水上陽平の独善雑記

水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・808」

2016-01-31 19:07:46 | Weblog



カルテ番号 も・6(16)

婦人は優しい笑顔で言った。
「もちろんです。
私、社交的でないから他人とほとんど話はしません。
長く引きこもりをしていましたから・・・
友達とかもほとんどいません。
それでも、その先生を紹介するのは2人目ですの。
人を紹介するのは、とても私には荷が重い。
でも、その先生の紹介なら、自信があります」

茂木滋は、基本的に他人を信用しない。
紹介されても、信用しているわけではない。
人でも物でも、期待するほどの事はめったにない、と知っている。
期待はしないが・・・興味はある。
仕事を引退してから、興味が起こったのは初めてかもしれない。
いや、今までの仕事、会社での知り合いの中でも興味はなかった。
会社や自分の利害という土俵で相手を判断していただけだ。
それは、時には研究対象ではあったが、興味ではなかった。

婦人は自分の名前を名乗ってくれた。
そして、その治療院の場所と連絡先を教えてくれた。
茂木滋も、婦人に自分の名前と電話番号を伝えた。
礼儀として、その先生に会ったら経過報告はしておこうと思った。
場所は、少し不便なところにあるようだ。

(登場する人物・組織・その他はフィックションです)

(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・講演、お話会依頼、悩み相談受付中。日本中出張します。
ブログで書いた「迷説般若心経」  「迷説恋愛論」  「迷説幸福論」
誰か出版してくれぇ~
18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・807」

2016-01-30 18:57:06 | Weblog



カルテ番号 も・6(15)

人の運命を左右するかもしれない相談に対する答え。
それが・・・勘、か・・・
面白い。
久々に、面白い話を聞いた。
通常なら、無責任な、と感じるだろう。
だが、茂木滋は、戦後の混乱期から幾度も危機があった。
時には、命の危機さえ、数度あった。
会社にしてからも、幾度もあった・・・

茂木滋はワンマン経営者だ。
孤独な経営者でもある。
危機的状況は、迷う時ばかりだった。
そして、決定するのは、己の勘だった。
勘が正しいとは思わない。
それは・・・運なのだ。
何かが味方をしてくれているのだと感じていた。
こんな、ろくでもない人間にも、運はある。

勘で、重大な事柄を決めるには、とても大きな決断がいる。
その治療者は・・・もしかしたら、何かを持っているのかもしれない。
そして、そんな話を聞けた自分も、まだ運があるのかもしれない。
そう思えるのも・・・勘、だ。
「よかったら、その先生とやらを、紹介してくれるかね。
先日は、断ったが、気を悪くしないでください。
その、勘の話で、とても興味をもったようです」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・806」

2016-01-29 19:03:44 | Weblog



カルテ番号 も・6(14)

婦人は何とも幸せそうな顔をした。
「本当に運が良かった。
何しろ外に出られなかったのですから。
そして、誰も私の世話をしてくれる人もいなかったのですから。
病院でうつ病がどこまで回復できるのかわかりません。
回復するにしても、簡単ではないでしょう。
うつ症状を抑える薬はあるようですが、回復ではありません。

そんな私に、自宅で出来る回復法として太極拳を薦めてくれたのです。
でも、可笑しいの。
その先生、太極拳の指導しているわけでもない。
御自分でも、そんなにしていなかったようです。
医療気功といって、太極拳のような健康法とは別な仕事らしいです。
それなのに、ふと思いついて太極拳を薦めてくれたらしいです。
そして、自己流に意味がある、っておっしゃるから続けられたの」

茂木滋は言った。
「う~ん。よく解らないですな。
何故、その先生は貴女に太極拳を薦めたのですかな?」
婦人は笑った。
「やっと、最近、その先生と会えたのです。
会えるまで10年かかりました。
そして、私も訊ねました。
そしたら・・・
勘、ですって・・・」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・805」

2016-01-28 19:07:09 | Weblog



カルテ番号 も・6(13)

「貴女の太極拳、ですか、実に見事ですなぁ。
見ているだけで気持ちが安らぐ気がする。
先日、病から立ち直る為に始めた、とおっしゃっていたが・・・
もうすっかり良くなったのですかな?」
婦人は明るく答えた。
「自分では、生まれ変わったような気がします。
身体も心も、以前の私ではないみたいです」

茂木滋はそれを聞いて思った。
たかがゆっくり身体を動かす程度で、そんなに変われるものなのか?
そんな茂木の不審げな顔を読んだのだろう。
婦人は静かに話し出した。
「もう10年以上前です。
私はうつ病で外にも出られなかったのです。
そして夫を急に亡くして、もう絶望の中でした。
といって、自分で死ぬ事もできない」
そこで婦人はお茶を飲んだ。

「何とか抜け出たい。
でも病院にも行けない。
インターネットには、いろいろなサイトがあります。
うつ病の事も載ってはいるのですが、実際には役に立たない。
それに・・・何だか信用できない所も多いように感じて・・・
そんな中、メールでの相談を受けるところがあったのです。
そういうサイトも多いのですが、何故か、メールしたくなって・・
それが、太極拳を薦めてくれた先生だったのです」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・804」

2016-01-27 19:14:33 | Weblog



カルテ番号 も・6(12)

長生きがしたいとも思わない。
とはいえ、もう死にたいとも思わない。
疲れるだけだから、旅行をしたいとも思わない。
食事も質素が一番楽だと気づいた。
外食は苦手になっていた。
趣味もない。
自分は、何をしたいのだろうか?

茂木滋は、相変わらずの日々を過ごしていた。
ただ、散歩の最後には、必ずあの公園に寄る。
そして、ベンチに座っている。
あの婦人が、また来ないかと、期待している自分がいる。
まだ話し足りない、と感じている自分がいる。
自分が求めているものが、あるのか、ないのかも判らない。
だが、あの婦人の自信に満ちた表情にヒントがあるような気がしてならない。

そして今日、またあの婦人が太極拳をしていた。
やがて先日と同じように、婦人は隣のベンチにやってきた。
「こんにちは。また会いましたね」
婦人はニコニコとして、バッグからお茶を取り出した。
当然のように、茂木滋に渡す。
「やぁ、ありがとう」
茂木滋もニコニコと受け取った。

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・803」

2016-01-26 19:05:20 | Weblog



カルテ番号 も・6(11)

今更誰かに教えを受けるなど、気が進まない。
相手は茂木滋よりも確実に年下だろう。
何十年も偉そうに構えているセンセイとやらに会ってきたのだ。
センセイというのは、自分が俗物だという事を自覚していない連中だ。
偉そうにしないだけ、仕事の出来ない社員の方がマシだった。
それでも商売と割り切って、偉そうな言葉に頷いてきたのだ。

「どうにも、この歳になると先生というのが苦手でしてな」
そう言って、紹介されるのを暗に断った。
「先生といっても、治療師の方だからですわ。
治療しながら、いろいろお話をしてくれるだけ。
押し付けがましい事はないし、心地良いだけですよ。
でも、人は縁ですものね。
何か必要に感じたら、紹介しますね。
私は、周に幾度かはこの公園に来ていますから」

婦人があっさり引き下がると、返って心が揺れる。
何か大切なチャンスを逃したような気がしてきた。
それでも、素直になれず、そのまま礼を言った。
婦人は軽く汗を拭いてから、軽やかに引き上げた。
茂木滋は、そのまま、しばらくベンチに座っていた。
自分は、どこに向かいたいのだろうか?

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・802」

2016-01-25 19:04:43 | Weblog



カルテ番号 も・6(10)

婦人は少し考えてから話し出した。
「私に上手く説明できるか判りませんが・・・
要は、何の為に太極拳をするのか、という目的でした。
人前で見せるなら、キチンとした動きがいいのかもしれません。
まして、大勢で動作を合わせるなら、自己流はダメでしょう。
ですが、私は自分の病を克服する為でした。
自分専用の為にするのですから、自己流に意味がある、と。
自分の生命を活性する為ですから、自己流でなければ意味がない、と」

茂木滋は、それを聞いた時、何かが見えそうな気がした。
婦人の言った意味は、何となく解るような気がする。
だが、太極拳の話には興味がない。
そうではなく、生命の活性という言葉に何かを感じた。
最近の沈みがちな心に、さざ波が起きている。
自分は、もう何も求めていない、と思っていた。
それが、揺らいで、震えるものがあった。

「貴女の言葉には、何かがあるようです。
ぶしつけで申し訳ありませんが、もう少し話をしていただけますかな」
それに対して婦人は首を横に振った。
「いえ、違うのです。
これは、私の言葉じゃないのです。
受け売りの言葉ですが、これ以上は、上手に話せません。
よろしければ、この言葉を教えてくれた先生を紹介しますわ」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・801」

2016-01-24 19:29:44 | Weblog



カルテ番号 も・6(9)

「ありがとう。とても美味しいお茶ですね」
婦人は笑って答えた。
「あら、嬉しいわ。それ、私が炒って淹れてきた玄米茶ですよ。」
茂木滋は改めて婦人を見た。
女性の歳はわからない事が多い。
50代後半くらいだろう?
主婦という感じがしない。

「先ほどのあれは、太極拳ですかね?
実に見事な舞というか、動きだったと思いました」
婦人の笑顔は淑やかであるが、明るい。
「ええ、太極拳です。
ですが、自己流なのですよ。
ある人から、自己流に意味がある。
自己流でなければ意味がない、といわれましたので」

自己流に意味があるのは、茂木も理解できる。
自己流が無い連中など、ただの駒にすぎない。
だが、自己流でなければ意味がない、というのは解らない。
「それは、どういうことですかな?
どうも私には、難しすぎて・・・」
婦人はまたも、微笑んだ。
「そうですよねぇ。
私も初めて聞いた時、何故だかわかりませんでした」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・800」

2016-01-23 19:33:45 | Weblog



カルテ番号 も・6(8)

急に考え事をし始めた茂木に、婦人が声をかけた。
老人が寂しそうに悩んでいる姿に見えたのだろう。
「あの~、よろしかったら、お茶を召し上がりませんか?
温かいですよ」
茂木滋は、その言葉に労りの気持ちがある事に気づいていた。
どうやら、心配をかけてしまっているようだ。

「ありがとう。
では、いただきましょう」
お返しは、後ですればいい。
借りはつくらない。
借りをつくると、結局は損になる。
経営者として、そういう生き方をしてきたのだ。

新たなコップに注いでくれたお茶を、頭を下げていただいた。
美味い。
先ほどの素直がまだ残っていたのか。
親切心に素直に従うと・・・味も素直になれるのか。
損か得か・・・
借りとかお返しとか、つまらない気持ちだったと思えた。

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・799」

2016-01-22 19:03:26 | Weblog



カルテ番号 も・6(7)

人は死期が近づくと素直になれる、と聞いた事がある。
腹の中の探り合いや表面の取り繕いばかりの生き方だった。
自分は素直になど、決してなれないと思っていた。
計算しての態度や表情や言葉だった。
生きていく、というのは、そういうものだと思っていた。
尊敬だとか愛だとかいっても、その底には計算がみえる。
本人が気づいてないから、本気で言っているだけだ。

それが、素直に返礼したお辞儀一つで、茂木滋の中の何かが開いた。
人間なんて・・・人は皆・・・そう決めつけていた事が揺らいだ。
例外としての素晴らしい人はいるだろう。
腹の中も表と変わらない人もいるだろう。
だが、それは例外だと思っていた。
もしかしたら・・・違っていたのかもしれない。

自分のような人間にも、あるのかもしれない。
もっと楽に生きられるのかもしれない。
誰でも、持っているのかもしれない。
そうだとしたら、どうしたら、素直のままで生きられるのだろうか?
今更、この歳になって、と揶揄する気持ちもある。
80歳から、生き方が変えられるか、という気持ちもある。
あるが・・・変われるかもしれない、という思いが強くなっていた。

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