映画と列車は親和性が高い。サイレントの「大列車強盗」の時代から、力強い被写体が映画を文字どおり牽引してきた。
この、誰しもが名画と認める作品も列車の描写から始まる。そしてそこに
♪ In the Heat of the Night ♪
とレイ・チャールズの絶唱が!(作曲はクインシー・ジョーンズ)。んもう、一気に持ってかれてしまいました。
まず、わたしの世代にとって、この映画のスタッフは驚異的だ。
・監督は「ジーザス・クライスト・スーパースター」「シンシナティ・キッド」「屋根の上のバイオリン弾き」「月の輝く夜に」のノーマン・ジュイソン。まあ、「ローラーボール」なんて珍品も撮ってますけど。
・脚本はパニック映画の大作「ポセイドン・アドベンチャー」「タワーリング・インフェルノ」でおなじみのスターリング・シリファント。この人も「キラーエリート」「スウォーム」ってとんでもないのも書いてますけど。
・撮影は「アメリカン・グラフィティ」「カッコーの巣の上で」「天国の日々」のハスケル・ウェクスラー。
・なんと編集はまだ監督になる前のハル・アシュビー。「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」のあの人ね。
このそうそうたる面々にクインシー・ジョーンズとレイ・チャールズが加わるのである。アカデミーの作品賞をとったくらいだからレベルが高いのは当然。エリート黒人刑事(シドニー・ポワチエ……くっそー、「冒険者たち」のレティシア役ジョアンナ・シムカスをかっさらった男)と、差別意識を隠せない署長(ロッド・スタイガーがいい味)の相克と和解の物語はもちろんすばらしい。
でもそれ以上に、ミステリ映画としてとても周到に出来ているのが今なら理解できる。夜の熱気の中で、狂気をはらむ犯人の描写が……あ、ちょっとネタバレ。
ごひいき、ウォーレン・オーツとリー・グラントの登場もうれしい。