自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

地域ミュージアムで考える(7)

2016-04-24 | 随想

ミュージアムを地域の目線に立って変える第1弾が,先に触れた壁面ギャラリーの自由開放です。

第2弾は,ジュニアボランティアを募って,事業にかかわって協力してもらえる子どもたちを養成していくこと。内容は,各種サイエンスブースでの手伝い,展示物の解説・案内,実験・観察活動などを描いています。子どもたち自身がたのしめ,「おもしろい!」と感じる施設に向けて脱皮を急がなくてはなりません。

これに2つの手を打つことにしました。1つは市内の学校に募集チラシを配布する手。もう1つは,ミュージアムで直接呼びかける手。

前者は説明しなくてもわかっていただけるでしょう。後者は,ミュージアムにやって来る子どもたちに魅力的な体験を直接提供する試み。館内に設置する体験コーナーで行い,科学好きな子との出会いをたのしみにしてボタンティア募集情報を発信します。対話する中で声掛けができそうです。これだと,市外からのジュニア来館者にも,おとなにもPRできます。おとなも加わっていただければ申し分なし,です。

このコーナーの名は『ちょこっと サイエンス』。コーナーでは,わたしが“自然となかよしおじさん”の名で,来館者に各種火起こしを体感していただくことを考えています。といっても,まずはキリモミ,マイギリ,火打ち,この3種程度かな。科学ミュージアムですから,エネルギーのことを念頭においた解説を,やさしく,たのしくしていこうと思います。もちろん,時代考証を欠かせません。とくにマイギリ式は!

土曜日の午後に行います。おもしろくなりそうです。是非お越しください。そして,ほんとうに魅力的ならあなたのお子さんをわたしたちのボランティアさんとして登録してみてください。


という思いで,始めたのが4月23日(土)。来館者がたくさんあって充実したひとときになりました。ふれ合いがあって,体験者自身の発見があって,……。そんないくつものドラマがありました。

 

なかでもキリモミ式はスゴカッター! ご家族でのチャレンジにはこころからの拍手をおくった次第です。2組のチャレンジがあり,2組とも成功! そのうちの1組は10分以上粘られました。スゴイ! これぞファミリーの底力!

 

職員がこの風景を写真に撮って,大判でプリントしプレゼントするという,思いがけない場面も! 「これはいいね!」と,思わず唸ってしまいました。このファミリー,「また,ぜひ来ますから」といいながら,ミュージアムを後にされました。

このコーナーを重ねながら,ボランティア集めにつなげようと思います。見込みはあります。 

 


ベニシジミの産卵

2016-04-24 | ベニシジミ

ベニシジミがずいぶん目に付くようになってきました。ミュージアム公園の芝生を注目していると,あちこちでベニシジミが飛び回っています。

ふしぎなふしぎな光景なのですが,わたしの目の前に偶然飛来したベニシジミが産卵行動を示しています。地表に降りて翅を拡げ,いかにも産卵だよと教えてくれる素振りなのです。人がいてもいなくても,ちっとも気にしないところが愛らしさを感じさせるのでしょうか。「これは卵を産むにちがいない」と思って,腰に携行しているコンデジを出して撮影準備に入ります。

舞い上がっても,すぐ近くに降りて,歩いて産卵場所を探しています。

小さなスイバを嗅ぎ付けてやって来ました。しかし,そこには産まず,脇にあるコケに産み付ける格好をしました(下写真)。スイバでなくても,近くならよいと判断したのでしょう。孵化する幼虫から見ると,生き残るうえでは多少の困難は伴います。産卵場所にはこのようにファジーさがあるという解釈が成り立ちそうです。

 
その後,歩いて傍のスイバに移動。写真に写っている赤い葉に卵を産み付けました。その瞬間は手前の草が視野をさえぎり,惜しくも写すことができませんでした。


ベニシジミが去った後には,卵が一粒残されていました。 


この日は,ちょうど公園で伸びた草を刈り払う作業が行われました。このまま放置すると,当然このスイバは刈られてしまいます。それでは,この卵がかわいそう。それで,株ごと掘り上げて館内で観察することにしました。 

 


ナナフシの成長(1)

2016-04-23 | アカタテハ

ミュージアムに展示しているナナフシのその後について,これからシリーズで書いていくことにします。産卵まで観察できれば上々なのですが。では,スタート!

4月14日(木)。買って来た園芸種のバラは容器に入れるには背が高すぎるので,結局,野生のノバラを採集してきて置き換えました。しっかり食べて,しっかり糞をして順調に育っています。体長20mm。

よく見ると,葉の裏に隠れていても,脚の縞模様で「これだ!」とわかります。

 


中には,枝に擬態して外敵の目を欺こうとしている個体もいます。 


堂々と,というか無頓着にというか,葉の表面にいる個体もあります。緑色のからだはまさに保護色っていう感じ。 


糞はどっさり落ちています。離れたところから見ると,まるでさらさらっとした粉のよう。ルーペで見ると,一つひとつは細長いことがわかります。今度は,糞が排泄される場面を観察したいものです。


4月22日(金)。
体長3cmに成長。これまでに職員間で話題になっていたのが脱皮後の皮のこと。それがどうも見当たらないので,ふしぎだなあと言い合っていたのでした。それがなんと,見つかったのです。

 
これだけ長い脚皮をじつにうまく脱ぎ捨てたものです。感心,感心。 

 


ルリタテハ,孵化へ

2016-04-23 | ルリタテハ

4月18日(月)。卵の直径は0.7mm。中をじっと見ると,なにかしら下半分が黒っぽく見えます。幼虫のからだがつくられていっているのです。


4月19日(火)。黒っぽさがかなりはっきりしてきました。


 4月20日(水)。昨日と比べると,いくぶん黒っぽさが増したかな,ほとんど変わらないかなという感じ。あと2日もすれば孵化するでしょう。他に卵はないか,探してみました。しかし,見当たりませんでした。


この日の夕方近く,ミュージアムの玄関先にいると,成虫がどこからともなく飛来して足元に降り立ちました。人懐っこさをますます感じさせる一瞬でした。

  

 


ベニシジミの孵化

2016-04-22 | ベニシジミ

先日(4月12日)採集したベニシジミの卵がどうやら孵化間近になったようです。厚みのある殻の上部に,黒っぽいものがうっすらと感じられます。これは幼虫の頭部です。卵の直径は0.6mmですから,ルーペを使っても目を凝らさないと確認しづらい変化です。

気をつけておかないと見逃してしまうなあと思いつつ,しばらくしてから見ると,もう幼虫が殻を破りかけていました。タイミングはばっちり,です。 

 
じつに時間をかけて,ていねいに出口を広げて行きました。からだを覆う長めの毛が出ています。下写真はトリミングしたものです。元画像の段階でこれだけの大きさで写せると理想的なのですが,それは贅沢というものでしょうか。


もう出られるかどうか,どこで感知するのかわかりませんが,休むこともなくそのまま出始めました。これだけのからだが円を描くように曲がった状態で入っていたのです。からだを守る毛が後部に向かって流れています。殻の中ではクッションになってからだを保護していたのでしょうが,これからは外的刺激からの防御手段として威力を発揮することでしょう。 


出終わると,これまでもそうであったように,殻には未練を残さずにさっさと視界から消えて行きました。殻の上部にはぽっかりと大きな穴が! といっても,直径0.3mmに過ぎません。

 
いのちの誕生の物語は,大きな生きものでも,小さな生きものでも,心に沁み込みます。 

 


ダンゴムシの求愛

2016-04-22 | 生物

昨日(4月21日)はあいにくの雨模様。今朝は,きれいに晴れ渡って,真っ青な空が広がっていました。

早朝,アゲハの庭園で見かけたのがダンゴムシの求愛場面。場所は湿った石の上。大きいメスの背に小さなオスが乗っていたので,「ははーん,これは求愛行動だな」とわかりました。


それで,写真を撮ろうと思ってカメラを出して撮りかけました。ところが,ところが,驚いたことに一瞬たりとも静止することはありません。もし数秒でも動きを止めてくれたら満足のゆく画像が得られるのに,と思いました。接写画像で納得がゆくというのは,わたしの場合,深度合成ができて奥行きがはっきり感じとれるという意味です。それができないと,立体感のあるおもしろい画像にはなりません。


それはともかくとして,2匹はその後,横倒しになったり,横倒しになったままくるくる回ったり,目まぐるしく動きました。


「これって,メスは迷惑がっているのかなあ」「片思いじゃないかなあ」。どうも,そんなふうにしか思えない動きに見えましたが。

 


カラスノエンドウと昆虫たち(続)

2016-04-21 | 昆虫と花

カラスノエンドウの花でいちばん目に付く昆虫を1つ挙げるとすれば,わたしは真っ先にアブラムシを挙げようと思います。にょきにょきと林立した茎先を見渡すと,軒並みにアブラムシが付いた場面が浮かびます。もちろん,アブラムシは茎汁を吸っているのです。つまり,カラスノエンドウの茎には大好物の栄養分が詰まっているというわけです。

アブラムシがいると,そこにはアリが必ずやって来ます。両者の共生関係は見事です。

アブラムシはテントウムシの幼虫に襲われます。幼虫は凶暴な肉食性の生きもので,顎を見ただけで食欲の旺盛さが浮かびます。アブラムシがたくさんいるところでは,テントウムシの幼虫もたくさん見かけます。なかには,これだけいる茎も!


アブラムシの動きはたいへん鈍いので,幼虫たちはいくらでも口にすることができます。もりもり,むしゃむしゃ食べていきます。


幼虫はもちろん鎧で身を武装していますから,脱皮しないと大きくなれません。ときには,脱皮して脱ぎ捨てられた皮が茎に付いたまま残っている風景を見かけることがあります。


ホソヒラタアブの幼虫もアブラムシが大好物。

 
植物に依存してくらす昆虫がいて,その昆虫を食する昆虫がいます。もちろん,その昆虫をまた食する昆虫(虫)がいます。植物はいのちを巡るドラマの舞台なのです。カラスノエンドウもまた。

 


地域ミュージアムで考える(6)

2016-04-20 | 随想

子どもは,興味関心をからだで表すことが多いものです。行動的な子のそれは一目でわかります。呟きでも,ピンときます。それに比べると,おとなの場合はことばが出て来ない限り,見えにくいものです。それは発達段階における特性なので当然なのですが,それがわかっていてもおとなの貧弱さにがっかりすることがよくあります。齢を重ねると,かつては瑞々しかった好奇心がこんなにもやせ細るんだなと思います。

おとなが子どもと同じ目線にいるみたいに,あるいは“子ども“おとなそのままに知的好奇心を発露させるかのように,ひととき一心になる人に出会うのは稀です。しかし,この場合の“稀”は,このタイプの人が存在するという事実を裏返したことばです。実際,周りの目を大して気にすることもなく一心になる人に出会うこともあるのです。


わたしが近年出会ったこのタイプの人の一人。サイエンス・ショップで,発火法を教授しているとき表情がきらきらしていらっしゃったので,それとなくわかりました。「これはおもしろい!」といいながら,何度も発火法に挑まれるのでびっくり。「子どもより喜んでいるなんて」といって,横の我が子をちらっとご覧になりました。そのときのことが脳裏から消えません。

つい最近では,ミュージアムでの出会い。ある展示装置の前で,一人のお父さんが「ふしぎだ,ふしぎだ」といいながらその場を離れようとなさいません。「どこがふしぎですか」「もっと知りたいことが湧き上がって来ましたか」なんて,わたしは知的好奇心をくすぐるような感じで語りかけました。やりとりをしているうちに,しくみを発見するまでずいぶん粘られました。おしまいに「納得しました。それにしてもふしぎ! 子どもより熱中ですね。ありがとうございました」といってご家族と合流されました。

壁面コーナーでナナフシの幼虫を展示し始めました。親子連れのご家族がその前でじっと飼育ケースを見ていらっしゃいました。お子さんは昆虫飼育箱を手にしているので,「虫が好きなの?」と尋ねると,昆虫博士になりたいなんて返って来ました。見ているうちにナナフシを発見。見つめたまま「このままのかたちで親になるんですか」「バラを食べるんですか」「探したら見つかりますか」「殖えますか」」と,矢継ぎ早に質問されました。おしまいに,「いいものを見せていただきました。こんな小さいものがよく見つかったなあ。ふしぎ」とおっしゃっていました。

ミュージアムは知的好奇心を呼び覚まされたり,くすぐられたりする場です。子どもなら,興奮を喚起してくれる場となるでしょう。

おとなは,思いや感じを子どもほど屈託なく表現できなくなった年齢に達しています。ミュージアムを訪れることで,童心とは無縁の雑念,縁遠い精神の堅物をひととき壊して,人間出発の原点に立つことができます。ふしぎは人のこころを虜にします。人はふしぎに釘付けになります。

わたしたちのミュージアムに一度お越しください。たぶん(きっと?),リピートしたくなる仕掛けがありますから。 

 


カラスノエンドウと昆虫たち

2016-04-19 | 昆虫と花

カラスノエンドウが勢力を誇って群落を形成する季節です。カラスノエンドウはマメ科植物です。マメ科の花はミツバチのよう口器を持った昆虫の訪花を期待していて,チョウのようにストロー型の口を持った昆虫はまったく期待していません。マメ科の花に直接聞かなくても,推測だけでもかなり高い確率でそういえます。

それは,この科の花が備えている受粉のしくみと,訪花昆虫を見ていれば理解できます。花は蝶型をしていて,下側にある花弁に虫がとまると,中にしまい込まれていた蕊が飛び出して来て,先にある花粉が虫のからだに付着。同時に,すでにからだに付いていた花粉がメシベの先“柱頭”に付着。もちろん,昆虫は口吻を花の奥に入れることによって,蜜を贈られるという物語です。これにて,送・受粉は一件落着。

しかし,解説文によれば,カラスノエンドウは自家受粉の植物であるとか,花外蜜腺を持っているとか書いてあるので,マメ科の花一般の解釈を援用してよいのか,わたしには自信がありません。中には,花が開く前にすでに受粉は終わっているとまで書かれたものがあります。それでわたしにいえるのは,たとえば,シロツメグサにチョウがとまってストロー型の口を入れていると,「これはお見事な蜜泥棒チョウ! 頭脳プレー!」ぐらいの感想を持てる程度。

カラスノエンドウがたとえ自家受粉の植物であっても,次の写真は何を意味するのでしょうか。チョウはヤマトシジミです。口吻が伸びています。わたしには,花の中に蜜があって,うまく蜜を盗み取っているように見えます。


ハナバチがカラスノエンドウを訪れるのはよく見ること。これは明らかに他家受粉が成立していることを物語っています。植物が種として生存・維持するには当然他家受粉がすぐれているわけで,カラスノエンドウの花の色や花内蜜が無駄につくられているようにも思えません。ついでにいえば,ほんとうにカラスノエンドウの花は自家受粉だけで生存できるようになっているのでしょうか。ちょっと,その点をわたしは疑っています。それで本に書かれたことを鵜呑みにするのは控えておこうと思います。

これからも,この花はわたしの目を釘付けにしそうです。 

 


発見! ホソヒラタアブの囲蛹

2016-04-18 | ヒラタアブ

4月14日(木)。昨夜来の雨が上がり,自宅玄関のプランターに植わったパンジーがしっとり。その花弁にホソヒラタアブの囲蛹が1つ。特徴あるかたちが自己をアピールしているかのようです。


同じ日の午前のこと。公園を歩いていて,見かけたのが同じヒラタアブのそれ。雨が降った影響で,草が葉を閉じ気味で直立させていました。その葉裏がちょうど見えて,そこに囲蛹があったのです。 


近寄って撮ったのが下写真。 


羽化にはまだ日がありそうです。それで採集して観察することに。できれば(なんとしてでも?)羽化場面を観察したいですから。