ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

赤岳と横岳:クラスト

2017年07月10日 01時01分19秒 | Weblog
奥の院での休憩を終え、再び縦走へと向かった。
二ヵ所の梯子を過ぎ、比較的楽な縦走ルートとなった。
ここから「三叉峰」の分岐点までは安心できるルートで、緊張感からも解放された。

ほどなくして三叉峰分岐点を示す指標が目視できた。

ここまで来れば後は日の岳を巻いてルンゼを下り、東斜面をトラバースすれば地蔵の頭へと辿り着く。
予定しているルートタイムより遅れ気味だったが、今日は夕方までに完全下山すれば良いだけ。
慌てることなく進めばよい。

指標ポイントで一服したが、やや腹も減ってきていた。
行動食を摂ったが、もう少し食べたいと思える程減っていた。

ふり返れば奥の院が見えた。
将に稜線に沿った縦走ルートであることがよくわかる。
「どう? 本格的な雪山縦走は。 今度は単独で来られるんじゃない?」
「とてもじゃないですけどまだまだ無理です」
はにかみながらの返事だったが、その後の視線を下に向けた表情は本気のようだった。

10分程休憩をし、日の岳へと向かった。
日の岳を越えるには、一端西側へと下りそのままトラバースし、ルンゼへ向けて直登する。
すぐに下りルートのクサリ場が見えた。
稜線の西側のクサリ場であることから、雪面が固く締まっていることはある程度は予測できたが、思っていた以上の固さとなっていた。
なんとなく嫌な予感がした。

トラバースルートへと出ると、その予感は的中していた。
雪面が光っていたのだ。
嫌なひかり方だった。
「ここはトラバースだけど、ちょっと調べてくるから待ってて。」
そう言って一歩を踏み入れてみた。

爪が上から十分には刺さってくれなかった。
わずかには刺さるのだが、身の安全を確保するには決して十分ではなかった。
スピッツェはそれなりには刺さる。
「スピッツェだけで行けるか・・・いや、ちょっと距離があるなぁ。それにこれだけの斜度だし、落ちたらこの固さで制動ができるかどうか・・・。」

少し考え、自分一人ではないこともあったし無理は控えることにした。
問題はトラバースの技術だった。
単純な斜面でのトラバースであれば、山側にスピッツェを刺し、フラットフッティングで通過すればよい。
それができないとなれば、フェイスイン体勢でダガーポジションでのピッケルワーク。
そしてアイゼンはキックステップで移動するしかない。
しかも徐々に下るようなルートとなっている。
この技術はまだ彼には教えてはいなかったのだ。

もう一度考えた・・・が、やはりこれで越えるしかないだろうと結論づけた。

AM君のところに戻り、状況を説明した。
雪面のクラスト状態が予想以上に強く、通常のトラバースができないこと。
フェイスイン、ダガーポジション、キックステップ等々を一通り話し、納得してもらうしかなかった。
「先ずは俺が一定距離のポイントまで移動するからよく見ていてほしい。無理に力任せに蹴りこんだり刺す必要はなくて、それよりも確実に三点支持で移動することが大切だから。そしてゆっくりと進むこと。大丈夫!」




AM君にはっきりとわかるよう、敢えてゆっくりとした動作で進んだ。
今度はAM君の番だ。
OKサインを出し、こっちへ来るよう促した。



「OK OK、そのままゆっくり。いい感じで来てるよ。」

とにかく彼を安心させたかった。




表面はバリバリの氷と同じような雪面。
しかしバリバリなのは表面だけでなく、中ほどまでもクラスト状態だった。
さすがは南八ヶ岳の西壁・・・などと感心している場合じゃない。
一緒だったのがAM君で良かった。
人を連れてくるにも、場所やルートによっては事前に人を選ぶ必要があると痛感した。

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