水上陽平の独善雑記

水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1051」

2016-09-30 19:31:47 | Weblog



カルテ番号 よ・6(61)

その後、百合は雇い主の茂木茂氏に会った。
80歳だという。
この歳で新事業となる会社を立ち上げたという。
何かを始めるのに、歳は関係ないのだと思った。
それなら、これからの百合もいろいろな可能性がある。
スタッフの三木裕子さん、明木礼子さんとも会った。
二人とも60歳を過ぎているが、若い。
百合は初対面で、好きになった。

茂木社長は、百合をじっくり見て、にっこりと笑った。
そして柳玲香に言った。
「さすがに柳君だ。
いい人を見つけてくる」
それから百合に向かって言った。
「吉永さん、これからは吉永君とよぶがいいかな。
仕事面での事は、改善面、提案、苦情、何でも言ってくれ。
できることは、すぐやる」

どうやら、皆さんも都会からこちらに引っ越してきたらしい。
そして、あの院長ともつながりがあるようだ。
一体、こちらで何が起こっているのだろう。
思わず口にでた、地震という言葉と関係があるのだろうか?
百合の性格上、ストレートに訊けない。
後で、玲香さんに訊いてみようと思った。

(登場する人物・組織・その他はフィックションです)

(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・講演、お話会依頼、悩み相談受付中。日本中出張します。
ブログで書いた「迷説般若心経」  「迷説恋愛論」  「迷説幸福論」
誰か出版してくれぇ~
18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1050」

2016-09-29 19:42:53 | Weblog



カルテ番号 よ・6(60)

目覚める、と言われても百合は戸惑う。
疑うわけではないが、信じるわけでもない。
確かに自分の中の何かが変わったのはわかる。
何かのスイッチが入ったのもわかる。
「あの~玲香さん。
私、まだ何が何だかわからないままです。
変われたのは実感できるのですが・・・
先生や玲香さんの言う意味は理解できていません」

玲香は笑って言った。
「そうよねぇ。
私だって、最初は戸惑いだけだったわ。
でも、それは自然体でいいの。
当分は私と一緒に行動しましょうね。
特に百合さんは高齢者の相手が向いていそうだわ。
大丈夫、ただ、話を聞いてくれればいいの」

若い人は苦手だけれど、高齢者なら大丈夫だ。
百合は実家と親戚にハッキリと報告しようと思った。
自分はこちらで生活していく。
自分の居場所が出来た。
仕事も見つかった。
親はどんな顔をするのだろう?
でも、許してくれるだろう。
一人で生活する、なんて親としては理想だったはず。

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1049」

2016-09-28 19:27:13 | Weblog



カルテ番号 よ・6(59)

「では早速、玲香さんとよばせていただきます。
玲香さん、私、この地域にいたいのです。
でも、勤まる仕事があるかどうか?
私、他の人と一緒にする仕事をした事がないのです。
自分で独立して仕事を立ち上げるなんて無理だし・・・」
それでも以前のように、絶対無理とも思わない自分がいた。
他の人と一緒に仕事が出来そうな気がしていた。

柳玲香は微笑んでいる。
「これからの百合さんにふさわしい仕事があるわ。
私と一緒にどう?
給料は特別高くないけれど、安くはないわよ。
内容はどんどん変わるけれど、面白いと思うわ。
大丈夫。当分は私と一緒に行動しましょう。
新しい仕事なの。
中高年以上が対象だと思ってね」

百合は願ってもない幸運だと思った。
とはいえ、玲香だって雇われているはず。
なのに、勝手に決めていいのだろうか?
そんな心を見透かしたかのように玲香は言った。
「私、いい人材を探すのも仕事だったのよ。
最初に百合さんを見た時から、ピンときたわ。
もうすぐ目覚める人だと判った。
私が、そうだったから」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1048」

2016-09-27 21:52:22 | Weblog



カルテ番号 よ・6(58)

次の日、百合は柳玲香を訪ねた。
思ったよりも小さなアパートだった。
少し古いが小奇麗な部屋だった。
外の駐車場には目立たないコンパクトカー。
外車かスポーツカーが似合う風貌と振る舞いの玲香は地味だった。
あの院長の話を聞いた後なので、その理由も解る。
柳玲子は、特別な存在なのだ。
だから、目立たぬようにしている。

「柳さん、ありがとう。
あの先生に会って、自分が生まれ変わったようです」
玲香は微笑んで言った。
「これからは、玲香とよんで下さい。
私は百合さんとよびますから」
百合は仲間になれたのだと思い、嬉しかった。
まだ玲香に詳しい話はしていないのに、雰囲気で判る。

玲香は百合の顔をじっと見て、言った。
「先生と何を話したのか知らないけれど・・・
百合さん、別人のようです。
綺麗・・・」
玲香のような美人に言われると、違和感がある。
と同時に、世間一般の評価や判断とは違う意味だというのも解る。
何故、こんなにもいろいろが解ってしまうのだろう。
不思議だけれど、これで自然のような気がする。

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1047」

2016-09-26 21:34:13 | Weblog



カルテ番号 よ・6(57)

劣等感から顔を隠すような髪型。
コンタクトレンズを使わず、縁の太目のメガネ。
いつも下を向いて、顔をみせないような姿勢。
目立たぬような服装。
見て欲しくない、という雰囲気を出して暮らしていたのだ。
誰も百合をじっくりと見ることはなかった。
地味で美人不美人の評価の対象から外れていたのだ。

ここに来て解放される度に、百合は姿勢がまっすぐになっていった。
顔も上げるようになった。
美人なのだ。
本人は美人劣等感から引きこもりになったのだった。
だから、美人と言われても、冗談にも思えない。
なのに・・・
院長の言葉だから受け取れる。
そして・・・嬉しかった。

「ありがとうございます。
変なのです・・・
嬉しいです。
私・・・変わりました。
これから先、どうなるか、愉しみです。
まだまだ、先生の側を離れるわけにはいきません。
これからも、よろしくお願いします」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1046」

2016-09-25 19:19:47 | Weblog



カルテ番号 よ・6(56)

院長は静かに話し出した。
「社会で通用する範囲の能力ならば、存分に使えばいいです。
でも範囲を超える能力とか体質とかは、少し使う程度にしましょう。
一切封印する人もいるでしょうが、私の考えは違います。
能力は抑えて使うものだと思っています。
例えばクジラ。
その力を目いっぱい使ったら、大きな影響が出ます。
彼らは自然の一部、自然というものを知っています。
ですから、一生かけて、ほんの数パーセントしか使いません。

持っている力の5パーセントから10パーセント。
少しだけ役に立つ程度。
急激な変化を自然は求めていません。
本当に力を持つと、自然に判る事です。
吉永さんも、無理して黙っている必要はないですよ。
たまに、少しだけ、変な事を言う美女でいて下さい。
いつか、抑えなくてもいい世の中が来るかもしれません。
でも、今ではないですね」

百合は笑って言った。
「それを聞いて楽になりました。
たまには、自然にまかせてもいいのですね。
でも、訂正がありますよ。
私、美女ではありません」
院長は言った。
「時代や国によって、美女の定義は変わるでしょう。
でも吉永さんが長く誤解してきた事があります。
吉永さんは、美女ですよ」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1045」

2016-09-24 19:29:28 | Weblog



カルテ番号 よ・6(55)

急に人生が曲がってしまった。
百合は自分を変えたい、変わりたいと常に思っていた。
だが、こんな風に変わりたいとは想像もしなかった。
普通に、静かに、相手に気を使わずに毎日を過ごせればよかった。
結婚はしなくても、自立して生活できればよかった。
それとも・・・この院長が根も葉も無い事で脅しているのだろうか?
あまりに信じられない内容なのだ。

考えとは別に、百合は自然に判ってしまう事がある。
心の深いところで、認めている。
多分、自分に理解できなくても、この院長は正しい。
あの柳さんも、同じだろう。
そして・・・自分も。
友達もいない。
親や親戚とも芯からは馴染めない。
自分は孤独な存在だと思っていた。

ところが、理屈ではなく、確信できる事がある。
この院長や柳さんと同じ仲間だという事だ。
院長や柳さんと同じ能力だとは思っていない。
それでも、同じ仲間だと確信できる。
だから、院長の心配も受け入れよう。
「私、目立つのは苦手です。
こっそり生きたいから、黙っています」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1044」

2016-09-23 19:43:37 | Weblog



カルテ番号 よ・6(54)

百合は実感がわかない。
「日本では、そんな乱暴な事はないでしょう?」
「残念ながら、日本も同じなのです。
普段の何も起こっていない時は、日本人は優しいです。
でも、狂ってしまう時代があるのです。
例えば、70年前の戦争時。
全く普通の人の好い人達が、考えの違う人を捕まえ、拷問したのです。
考えを変えないという理由です。

中世の魔女狩りって、聞いた事はありませんか?
少し変わった能力を持つ人達を魔女として火あぶりにしました。
やがて歯止めが利かなくなって、自分と違う生き方をする人も捕まえました。
少しでも違うと、魔女だと風評しました。
人はある状況下で豹変するのです。
特に異端という少数派には厳しく、残酷になります。
大げさだと思わないで下さい。
吉永さんの人生、生命に関わる事なのです」

「でも、私、まだ何もしていません。
たまたま、今日勝手に口から言葉が出ただけですから・・・」
院長は少し悲しそうな顔をして言った。
「そうです。
今日が、正確に言うと、昨日から始まってしまったのです。
これからは、もっといろいろ起こってしまいます。
でも、心配しないで下さい。
吉永さんは、一人ではないのですよ」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1043」

2016-09-22 19:18:48 | Weblog



カルテ番号 よ・6(53)

院長は少し間を置いて再び話を続けた。
「得意な事が公に出せない事もあります。
社会常識とかけ離れた能力。
時には、多くの人達が妬むような能力。
その能力で、権力を持つ人達が困る場合。
例えば、汚職や隠ぺいを見抜ける能力に優れた人。
その人が公で発表したら、世間は称賛すると思いますか?」

百合は考えたが、よくわからない。
「悪い事を見つけたのだから、褒められるのだと思います」
院長は言った。
「見つけられた側が一般なら、それもあるでしょう。
でも、大物政治家、大手の会社、大物ヤクザならどうでしょう?
また、幾度も不正を暴いたらどうでしょう?
おそらく、何らかの理由をつけられ逮捕される。
最悪は、殺されるでしょう」

そんなに酷い事をするのだろうか?
院長の考えすぎではないか、と百合は思った。
院長は静かに言った。
「大げさに話しているのではないのですよ。
古今東西、歴史が証明しているのです。
巨大な、本当の事を言った人達の運命は同じです。
権力者だけではありません。
普通の国民も同調するのですよ。
異端者を排除する、抹殺する考えは現代も同じです」

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・1042」

2016-09-21 19:23:36 | Weblog



カルテ番号 よ・6(52)

院長は真面目な顔で言った。
「吉永さんは大丈夫だと思いますが・・・
これから一般常識外の出来事が起こります。
吉永さんに、ですよ。
でも、自分が特別だと勘違いしないで下さい。
私や柳さん、その他にも仲間がいます。
仲間ですが、特別な人間ではありません。
ただ、数が少ないだけです。

そうですね・・・
人それぞれは個性で成り立っていると話しましたね。
その個性の一面に得意な事があります。
例えば、絵が上手い。
楽器を操るのに優れている。
身体能力が高い。
美味しい作物を作れる、などです。
それらの人は特別ではなく、得意な事がある個性です。

その得意な事が一般の人とかけ離れた場合、特別なように見られます。
例えば、オリンピックで金メダルになるような人です。
世界で一番、その技術が優れているわけです。
でも、同じ人間なのです。
得意な事が表に出せる人達は、評価されます。
世界的なピアニスト。
私には、魔法のようにしか思えません。
でも、同じ人類なのです」

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