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夜が明ける

2021-10-26 16:09:04 | 

 俺がアキを、その容貌からフィンランドの俳優、アキ・マケライネンに似ていると伝えた時からの友情と、二人がどん底で生きる姿を描く小説。

 アキは母子家庭であり、母親が精神的に不安定で行政の福祉事務所の支援を受ける家庭で幼少期を過ごし、高校2年の時に俺も、父の自死で母子家庭となったが、奨学金を得て大学まで通う。アキは高校卒業後、俳優になるべく劇団に入るが、下積みに耐えていたが、劇団主との人間関係の不和で退団し、極貧の生活を送る。俺はテレビの制作会社に入社するが、こちらもひたすら下働きとブラックな仕事の連続で、最後には心身ともに病む。

 著者は現代社会の暗黒の場面を真正面から書いている。自助、公助、よりも目の前の困った人を助け合える関係を築く共助を育てることの大切さを訴えている。但し、「その人が安心して暮らせるようになってから」という条件のもと、援けの手を差し伸べることによって、書名である「夜が明ける」と思う。アキの最後の1年、そして、他者に助けを求めることが出来るようになった俺の再出発に明るい光が射している。

 また、ものをいう目より下の首筋までの顔と首の装丁画がこの小説の訴えを滲ませている。

『夜が明ける』(西加奈子著、新潮社、本体価格1,850円、税込価格2,035円)

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