虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

リンドレー「太平天国ー李秀成の幕下にありて」

2007-10-15 | 読書
古本ネットに注文していた東洋文庫の「太平天国ー李秀成の幕下にありて」全4巻が来た。全4巻で2100円だ。今、新品を買うとしたら、1巻だけで2500円以上はする。ネットでも6000円くらいの値がついているものが多く、一番安いものを選んだ。昔からこの本の存在は知っていたのだけど、李秀成という人を知らなかったので読まなかった。李秀成はなかなかの人物だとわかったので、読みたくなった。

これも天下の奇書といっていいだろう。香港にきたイギリス軍人リンドレーが軍をやめ、太平軍と共に行動した記録だ。李秀成とは太平天国軍末期の若き英雄。

自分の体験、見聞と太平天国軍の経緯、沿革を交互に書きすすめ、洪秀全のことなどはもちろん、当時の中国民衆のようすがビビッドに描かれ、いまどき、2000円でこれだけの本はない。

リンドレーはもちろん、太平天国軍のシンパであり、イギリス帝国主義を弾劾する。本国イギリスではさんざんの非難をあびた本だそうだが、それはそうだろう、アメリカ軍人が、テロリスト仲間と共に行動し、アメリカを弾劾したら、本国では生活できないだろう。リンドレーは、この時代にけっこう多かったイギリス冒険野郎だったのかもしれない。

イギリスは清朝に味方し、太平天国軍と戦う。いや、当時の国際社会は清朝を支援し、太平天国軍を反乱者、秩序破壊者、長髪賊の乱と非難した。今でも、たまに、太平天国の乱(乱というのもおかしいが、国を建国したのだから)とは書かず、長髪賊の乱と書いている本もあるくらい、そのご、かなり無視、軽視されてきた。
アヘン戦争をおこしたイギリス、アジアを自国の利益のために蹂躙した19世紀ヨーロッパの無法はよく知られている。しかし、これは昔話だろうか。アヘンではないけど、今なおよその国土を破壊しつづけている帝国はあるではないか。現代史としても、読めるかもしれないぞ。今日、届いたばかりで、まだ読んでなく、ここまで言うのは言いすぎ?

太平天国についての、数少ない本の一つで、ルポルタージュとしては唯一の本だろう。(かなり虚構も入っているとは、批判者からの評のようだけど天下の奇書であることには変わりない)。