水上陽平の独善雑記

水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1233」

2017-03-31 19:57:09 | Weblog



カルテ番号 れ・1(31)

美和も言った。
「いい言葉ですねぇ」
院長は頷いて言葉を続けた。
「神という概念は宗教、個々によって違うようです。
私はこの世を創ったモノを神と表現しています。
この世の全ての仕組み、理、そして、運営とでもいいますか・・・
決して擬人化など出来ない存在です。
また、個々の人間に直接関わるわけがありません。

私は生命のほんの微かの表面しか観ることができません。
それでも、あまりに偉大すぎて、微妙すぎて、完璧すぎて・・・
だから、そこに神の存在を感じるのです。
やたら道徳的な宗教のいう神とは違います。
生命そのものが神と表現するしかないのです。
世界、宇宙、地球に比べたら矮小な、欠陥品の人間の創造物とは違います。

欠陥品、未発達、出来損ないの人間。
だからこそ、人は愛する対象だと思います。
人は信じる対象ではなく、愛する対象です。
宗教組織は信じる事を謳い文句にしますが、組織を信じるのは間違いです。
また、神は信じようが信じまいが差別も区別もしません。
超偉大だから、信じる以外に道がないだけです。
宗教と宗教組織をハッキリ区別するなら、宗教は一つの哲学と思っています」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1232」

2017-03-30 19:18:21 | Weblog



カルテ番号 れ・1(30)

院長は少し照れ笑いをして言った。
「私の悪い癖です。
私の尊敬する人には、いわゆる宗教界の人がいます。
とても素晴らしい人です。
通常の宗教組織の人達とはまるで違います。
もちろん、勧誘などしません。
そして、他の宗教をしっかり学んでいますし、敬意も払っています。

ある境地まで到達すると、宗教は同じなのかもしれませんね。
ですが、その境地まで達した人は少ないのです。
どんな分野も同じでしょうが・・・
そんな境地に達した人達は共通する雰囲気があります。
とても謙虚で、イキイキしていて、愉しそうです。
いたずら坊主、という感じもします。

自分の属する宗教などにこだわりません。
優劣もつけません。
とても、やわらかいのです。
私を教え、導いてくれた人の言葉があります。
神は信じ、人は愛する。
とても深い言葉ですね」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1231」

2017-03-29 20:44:18 | Weblog



カルテ番号 れ・1(29)

冷泉美和は宗教や精神世界とは縁遠い。
何か違うとは思っていたが、説明はできなかった。
だが、院長の話でスッキリした。
これが真実と言われても、証明できないから反論もできない。
それに・・・言う事が綺麗事すぎる。
人の心の中は、建前だけではない。

院長の言葉は宗教関係者には少し辛辣かもしれない。
きっと反論も多いのだろう。
「先生、それって宗教の信者さんは反感持つでしょ。
神様を信じ込んでいるのだから」
「私は神様を否定しません。
それどころか、そういう存在を認めざるを得ません。
生命の不思議をみていると、神の存在を感じます。

ですが、宗教関係者の神とは違うかもしれません。
何よりも、宗教関係者は組織が大切なようです。
組織は、人の集まりで、神様は組織を作りません。
そして、人の集まりは・・・
間違いの集まりはあっても真実の集まりは無いでしょうね」
美和は思った。
やはり、この先生は宗教関係者には厳しいと思う。
それでも、納得できる。

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1230」

2017-03-28 19:34:11 | Weblog



カルテ番号 れ・1(28)

院長の言葉は更に続いた。
「心が大切とか、精神が大切とかいいますね。
時には魂が根本とか、霊(れい)御霊(みたま)などとも言います。
肉体は仮で魂や精神が本体。
心は精神の現れたもの、などとも言います。
でも、これらは全て証明できない本質論です。

宗教界、精神界などが好んで使う土台です。
証明できませんから、その通りかもしれません。
でも、今は仮であっても、この世にいます。
この世が舞台だとすると、私達は舞台上の役者です。
本当の名前や姿でないかもしれません。
ですが、ここが宗教や精神世界の間違うところです。

舞台上で、本当は違う、などと気づいて主張するのは本末転倒です。
まぬけ、アホ、と言ってもいいでしょう。
舞台なら最後まで役者として、いい芝居をするのが本筋です。
最後まで、というのは肉体が尽きるまで、です。
魂や精神や心を優先するのは、肉体が終わってからです。
終わると、魂は本来の世界へ帰るかどうか知りませんが・・・
一応、あの世があるとしておきます。
それでも、この世で言う事ではありません。
誰も証明できませんから、インチキも横行しますし・・・」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1229」

2017-03-27 22:01:03 | Weblog



カルテ番号 れ・1(27)

「先生、身体と心の事、誤解していました。
身体が大事か、心が大事か。
そんな風に分けていた時期があります。
やがて、身体も心も一つだから、どちらも大切。
そんな風に思っていたのです。
でも、今日、どちらも根本から誤解していたと気づきました。

身体を自分のモノと最初から思い込んでいました。
身体と心は、別だったのですね。
自分は身体を預かって、管理している立場。
そして、身体の中にこの世で生きていられる生命があった。
身体が最優先だったのですね。
心は・・・どこにあるか、よくわかりません」

院長は優しく言った。
「誰でも身体を持って、この世にいられるのです。
でも、冷泉さんのように気づく人は少ないのですよ。
身体の事を知れば、余計な病は防げるのです。
この世は、物質界、色界、人間的には肉体界です。
そして生命は、この世では肉体の中に存在しています。
この世にいる限り、最優先は身体なのです」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1228」

2017-03-26 18:47:52 | Weblog



カルテ番号 れ・1(26)

美和は最近の自分を振り返った。
身体が重いと感じていたのは、心が停滞していたからかもしれない。
院長は、病は無いと言ってくれている。
身体に異常がなくても、積極的に生きる意欲が薄れていたと思う。
何となく温泉でくつろぐ。
それでは、人生を歩んでいるとはいえない。

もし、結婚して、子供を抱えて生活する。
それで精一杯の日々なら、それは生命を輝かせているといえる。
生活が大変で、身体が辛くても、生命を輝かせている。
ところが美和は独り身だ。
給料も一人なら充分。
それなのに、輝かせているとはいえなかった。

今後、生命を輝かせる人生を意識して生きていこう。
それは、身体を大切にするのと同じだ。
つい、社会的に何かをするのが輝かせる事だと勘違いしてしまう。
でも、今日の院長の話から気づいた事がある。
第一優先は、自分の肉体なのだ。
そこをしっかりと管理し、大切に愛おしむと、生命は輝く。
自然と、自分のしたい生き方になる。

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1227」

2017-03-25 18:44:23 | Weblog



カルテ番号 れ・1(25)

美和は言った。
「生命はあきらめない、っていい言葉ですね」
院長は優しく言った。
「あきらめない、というか、生きているのが生命です。
あきらめる生命なんて、矛盾してしまいます。
常に生き続けるのが、本質であり、全てです。

それなのに、生命の器、つまり肉体ですね。
その肉体を預かっている本人があきらめてしまう。
生命は困るのです。
病だけではありませんよ。
死ぬまで生きるのが人生です。
その途中で、人生をあきらめる人が多い。

例えば、定年後を余生、などと言う。
余生なんて、生命にはありません。
最後まで現役ですし、現役以外はありません。
歩き方は変わっても、前に進むのが生命であり、人生だと思います。
辛い事、厳しい事、苦しい事も多々あります。
それでも、自分から前に進む、歩くのが生命を預かった責任者だと思います」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1226」

2017-03-24 17:38:14 | Weblog



カルテ番号 れ・1(24)

何気なく寄ったのではなく、気になったから寄ったのだ。
目的があるのか、無いのかも判らず寄った。
だからこそ、訪れた意味があるように思えた。
最近、ずっと心の奥底にあったモヤモヤだ。
それは、これからの生き方。
40歳間近になって、自分の将来が気になっていたのだ。

一つは病に対する怖れがあるだろう。
特に両親の死因だった癌。
二人とも60代だった。
悲しさよりも、怖れが大きかった。
元々、美和は家族愛というのが薄い。
だから、一人で生きていくのだろう、と漠然と感じていた。

一人で生きていく。
それは、どういう事なのか、指標がみつからない。
会社に定年までいれば、年金が出るだろう。
それで、つつましくなら生活できる。
だが、一人で生きていくというのは、そういう事ではない。
生活できる、という事と別な何かが必要だと感じていた。
そのヒントが、ここで得られる、と思った。

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1225」

2017-03-23 18:40:26 | Weblog



カルテ番号 れ・1(23)

院長は少し間をおいてから言葉を続けた。
「罪という概念を作ったのは人間です。
猫が猫に害を与えていないネズミを殺して食べても罪とは言いません。
そして、猫にも殺されたネズミにも、罰はありません。
無理を重ね、ケアもしなくて病になったのは、罪でも罰でもありません。
自然の成り行きです。
そして、自然はかなり幅があります。

病になっても、回復できるのです。
かなり厳しい状況からでも、回復できる幅があります。
ただし、あきらめると回復し難くなります。
昨今は、インターネットなどをうのみにして情報が溢れています。
簡単に結論を出し、病からの回復に本気を出さない事もあります。
生命は、最後まで、あきらめない。
それなのに、本人の心があきらめてしまうと、生命は困るのです」

院長の話は、生命と本人の心を分けて話している。
生命は、身体の事だろう。
心は、考えとか意識なのだろう。
生命は、本人よりも、ずっと大きい存在。
同一視してしまうと、小さな生命になってしまう。
冷泉美和は、ここに来た意味がもうすぐつかめそうな予感がした。

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1224」

2017-03-22 16:20:00 | Weblog



カルテ番号 れ・1(22)

自分の事は差し置いて。
そうするのが美徳だという風潮だった。
そうする方が社会的に評価される。
深く考える事なく、自分が我慢し他の為に行動する。
それが、立派な行為だと思い込んでいた。
自己満足と社会的評価の二重取り・・・

その犠牲になるのは、自分の肉体。
「先生、自分の肉体を大切にしない罪が病気ということでしょうか?」
院長は言った。
「罪なんて言葉は人社会が作ったものです。
特に宗教組織が好んで使います。
何の為だかわかりますか?
組織、体制、社会をまとめやすくする為です。

多くの人が一緒に暮らすには、共通のルールが必要です。
それに外れた場合、悪い事という意味で罪を作りました。
ですから、組織、国、時代、それらが変わると罪も変わります。
今現在でも、国によって罪は違います。
宗教組織も、違う組織だと罪が違ってきます。
生命にとって、罪はありません。
ある程度の理があるだけです。
無理を重ね、ケアをしないから病になったのは罪ではありません。
当たり前、当然の理、という事だけです」

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