Vol.32「忘れられたスター」はこちら。
今回の原題はA Case of Immunity。「免責事件」ぐらいの意味かな。この場合のImmunityは外交官特権(diplomatic immunity)をさしているんでしょう。
犯人は確かに外交官。中東の王国の総領事代理。わたしはものを知らないものだから、どうして首都でもないロサンゼルスに大使館があるのかなーと思ってました。でも舞台は総領事館。大使館と違って、自国民保護のために主要都市におかれているのが常。お勉強になります。
その総領事代理ハッサン・サラーは、公金横領を隠匿するために、警備隊長を背後から殴り倒して金庫から証拠書類を出して燃やし、その金庫を爆破してテロを偽装する。
総領事館の外ではデモが行われており、テロの偽装はまことに有効。実に自然な流れに見える。だがそこにあらわれたのが例の偏執狂的刑事だったことがサラーの不幸。
・警備隊長はなぜ銃を抜いていなかったか(爆発の前にオフィスに入った)
・爆破前に入ったとすればそれはなぜか
・漆喰の粉が焼け残りの書類の上に降っていたので、爆破によって書類が焼かれたのではない(おー、本格)
……などと細かいことにコロンボはこだわる。
「あたしも15年くらいこの仕事やってますがね」
まだたった15年だったのかコロンボ!
「いまでもまさかこの人が、って思うことあります」
「その勘は当たるのかね?」とサラー。
「2割くらい」
およそ治外法権である総領事館で、ロス市警の刑事がこれほど捜査できるのかとも思うが、逆に外交官特権を利用して犯人は逃げおおせようとするのでおあいこ。強欲なアラブ人という類型はいかがなものかとも思うけれど。
サラーはどちらかといえば原理主義的で、開放路線をとる国王とはうまくいっていない。だからデモ隊のスローガンがむしろ国王支持だと気づいたコロンボは、サラーにある罠をしかける。水戸黄門もびっくりのオチはなかなか。
サラーの行動は確かに王への反逆であり、“犯人以外には愛される”コロンボの人間性が事件を解決にみちびく。うまい。ジェフ・ゴールドブラムが出ていたらしいんだけどあたしにゃさっぱり。
Vol.35「仮面の男」につづく。