自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

地域ミュージアムで考える(1)

2016-04-01 | 随想

3月末までは近くのまちの社会福祉施設に勤めて,主に児童を対象にさまざまな取組を重ねました。なかでも,子どもと自然をつなぐことを柱とした活動は,いろんな意味で充実していました。結果,子どもにもわたしにも,さらにはご家庭の皆様にも,なにがしかの足跡を残したように感じています。トモカク感謝,スゴク感謝です。

今もこの仕事にたのしさを感じているのですが,自分の年齢を思うといつまでもからだを自由に動かすわけにもいきません。一方では,すこしでも活動エネルギーがあるときに,わたしの思いを居住地の青少年に向けて発信し,自然とふれ合いながら「発想する」「行動する」,その醍醐味を伝えておきたい気持ちがあります。それを行動に移すのが,わたし(の世代)の,大きくいえば責任のように思えます。

そんなことを感じているときに,「科学ミュージアムで汗を流しませんか」とのお誘いをいただきました。仕事の重みや,生活にかかる負担感などを考えると,簡単にお受けできるものではありません。まずは厳しさを感じました。と同時に,一方で魅力的に思えたのは「当たり前のミュージアムづくりでなく,発想を変えて大胆にチャレンジするミュージアムにしたい」ということばでした。


チャレンジといえば,自分の現職時代を思い出します。学校づくりでは,職員の“おらが学校”体質を破り,いつも学校を内から変えるという発想で改善・改革を進めてきたように思います。一言でいえば,「学校を開く」ということと誠実に向き合った気持ちがするのです。結果実現できたことといえば大したことはありませんが,子どもに向かって歩きながら学校として当たり前に汗する意味を,学校の内と外に伝えられたのではないかな。これからの学校は自分の立ち位置だけで「開かれた学校づくり」を唱えるのでなく,地域づくりを手助けできる方向で,地域をパートナーとして受けとめる必要があります。そのうえで,両者が一体感をもって子らの成長と向き合わなくてはなりません。それにはときとして自己否定の苦しみが伴います。

「チャレンジするミュージアム」というのは,すくなくとも現状打破型の方向性を示唆しています。これまでやってきたことへの問い直し,「当たり前」の改革を恐れていては新しい価値は生み出せません。


そう考えると,なかなかおもしろそうです。学校とミュージアム。両者には,これからのあり方に関して共通する点はあれこれたくさんありそうです。ありそうがゆえに,やりがいがありそうでもあります。お引き受けする以上,多くの青少年が訪れ,地域の方々が積極的に利用し,市内外からたくさんの方々に訪ねて来ていただけるように汗を流そうと思います。この遠景目標を実現するには具体的なデザイン,魅力的な取組が求められます。工夫次第で,そのための仕掛けができるのです。たのしそうです。こんなわけで,「よし! “時々の初心を忘れず”の気持ちで,やるか!」と覚悟を決めた次第です。

覚悟を決めた以上,チャレンジの道のりを残すのもよいのではないか,と判断しました。結果,このシリーズ名を『地域ミュージアムで考える』として掲載することにしました。今後,仕事をとおして感じたことを柱にしながら,あれこれ書いていこうと思います。よろしくお願いします。 

 


ムスカリで吸蜜,ビロードツリアブ

2016-04-01 | 昆虫と花

3月30日(水)。

昆虫に日頃から目を向けていると,さまざまな出合いがあって,ほんとうに驚くことが重なっていきます。この日の,ビロードツリアブとの出合いもその1つです。

わたしが気に入っている公園を歩いていると,足元に飛来したのがビロードツリアブ。口器が真っ直ぐに鋭く伸びて,いかにもなにかに口を突き刺して餌を口にするようなかたちをしています。びっくりしたことに,目の前の地面に降り立って静止したのです。「しめたっ!」と思い,大急ぎでコンデジを取り出してそっとそっと近づいていきました。

ふしぎというか,ありがたいというか,どうもわたしに気づいていないようで,じっとしていました。それで,うんと近づいて撮ったのが下写真です。非常に個性的な姿をしています。いったいなにを栄養源にしているのか,どうしても知りたくなる姿をしています。 

 
そんなことを思っていると,パッと舞い上がりました。「どうか飛び去らないで」と祈っていると,なんと近くのムスカリの花に近づいていったのです。ムスカリは花壇に植えたというふうでなく,芝生の中に偶然生えてきたといった感じです。その花に,ホバリングをしながら口を入れかけました。びっくり! わたしは慌ててシャッターを切りました。口の先が二つに分かれているのが確認できます。ここでもびっくり! 下写真では足を花に添えて姿勢を保っていますが,完全に空中でホバリングをする場面もありました。


花から花に移っては蜜を吸い続けました。これまでにムスカリの花を見て,「受粉にはどんな昆虫が関わっているのかな」とふしぎを感じたことがあります。今回,その一部が解けてきました。花のかたちと,昆虫の口のかたちには,じつに深い結びつきがあるのです。

図鑑(「講談社の動く図鑑『昆虫』」)で調べると以下の説明が付されています。

 口が長く,飛びながら花のみつを吸います。幼虫はヒメハナバチ類に寄生します。 

偶然のチャンスに巡り合えるというのはラッキーなものです。感謝。