昨年は生誕100年だった遠藤周作。六甲小学校、灘中、灘高と神戸で過ごしていました。エッセイの本書は遠藤の生き方について思う存分書かれています。
カトリックであった彼の考えには仏教、特に禅や易経の思想も含まれています。「我々の人生で一時的にはマイナスにみえるものにも必ずプラスとなる可能性があり、その可能性を見つけて具現化さえすれば過去のマイナスもいつかはプラスに転じる」や、「本当に役にたつことは眼にみえぬことのなかに在る」などしっかりと的を得ています。
また、「人間を計るに昨日と金とを以てすることが今日ほど強い時代はない」という時代を透徹していた言葉の質が今ではますます強くなり、人の心の重みが軽くなる傾向にあります。人の能力において測定できない範疇を加味しないとロボット一辺倒になりかねません。
一番面白い視点は「愛について」でした。恋とは、愛とはの解説が本当に興味深く、ここを読むだけでも価値ある一冊です。「恋なんて誰でもできるもの。愛こそ創りだすもの。」は至言です。
『生き上手 死に上手』(遠藤周作著、文春文庫、本体価格740円、税込価格814円)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます