カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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台風20号は伊豆諸島へ 意外と知られていない台風の素性についてPart8 台風と偏西風帯の谷との結び

2009-10-26 23:51:27 | インポート

①10月26日15時の天気図 気象庁HPより引用

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②10月26日9時気象庁発表のAXFE578図 日本気象予報士会HPより引用

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台風20号が本州の南海上を北東に進んでおり、26日夜遅くには伊豆諸島南部へ接近する予想です。

台風20号は、その後、27日にかけて、関東沖~東北地方東海上を北上する予想ですが、台風が北上して、本州付近の上空を流れる偏西風帯と結びつくようになりますが、その偏西風帯との結びつき方によって、台風は以下のような挙動をするようになります。

Ⅰ:台風と偏西風帯の谷がほぼ南北方向にて結びつく・・・・・上空1500m付近で、台風の東側で暖気移流が顕著、逆に台風の西側で寒気移流が顕著となる。→台風は次第に速度を上げて進み、台風の勢力は北上しても衰えにくい(かえって発達することもある)

Ⅱ:台風と偏西風帯の谷がほぼ東西方向か北西~南東方向にて結びつく・・・・・上空1500m付近で、台風周辺では寒気移流が暖気移流よりも顕著になることが多く、台風自体次第に衰えることが多い。ただ、台風の北西側から西側に位置する谷に前面に暖湿流が入りやすくなり、台風通過後も、新たに低気圧が発生して、当該低気圧が強い雨を降らせることも多い。

Ⅲ:台風と偏西風帯の谷とが結びつくと、前記Ⅰ、Ⅱに限らず、広範囲で風が強くなり、台風の進行方向左側でも強風被害は発生しやすくなる。

今回の台風20号ですが、引用図②の上側より、台風と偏西風帯の谷がほぼ南北方向にて結びついており、②の下側より、上空1500m付近で、台風の東側で暖気移流が顕著、逆に台風の西側で寒気移流が顕著となっていますね。よって、今回の台風20号、今後次第に速度を上げて移動し、広範囲で風が強まることが言えそうですね。

進路に当たる、東日本や北日本など、広範囲にわたって強風や海上に高波には充分な警戒が必要ですね。

さて26日午後3時40分ごろ、米ダラス発成田行きアメリカン航空61便のボーイング777―200型機(乗客乗員228人)が成田空港の南東約70キロ、高度1500メートルの太平洋上で乱気流に巻き込まれ、3人が負傷した。とのニュースが入ってきました。

③10月26日12時~18時までの ウインドプロファイラー勝浦(千葉県)時間高度断面図 気象庁HPより引用

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④乱気流事故発生当時の千葉県周辺レーダーエコー合成図ペパーランド気象センターHPより引用。

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事故発生当時、引用図③より、千葉県周辺では上空1500m付近より下側で風速が強まっており、上空1500m付近にウインドシアー(風向風速の不連続部分)が発生している様子が判ります。

さらに、引用図④より、事故発生した千葉県南東沖には、強いエコーが帯状に発生しています。これは、関東平野に対流した冷気と、関東の東海上~関東平野に向かって吹き付ける、相対的に気温の高い東より風との間で発生した、件の 沿岸前線 に伴って発生した発達中の雨雲ですが、乱気流発生した千葉県南東沖では、当該、発達中の雨雲の影響で、局地的に、鉛直方向のみならず、水平方向にも気流の乱れが発生していたと考えられ、この気流の乱れが、前記したウインドシアーと相俟って、今回の乱気流を発生させた。と私は考えます。