自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ギフチョウの卵

2016-04-04 | 昆虫

ギフチョウの産卵風景と卵を撮影したくて,再び飼育舎を訪ねました。

この日は雨のち曇りで,風が感じられる気象条件だったため,チョウたちは草花や金網に付いたままで,ほとんど動きは見られませんでした。もちろん,飛翔している個体は1頭もなし。産卵中の個体もなし。活動が温度に相当,そして敏感なほどに影響を受けるのでしょう。


食草のカンアオイを一目見ると,卵が目に飛び込んできました。葉の表側に卵がいくつか産み付けられていたからです。近寄って見ると,まん丸い,多少翡翠色を帯びた卵がかたまっています。1粒の直径は0.9mm。「ははーん,これは1頭が同じときに産付したんだな」とわかるような付き方です。時間をかけて産んだのでしょう。


葉を裏返してみると,そこにはびっくりするほどの卵がありました。ギフチョウの基本的な産卵位置は葉裏なのです。しかも,たくさん並んでいるのですが,それらはバラバラ状態でなくいくつかの集団にわかれていました。それで,明らかに別々の個体が産付したことが窺えたのです。1頭が産む卵は合計すると何個ぐらいなのでしょう。ふと,そんなことを思いました。


接写撮影をして,卵の変化を見ようとしました。先に“まん丸い”かたちと書きましたが,横方向から見ると底面に近いほど大きくなっています。団子を押し付けたかたち,というか。いのちの発生を感じさせる兆候はありません。内部で変化が静かに進行しているようです。


弱々しい姿のギフチョウが,カンアオイという植物にだけこれだけたくさん産卵する,なのに個体数が現状維持どころか激減していく,その背景が見えてくる気持ちがしてきました。これだけたくさんの卵を短期間に一気に産まないことには,個体数を維持できないチョウのきびしい現実があるのでしょう。人手による雑木林の乱開発はその最たるもの。

羽化,産卵,そして幼虫という変態を早春早々から始めて,さっさといのちを蛹に閉じめ込める戦略には特異なものがあります。長い生命史のなかで,天敵や競争相手をできるだけ避けて生き延びるため,策として備わってきたのです。

そう思って,じっとしているチョウたちを見ていると,なんだかとても愛おしく思えてきます。産卵風景は目撃できませんでしたが,すてきな撮影日になりました。

 


タテハチョウ2種と一気の出合い

2016-04-04 | ルリタテハ

春とはいえ,今季初めてのタテハチョウとの2種との出合いが短時間にして実現するなんて! それも,出合いたいなあと待ちわびていた1種が含まれている! ともにミュージアムの周辺でゴミ拾いをしているときのことです。 

4月2日(土)。まずはエルタテハ。わたしの目の前に飛来して、ふわふわっと排水溝脇のコンクリート上に舞い降りました。びっくり! ごくふつうのタテハチョウのなかまであっても、そうそう見かけるものではありません。降り立ってすぐ、腰からコンデジを取り出して近づいていきました。急がないと! 撮った写真は下のものを入れて2枚。「あー、よかったー! ほっ!」と、思わず胸をなで下ろしました。 

 
結局、すぐに舞い上がって、遠くに消えていきました。

もう一種はルリタテハです。わたしの前方10mあたりに着地。今春初めて見るので、わくわく感が膨らみます。このチャンスを逃してはならないという気持ちで、離れたところからシャッターを切りながらそっと近寄っていきました。

 
撮影モードを接写にして至近距離から撮った下写真が12枚目。これを撮った瞬間、チョウはぱっと舞い上がりました。目であとを追いかけていると、また近くに戻ってきました。


ルリタテハは人がいると警戒して遠くに飛び去るタイプのチョウでなく、意外に人の周辺を飛び回る習性があります。それで、人懐っこいなあという印象すら受けます。このチョウがここには棲みついています。幼虫の食草サルトリイバラが自生しているからです。もうすぐすると山際に生えるサルトリイバラから新芽が吹き出し,葉の表側に産付された卵を見かけるようになるでしょう。

生きものが生き生きと活動を始める季節になったのです。