わたしが山形県民でよかったと思うのは、藤沢周平を早くから意識できたことだ。同郷の作家とはいえ、時代小説にあまりなじみのなかった二十代のわたしに、職場の先輩は
「『橋ものがたり』を、まず読むといいよ」
とすすめてくれた。
ひょっとしてデビュー作から順に読もうなんて考えていたら、その暗さに放り投げていたかもしれない。ご存じのように藤沢周平は、肺病、妻の病死などの私生活の不幸を作品に投影する作風から、二番目の奥さんの明るい人柄もあってか、次第に温かい作風に変容しているのだ。
「橋ものがたり」や「小川の辺」はその過渡期の作品。今回の映画化はストレートです。セリフまでほぼいっしょ。変わっているとすれば、主人公の性格が驚くほど沈着冷静に設定されていること。
実はわたしが面白かったのはその沈着の部分。
妹の夫を上意によって斬りに行く主人公(東山紀之)は、幼い頃から兄弟のようにして育った若党(勝地涼好演!)を伴う。彼への思いやりがいい。声をかけられたときに、わざわざ居ずまいをくずして向かい合ったり、ご飯をおかわりするように無言で仕向けたりする。
言葉少なく、厳しい表情のままでそんなあたたかさを演じきる東山にびっくり。新しい必殺シリーズでもよかったけれど、いい役者になってたんだねー。身体がまたいいんだ(笑)。
妹役の菊地凛子は、正統派の美人というわけではないので(気をつかった表現)娘髷のままだと國村隼みたいに見える瞬間があるのでハラハラ。でも人妻となって小川の辺に夫と隠れすむようになってからはちゃんとした美女になっておりますのでご心配なく。「カムイ外伝」を負傷降板した憂さを晴らすかのような立ち回りです。
あの尾野真千子が時代劇かよっ!という心配も杞憂でした。なんか心配ばかりしているみたいだけど、山形県のテレビ局、自治体が総掛かりで支援しているので、これでコケたらかなわんですもの。
いやそれにしてもウチの知事と山形市長がエキストラ出演してたなんて知らなかったなー。山形県職員として、まことにもうしわけござらん。
というのも6/19のまちキネ13:15の回、
「あれ市長でね?」「あいや知事もでっだぜ」と
ご年配の方がヒソヒソ。実はこの回舞台挨拶ありで
全席埋まっていました。(券は5/28発売20~30分で完売)
私は2列目だけど最前列です!
東山紀之さんと篠原哲雄監督だけと聞いてましたが
藤竜也さんと松原智恵子さんも駆けつけました。
県内各地ロケ地含め、配役・脚本も本当に素晴らしかった!
原作を読んでいない人は、彼の腹の中に何があったかという
どんでん返しにびっくりしたはず。
ところで、市川市長とうちの知事ってどの場面に
出てたの?
殺陣がよかったですねえ。決まってました。
やはりここは、付け焼刃の女性たちの殺陣とは、年季が違ってた。
まあ、雑誌の評や、一度見た印象などで、見る見ないと決めるのもわかりますが、是非自分の目でいろいろ見て欲しいですね。老婆心でした。
市長は娘を連れ、正面からしっかりと映ってます。
知事は小さい女の子を連れ、会釈する別カットもあります。
自分もsakuraiさんに同感。
まずは自分自身がその映画を体感してから、ですよね。
妙に長いカットだったんで不自然だなあと。
しかもエキストラへの演出が甘いぞと思ってました(笑)
まさか雇用主だったとは……
にしてもヒガシの身体にはびっくり。
鍛え上げた、という以上にその上に微妙な柔らかさが
ありそうですばらしい。
かつて今野雄二がジャック・ニコルソン(もちろん若い頃の)
の肉体を絶賛してたのと同様の……
ん?ってことはあっち方面の方々はぜひ見なきゃ!
(「時代劇は死なず」春日太一著 集英社新書)
必殺がどんな位置づけだったかがよくわかった。
気鋭の監督や脚本家たちがどれだけ過激に走ろうと
しても、制作の山内久(朝日放送)は、エンディングには
中村主水のホームドラマをもってくるようにしたと。
でないと視聴者は絶対に離れていくとのポリシー。
わからないでもない。そのあたりを新作はトレースしたんじゃないかな。
鬼一方眼はねー、面白かったんだー。三度笠からバックミラーが
出てくるんだぜ(笑)