自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

フユエダシャクのふしぎ

2018-01-16 | 昆虫

勤務先のミュージアムは山裾にあります。朝夕の行き帰りは山裾沿いの山道を通ります。山道といってもごく短く,一応舗装されています。

近頃,暗くなって帰っていると,自動車のヘッドライトに小さなガが映し出されることが度々。フユエダシャクだろうなと思いつつ,これまでしかと確めないままでいました。

このままではなんだか消化不良になりそう。それで捕虫網を自動車に置いておき捕獲することに。晴れて冷え上がる夜に出現しやすいので,その日を待ちました。

とうとうチャンスが巡って来て,捕獲に成功。捕獲場所から近い織物工場の横を通り過ぎようとしたとき,またも出現。目で追っていると,赤々と電灯が灯されたガラス窓に向かいました。そしてそのまままガラスにとまりました。しかし,捕獲に失敗。

とにかく家に帰って,ガを調べてみることに。結果,やはりフユエダシャクの一種と判明。同定はできませんが,厳冬期を好んで出現するガがいることに改めてびっくり。捕獲した時間帯の気温は2℃に達していません。 

 

捕り方がまずくて翅が傷んでしまいました。申し訳ない。触覚がまことに立派。 

 

前脚の格好はじつに堂々としたもの。

 

得た情報を整理してみましょう。

その1。「オスはメスの出すフェロモンを嗅いでメスを探す」。メスには翅がないので,当たり前ながら飛べないそうです。

その2。「冬だけ発生する」。どうやら進化の過程で,天敵に襲われる恐れの少ない冬季を生き抜く知恵を編み出したようです。

その3。「成虫には口がない」。当然短命なはずで,生殖・産卵のためのはかないいのちというわけです。口が退化しているといえば,ヤママユやカイコ,ミノムシが浮かんできます。

その4。「幼虫の食餌植物の一つがクヌギ」。わたしが個体を採集した山麓にもクヌギがかなり生えています。年1化性ということですから,暑い時期はどんなふうに生きているのか知りたいですね。

その5。「夜行性で,灯火によく飛来する」。道理で織物工場の窓ガラスに向かったわけです。

その6。「フユエダシャクのなかまは我が国だけで30種ほど棲息している」。同定がたいへん! 

自動車にはいつも網をのせているので,再び捕獲してみます。今度は完全な姿を画像記録しようと思います。