事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

日本の警察~その31「鑑識・米沢守の事件簿」 (2009 東映)

2010-07-03 | 日本の警察

Yonezawamamorup

その30「後悔と真実の色」はこちら

監督 : 長谷部安春

原作 : ハセベバクシンオー

出演 : 六角精児  萩原聖人  市川染五郎  紺野まひる  片桐はいり  伊武雅刀

ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムを引き合いに出すまでもなく、鑑識は、実は物語的においしい題材なのだと思う。物的証拠こそが捜査の基本であることを考えても、彼らはもっと注目されていい。

前から何度も言ってるけど、わたしはテレビ朝日の刑事ドラマがどうにも苦手。結局のところお涙頂戴に収束していくあたりがどうも。

でも劇場版の「相棒」は、そのスケールといい、犯人の動機といい、捜査の切れ味もおみごとだった。東映としては久々のヒットで(っていうか子ども向け映画と「劔岳」以外に近ごろ東映でヒット作ってあったっけ?)、だからこそシリーズとして上手に育てていかなければならなかったはず。

それなのに、なぜかいきなりスピンオフ企画。まさか水谷豊のスケジュールがおさえられなかったわけじゃないだろうに。わたしが知らないところでこの米沢守さん(六角精児)は大人気だというし、鑑識が主役なのだからそれもありなのか、と思ったら……

まず、鑑識の仕事がほとんど描かれないのはなぜだ。米沢がやったことといえば、血液型の検査とパソコンの修復だけ。しかもそれは犯人逮捕よりも、被害者の夫(萩原聖人)と自分の救済のため(彼らふたりの配偶者がうりふたつという設定)。

まあ、それには目をつぶるとしよう。犯人の描き方など、うまい部分もあるのだし。でもね、登場人物たちの演技がどうにもこうにもみんな時代劇ってのはどういうこと?特に、米沢の同僚たちはどう見ても悪代官とその手下東映の伝統の悪しき部分がここに集約されている。萩原聖人も、ファナティックにがなりたてるだけだしなあ。

もっとも意外だったのは、原作のハセベバクシンオーが、監督の長谷部安春の息子だったことでした。やれやれ。

その32「踊る大捜査線3 ヤツらを解放せよ!」につづく

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「アウトレイジ」 Outrage (ワーナー=オフィス北野)

2010-07-03 | 邦画

Outragep 監督・脚本:北野武

音楽:鈴木慶一

出演 ビートたけし/椎名桔平/加瀬亮/國村隼/三浦友和/石橋蓮司/小日向文世/杉本哲太/北村総一朗/塚本高史/中野英雄

 オープニング。横なめに男たちの顔がスクリーンに映し出される。それはもう、みごとなまでのヤクザ顔。かなりのオーディションを重ねたであろうことがうかがわれる。

「アウトレイジ」の売りは、このオープニングに象徴されるように、いつものたけし組の役者ではなく、徹底してプロの、しかもかなり“うまい”男優たちをキャスティングしたことにある。三浦友和と加瀬亮という、おそらく日本でいちばんうまい役者を、酒焼けに見せるために顔を赤黒くまでさせてヤクザに仕立て、しかもこれがうまくいっている。

 しかし逆に、ビートたけしという役者がかなり異質であることも意識させてしまうのだ。バラエティで見せる照れ笑いでおなじみのあの顔が、暴力を感じさせた途端にむやみに怖くなる落差は、うまいヘタをこえた何かがあるのかも。

 組織の論理に翻弄されて、弱小の組のほぼ全員が惨殺される過程は、東映のやくざ映画でおなじみのものだし、最後に生き残るのが“あの人”“あの人”であるあたりも実は新味のない展開だ。

 でも、たけしのねらいははっきりしている。怖さと笑いは紙一重なのだとばかりに、残虐シーンを積み重ねてつきぬけた笑いまでもっていこうとしたのだろう。だとしたら、わたしはもっと残酷で下品な仕掛けがあってもよかったと思う。なにしろタイトルが「OUTRAGE(暴行)」なんだから。

指つめだけで外国人は失神しそうになるわけだが、噂の歯医者のシーン(ウィーンってヤツで口をグリグリ)はもっと徹底してほしかった。あれよりはむしろラーメン屋で菜箸を耳に突っこむシーンの方が痛かったし、刑務所内のおだやかなソフトボールから殺人にいたる転調の方がさえている。

 “作家の映画”の連続で、敬遠していたたけし作品。今回はなかなか。これからも、もっと暴力を。もっと、残虐さを。

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