カラスノエンドウが勢力を誇って群落を形成する季節です。カラスノエンドウはマメ科植物です。マメ科の花はミツバチのよう口器を持った昆虫の訪花を期待していて,チョウのようにストロー型の口を持った昆虫はまったく期待していません。マメ科の花に直接聞かなくても,推測だけでもかなり高い確率でそういえます。
それは,この科の花が備えている受粉のしくみと,訪花昆虫を見ていれば理解できます。花は蝶型をしていて,下側にある花弁に虫がとまると,中にしまい込まれていた蕊が飛び出して来て,先にある花粉が虫のからだに付着。同時に,すでにからだに付いていた花粉がメシベの先“柱頭”に付着。もちろん,昆虫は口吻を花の奥に入れることによって,蜜を贈られるという物語です。これにて,送・受粉は一件落着。
しかし,解説文によれば,カラスノエンドウは自家受粉の植物であるとか,花外蜜腺を持っているとか書いてあるので,マメ科の花一般の解釈を援用してよいのか,わたしには自信がありません。中には,花が開く前にすでに受粉は終わっているとまで書かれたものがあります。それでわたしにいえるのは,たとえば,シロツメグサにチョウがとまってストロー型の口を入れていると,「これはお見事な蜜泥棒チョウ! 頭脳プレー!」ぐらいの感想を持てる程度。
カラスノエンドウがたとえ自家受粉の植物であっても,次の写真は何を意味するのでしょうか。チョウはヤマトシジミです。口吻が伸びています。わたしには,花の中に蜜があって,うまく蜜を盗み取っているように見えます。
ハナバチがカラスノエンドウを訪れるのはよく見ること。これは明らかに他家受粉が成立していることを物語っています。植物が種として生存・維持するには当然他家受粉がすぐれているわけで,カラスノエンドウの花の色や花内蜜が無駄につくられているようにも思えません。ついでにいえば,ほんとうにカラスノエンドウの花は自家受粉だけで生存できるようになっているのでしょうか。ちょっと,その点をわたしは疑っています。それで本に書かれたことを鵜呑みにするのは控えておこうと思います。
これからも,この花はわたしの目を釘付けにしそうです。