虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

トルストイ全集

2008-09-21 | 読書
トルストイ全集で一番あたらしいものは昭和40年代後半に出版された河出書房新社の愛蔵決定版トルストイ全集全20巻だろう。その後は、出ていない。しかも、河出書房新社の愛蔵版も今は絶版中で、古本屋では全巻5,6万の値がついている。それより前となると、ネットで出てくるのは、大正やら昭和初期に出された大トルストイ全集。それも全巻はそろっていない。わたしは、以前から、愛蔵版の宗教論(全集の15巻、16巻)がほしいのだが、まったく見つからない(図書館では借りられるのだが)。

海音寺潮五郎は、トルストイを大豪傑だといっていた。そう思う。国家、教会、どんな権威に対しても一人で立ち向かった人だ。しかも、その世の中への疑問、批判は子供のように素朴な目から出発している。たとえば、こうだ。聖書では、キリストは暴力には暴力で対するな、といった。人を裁くな、といった。なぜ、軍隊があるのだ?なぜ裁判所があるのだ?貧しい多数の農民がいて、貴族がいる。これはどういうことだ?こんなことってあるのか?

ふつう、われわれは子供のような素朴な疑問を持っていても、わけ知りの学者から教えられたり、世間一般の理屈をいわれると、すぐ、なるほどそんなものか、とそれ以上追求はしない。憲法9条?理想だよ。攻められたらどうする、とか、革命?社会主義の革命は失敗だったではないか、などといわれると、それ以上、議論は展開しない。ところが、トルストイは違う。自分で考え抜き、相手の欺瞞を破っていく。実に剛毅な精神と強靭な知力の持ち主なのだ。

今こそ、新しいトルストイ全集を出すべきではないのか。トルストイはちっとも古びていないと思うのだが。

DVD「帰らざる日々」

2008-09-21 | 映画・テレビ
レンタル屋さんで山田洋次監督の「母べえ」を借りたが、ついでに藤田敏八監督の「帰らざる日々」も借りた。

昔、見たことがあるのだが、高校時代の苦い青春時代を回想するという話で、けっこう印象に残っていたからだ。監督はすでに故人だが、俳優でもあり、たしかNHKの「腕に覚えあり」でも居酒屋の主人をしていた人ではなかったか。

作家志望で東京のキャバレーで働いている永島敏行に父親の死の知らせが届き、新宿から電車にのって6年ぶりに帰郷するところから始まる。電車の車中で回想は始まる。高校3年生、1972年の夏の話だ。親友役は江藤潤。二人とも当時の青春スターだ。

そうか、舞台は信州飯田だったのか。飯田の夏祭りを背景に苦い青春の日々が描かれる。

アリスの「帰らざる日々」を聞くと、この映画を思い出す。