水上陽平の独善雑記

水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」

「迷解剣客商売・61」

2011-06-30 20:19:18 | Weblog



老いる、というテーマは、もっと先の話だったろう。
小兵衛は90歳までは寿命があるという設定だ。
だが、作者の池波氏の生命力が落ちてきていたらしい。
まだ、小兵衛は66歳だ。
そして、作者は64歳になった。

主人公と作者の年齢が重なる。
池波氏に何らかの感覚があったのだろう。
小兵衛は、友の死で落ち込んだ。
息子、大治郎に諭された。
老いを、意識するようになった。

若い頃、一度も勝てなかった剣客がいた。
70歳を過ぎた、その剣客が暴漢に襲われた。
間違っても、やられるような相手でもないのに。
そして、助けた小兵衛の事も判らぬような状態だった。
「強かった、あんなに強かった男が、年をとると・・・」

それから、小兵衛は初めて、めまい、をおこすのだ。

        
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「迷解剣客商売・60」

2011-06-29 20:38:06 | Weblog



大治郎を凌ぐかもしれぬ暗殺者。
それを防ぐ為に、小兵衛や弥七達が働く。
その陰謀の解明に目途がついた時、小兵衛は興奮する。
そして、大治郎はいつも通りに冷静だった。
息子大治郎に静かに諭され、小兵衛は反省する。
「近頃のわしは、どうかしている」

一面でも、息子が父を超えた瞬間だろう。
あるいは、超えたのではないかもしれない。
父が後退し、息子が進んだから、立場が入れ替わった。
親子、師弟、新旧の交代は、時というものが作用する。

人は、以前の人よりも進歩しているわけではない。
交代しただけだ。
現代人が、昔の人よりも進歩しているわけではない。
優れた人は、昔であろうが今であろうが変わりない。
人は、時が経っても、それほど、進化していない。
証拠に、くだらない人は、現代も相変わらず・・・

        
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「迷解剣客商売・59」

2011-06-28 18:38:20 | Weblog



この小説の幾つもの柱の一つに、親子がある。
小兵衛、大治郎なら、父と息子だ。
田沼意次と三冬なら、父と娘だ。
義母のおはる、と大治郎、あるいは三冬。
又六と母や、その他の親子関係もある。
池波氏の他の小説にも、大きな柱の一つとして描かれている。

小兵衛66歳、大治郎31歳。
現役の剣客としての大治郎、益々進歩している。
無外流としての一流だから、人間が練れてきている。
単に技や腕の強さだけではない。

小兵衛は名人だが、友との死別などが多くなるにつれ
「ワシも、もう年かな」などと弱気になる事もある。
人は、肉体の衰えや悲しみの蓄積で気力が下がる事がある。
嘗てなら簡単に乗り越えられた心の障害も、足踏みする事がある。
人に、完成形など無いのだ。

父と息子が同じ道を歩く。
偉大すぎる父を超せない場合もある。
全てではないにせよ、父を超える場合もある。
その微妙な距離に小兵衛と大治郎がさしかかっていた。

        
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「迷解剣客商売・58」

2011-06-27 18:55:59 | Weblog


「言葉に出すと、人の真実(まこと)が却って通じなくなる」
確かに、その一面がある。
気を読み、気を配り、気を遣えるなら言葉に出さずともいい。
安心と信頼の関係が成り立つ。

だが、言葉に出さずに理解し合える人達は一部だ。
ほとんどは、言葉に出さねば、より誤解を生む。
といって、言葉で真意は伝わらない。
あるいは、一部しか、伝わらない。
近代、そして現代になるほど、言葉に頼る関係になった。

気配を読み、気配りをし、気遣いをして生活していた頃があった。
お互いを認めようとしていた、優しい生き方の時代だ。
言葉は、楽しむ為に使ったが、理解する為ではなかった。
言葉に重きをおくようになってから、理解から遠くなった。
話せば解るのではなく、放せば解るだったのに・・・
ワシも言葉遊びを意識しているが、まだまだ硬いなぁ・・・

        
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「迷解剣客商売・57」

2011-06-26 19:21:01 | Weblog



「人の言葉などというものは、いくら積み重ね、
広げて見せても、高が知れている」
駄文とはいえ、ワシも文章を書いている。
たまにとはいえ、講演もセミナーもする。
ほとんどが、言葉の積み重ねで成り立っている。
だが、高が知れている、に反論なんて出来ない。

言葉で仕事をする人も多い。
言葉に重みや意味や真理さえ重ねる人も多い。
言葉で幸せになれると思っている人も多い。
指導者の多くは、背中より言葉を選ぶ人が多い。
ワシも何の疑いもなく、言葉の重要性を信じていた。

信じるな、疑うな、確かめよ。
確かめるのは、行いのみだ。

言葉だけで、人を動かそうとする人も多い。
そういう言葉は、綺麗事だけが多い。
人は、そんなに、単純に出来ていない。
深浅、広狭、高低、清濁、それらの中間・・・
そして、多種多様の考え、モノ、影響で複雑に生きる。

        
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「迷解剣客商売・56」

2011-06-25 19:02:23 | Weblog



心の勉強、精神のセミナー、講演、宗教、その他。
それらしい言葉に惑わされていた頃。
内容が素晴らしいと勘違いしていた。
内容が深いと、思い違いをしていた。

心の琴線に触れる言葉はある。
それで、変わったと勘違いする。
変わるキッカケにはなる。
だが、それで変わるわけじゃない。
そこからの行いによって、変わるのだ。

この世は、全て、行いにより変化する。
それは、自分自身も同じだ。
こんな当たり前を勘違いしていた。
心や精神だけで、変われると思っていた。
だから、言葉だけで変われると思っていた。
深い言葉なんて、無い。
キッカケの一つとして、言葉も、あるのだ。

        
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「迷解剣客商売・55」

2011-06-24 19:50:26 | Weblog



仇討ち側と仇持ち側の双方を知った大治郎。
しかも、双方とも大治郎と気が合った。
人としては、双方とも、応援したくなる。
知ったばかりに、大治郎苦悩する。

「人の世の善悪は紙一重じゃよ」
どちらが善い、悪いなんて決められない事が多い。
それぞれの立場、事情、時の流れがある。
その上で決心した事でも、思うようにはいかない。
思いがけない事が、たびたび、起こってしまう。

この世は、計算通りには進まぬ。
まして、思い通りには・・・
自分一人の世界じゃない。
ワシが精神世界というアホな道を歩いていた頃・・・
自分の世界しか観ていなかった。

思えば叶う。
継続は力なり(そして叶う)
全ては自分次第。
それらは、独りよがりの世界でもあったと気づいた。

        
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「迷解剣客商売・54」

2011-06-23 19:51:21 | Weblog



大治郎の剣客としての評判は高かった。
ある大名が指南役に欲しがった。
だが、名利より剣の道を歩む大治郎は断る。
すると、指南役は大治郎に勝たねばならぬ、と言った。

その試合の話を聞いた小兵衛と三冬。
「負けておやりなされ。
今の江戸でお前に勝てる剣客はいない」
大治郎は納得できない。
闘ってみなければわからない。
第一、相手に失礼ではないか。
大治郎は、まだマジメの殻が脱げ切れない。

嘗ての弟子を手にかけた小兵衛。
人を活かす剣を教えきれなかった弟子だ。
剣で人を殺め苦しめるようになったからだ。
道場で弟子を教えていた頃は、小兵衛も柔らかさが足りなかった。
その事を、今は気づいていた。
だから、そんな試合で大治郎が負ける事など何でもない。
それにより、困っている一人が指南役になれるのだ。

納得できないまま木刀の試合に臨む大治郎。
気力を欠いての試合だ。
相手もそれなりに強いのは当然。
そして、負けた。
小兵衛たちは、負けてやったと思っている。

いろいろなウワサを聞いた相手も納得しない。
も一度の立会いを求めた。
そして、相手に気づかれぬように、今度は負けてやった。
大治郎、負けてもいい勝負を理解したのだ。
そして、その日、三冬は男の子を無事出産する。
空は真っ青に晴れていた。
(「勝負」より)

        
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「迷解剣客商売・53」

2011-06-22 18:05:19 | Weblog



大治郎が一人の浪人と出会う。
お互い、一流の剣客同士だ。
何となく息が合った二人は、浅い付き合いをする。
小兵衛「それでよい」

他人に言えない事情を抱えて生きている。
深く交わえない事情も過去もある。
だが、人と人は同調する相手と出会う事がある。
その場合の付き合い方だ。
「浅く、淡く付き合うがよい」
自害した浪人から大治郎へ、名刀の脇差と手紙。
浅く、淡く付き合ってくれたからこそ、幸せだったと。

長く付き合うコツをワシは勘違いしていた。
親友、恋人、師弟などの付き合い方だ。
深く、濃く付き合うのが、当たり前だと勘違いしていた。
浅く、淡く、付き合う。
とても相手を大切にしている付き合い方だ。
だから、その関係は長く、染みる付き合いとなる。

例え身内や恋人であろうとも個性が違う。
深く濃い関係を続けたなら、同調できない苦しさを伴う。
大切な関係こそ、浅く淡く優しく付き合うのがいい。
この歳になり、やっと人と人の付き合い方が出来るようになった。

        
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「迷解剣客商売・52」

2011-06-21 18:52:26 | Weblog



人間を描く池波氏の小説。
今の歳になったから共感できる。
生きる事が大切だが、生き続けると変わる。
諸行無常だから、変わるのが当たり前だ。
否応なしに、細胞は変わり続ける。
肉体の変わり方が徐々だから、自覚しにくいが。

当然、生き様も変わったり、多様化する。
生き様は突然変わる事もある。
中々変わらない事もある。
だが肉体が変わるのだ。
生き様が変わらないなど有り得ない。
生き様は変わらないと思っている人は多いようだが・・・

生き様は心の有り方で変わる。
心は肉体の属性だから、肉体変化に影響される。
生きているだけで、多種多様な心の塊が生まれる。
心は常に生まれ続けている。

大治郎が、ある人の全く違う一面を知り、小兵衛に訊ねる。
「いったい、どのような方だったのでしょう?」
「どちらも本当の顔じゃ。人という生き物は、みな、そうだ。
わしなど、十も二十も違う顔を持っているぞ」

ワシも以前は、生き様は一つだと思い込んでいた。
だから真偽や正誤にこだわった時期があった。
真や正や聖は、この世では求めるモノじゃない。
求めても、人間の段階では判断できない。
今は、幾つもの生き様を自由に選択できるようにしている。

        
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