっても、そこから導きだされる結論は狭い。
コンピュータで充分できる仕事だ。
だが、そんな研究者が多い。
研究者になるまでの学問の仕方に問題がある。
新たな発見は、新たな発想からしか生まれない。
新たな発想は、既成の知識や思考法では生まれない。
故に、偉大な発見者や研究者、発明者は変わり者だ。
本物の研究者は、常識が横行する社会では変人となる。
とはいえ、変人なら偉大な研究者や発見発明者になるわけではない。
研究対象を追求するのが好きな変人であり、社会に迷惑の変人ではない。
本当は、社会と係わりたくないタイプなのだ。
社会というのは、いろいろな決まり事がある。
いちいち従うのは、研究するのにメンドウなのだ。
研究所に籠って生きていけるなら、それが一番幸せ。
自分の研究が社会や人類に貢献できる、なんてどうでもいい。
知りたいから、研究する。
そういうワガママな研究者が、何かを発見、発明する。
弓削は、そういう血が濃く流れていた。
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カルテ番号 ゆ・1（3）
結婚は一度している。
離婚も一度。
研究者タイプは家庭向きではない。
家庭よりも研究対象が優先する。
何よりも研究が好きなのである。
配偶者がその事を充分理解しているのなら結婚は続く。
アメリカは家庭優先、夫婦優先の国だ。
アメリカ国の利益優先の国だ。
研究所勤めには住みやすい環境かもしれない。
だが、研究者タイプという性質の持ち主には逆になる。
家族も国も関係なく研究したい、追求したい欲求を縛られる。
弓削公明は研究者タイプだったのだ。
そのことも退職する種の一つだった。
聞くところによると、フランスの結婚制度の方が合っているかもしれない。
お互いが、経済も含め、全く独立している夫婦となる。
だが、フランスは地震研究所がとても少ないのだ。
研究や学問は商売とは違う。
人類の未来への投資なのだ。
日本は地震研究が必要だが、研究所全般への予算が少ない。
しかも縦のアホらしい権威主義もある。
弓削は当分浪人生活をするつもりだった。
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