正直、観るかどうか迷ってました。あの「スター誕生」の物語。自分が発掘した妻がスターとなるけれど、夫は落ち目になり……そして(ジュディ・ガーランド版の)ラストのセリフにどうつなげるか。きつそうだなあ。
でもやっぱり映画館で観てよかった。それまでギターを弾いたことがなく、人前で歌ったこともなかったブラッドリー・クーパーがのっけからニール・ヤングばりのライブ。ジャクソン・メインは大スターという設定だからここがうまくいかないとドラマが壊れるところ、製作も監督も兼ねているし、クーパーは気合いが違う。
レディー・ガガ演じるアリーの登場も衝撃的だ。トイレで男と電話で別れ話。のっけから4文字言葉の連発。ウェイトレスの彼女は「今夜はライブ」と店を去る。そのライブがドラァグクイーンズバーにおいてなの。
つまり、男顔のガガのまわりを女装マニアたちがとりかこむという意表を突いた設定(笑)。その店に、ジャクソンがやってきてアリーの才能を見抜く。
いいシーンがつづく。スーパーの駐車場、コンサート会場の舞台裏、アリーを強引にステージに立たせるやりとり……彼女がシャウトした瞬間こそ「スター誕生」。震えがきた。
「あたしは綺麗じゃないから」
「?」
「鼻がもう少し小さかったら」
「さわっていいか?」
このあたり、オトナの会話ですね。76年版のバーブラ・ストライサンドの方がよほど鼻が大きいことを知っているとなお笑えるし。ああもっと言いたいことがいっぱいある。以下次号。