ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

劔岳本編:室堂へ

2011年10月22日 19時37分04秒 | Weblog


翌早朝6時20分。
ほぼ定刻に終点である富山駅前に着いた。
曇ってはいたが、路面は明らかに雨上がりの直後であるとわかる。
晴れまでは望まないが、できれば今の天候をキープしてほしいと切に願った。

富山駅からは、季節限定の室堂直行便のバスがある。
事前に予約をしていたため、座席を心配することなく、ゆっくりと朝食を食べることができた。
とは言っても「吉野屋」の朝食セットだが・・・(笑)。

昨夜は結局一睡もできなかった。
バスに揺られることで眠れなかったのではなく、明らかに緊張からだった。
ずっと目は閉じてはいたが、この一年間の劔岳への想いや、してきた準備のこと、そして職場や友人、モンベルスタッフ、ROOKIEさん、家族、多くの人たちとの経緯が回想録となり頭の中を駆けめぐっていた。
やがてカーテンの隙間から車外がうっすらと明るみだし、朝が来たことを伝えた。
「遂に富山入りか。来ちゃったな。」

朝食を終え、向かいにあったコンビニに入った。
ここで水を購入し、持ってきたスポーツドリンクの粉を溶かした。
そして、残りの水は万が一の怪我に供えてザックに詰めた。
重いザックが更に重くなった。
「さぁて、バスに乗るか。」
再び富山駅前のバス停へと歩き出した。



行き先を確認し乗車。
おっと、その前にやらなくてはならないことがある。
そう、ROOKIEさんへのご挨拶だ。
一応周囲を見渡した。
ほとんど人はいない。やや恥ずかしい思いはあったのだが、やるしかない。
スゥーッと鼻から息を吸い・・・
「ROOKIE殿ぉ~~ 俺はやったるでぇ~~!」
言った者勝ちだ。
バスの運転手さんが笑いながら近づいてきた。
「どうしたのですか? いきなりでびっくりしましたよ。」
「いや、ちょっと意気込みを言っただけなんで、朝からすみませんでした。」
内心恥ずかしいという思いはあったが、言ってしまえばこっちのもの(笑)。
ROOKIEさん、聞こえたかなぁ・・・そんな訳ないか(笑)

直行便とは言え、ここから室堂までは2時間30分もかかる。
できることならこの間に睡眠をかせぎたい。
1時間ほどは眠ることができたが、目が覚めたときは窓の外は一面真っ白なガスの世界。
「やっぱりな・・・。」
期待はしていなかったが、ここまで悪天候になるとは。
窓ガラスには雨粒が無数に着いている。
今のうちに雨具をと思い、ストームクルーザーを着た。

予定より20分ほど早く室堂ターミナルに着いたが、バスを降りてどっちの方角に行けば良いのかが分からない。
降りる人の流れに任せようと思ったのだが、バスから降りたと同時に猛烈な風雨に体がよろけた。
(「ちょっとこれはまずいんじゃないか!」)
予想を上回る強い風雨にこれからの登攀への懸念が強まった。
とりあえず建物の中に入る。



大勢の人たちがいた。
その殆どは登山者だと分かったが、中には観光で来てると思われる団体や家族連れもいた。
思っていた以上に大きなターミナルだった。
はて、劔岳へはどこから抜ければいいのか・・・と階段を上ると、おどりばに「登山届け」の用紙と箱を発見。
そうそう、これを忘れちゃいけない。
必要事項を記入し終え、ふと壁にあったボードを見た。
そこには主なポイントの気温、天候、風力等が表記されていた。
これは助かるなぁ・・・だが、室堂が風力5mにはかなり疑問が。
「あれで5mはないだろう。重いザックを背負っているのに体がよろけるほどだぜ。それとも俺の体が頼りなさ過ぎるかな・・・。」
と思っていると、その横には怪我人、死亡者が出た場所や原因が表記されていた。
じっと食い入るように見つめる。



忘れていた不安が急に思い出され、これから自分が目指す山が如何に生命の危険を伴うかをあらためて思い知らされた。

階段を上がり、いよいよターミナルの表へと出た。
予想以上の風雨に先が思いやられる・・・。