虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

便所の落書き

2011-06-04 | 日記
最近、どこの公衆トイレに入ってもきれいだ。落書きなどもなく、「きれいにご使用していただき、ありがとうございます」なんて紙がはっているところもある。

昔は、こうではなかった。女の人は公衆便所なんてあまり利用しなかったのではないか。
汚くて、臭くて、落書きだらけの便所。

あの狭い汚い個室のコンクリートの壁に書かれたさまざまの落書き。きまって下品なことばや下手くそなH絵が落書きされていたが、ちょっと暗い哀愁さえ感じられていかにも昭和の便所だった。70年代までは、「帝国主義粉砕!」とかの政治的スローガンなどもよくあった。駅の公衆便所などけっこう長い間、そのまま放置されたままだったし、利用者も、特に管理者に文句をいうことはなかったように思う。バカだなあ、と思いながらも、便所の落書きを少しは許容する空気もあった。

落書きで、思い出すのは、東京の上落合にあった学徒援護会の便所だ。学徒援護会というのは、学生にアルバイトや下宿を紹介する事業機関で、わたしは、学校へいくよりもここへ通った日の方が断然多い。よく世話になり、子供ができたときは、都内に家族が住めるような安いアパートを見つけられず、この学徒援護会の職員さんが自分が経営する大宮のアパートに入れてくれた。今は、学徒援護会という事業団体はなく、建物もないのかもしれない。

さてと。その学徒援護会に、学徒援護会が管理する学生寮(ビル)があって、便所は、ここをよく利用した。学生の寮らしく、便所は寮の管理批判、社会批判、政治的言辞が多かった。
ある日、わたしは、便所の落書きの一つ(意見)にコメントを書いた(さみしい男だったのだ 笑)。しばらく日数がたってからまたその便所に入ると、相手(寮生だったのだろう)からの反応があり、その返事が文章として書かれている。また、コメントをした(こちらの意見を書いた)。ひと月後くらいにまた訪れると、今度は便所の落書きはぞうきんで消されていた。しかし、見ると、「われわれの討論は消された。当局の言論弾圧に抗議する」という落書きがあった(笑)。

考えると、このブログも、まあ、便所の落書きみたいなものかもしれない。でも、落書きを馬鹿にしてはいけないよ。民衆の声は落書きから始まる。政府はネットの監視を強化する方針のようで、きれいで安心なブログばかりになるのかも。