虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

増井経夫「太平天国」

2007-10-21 | 読書
図書館で、増井経夫「太平天国」岩波新書を借りた。
なんと1951年に初版が出ている。半世紀以上も前の本だが、いい本だ。

大塩や生田万についての記述もあり、日本の乱、百姓一揆とも比較している。
著者は、太平天国にかなりシンパシーを持っている。でなければ、研究などするまい。その次の世代の研究者が小島晋治。「洪秀全と太平天国」(岩波現代文庫)がある。若い世代では、菊池秀明という学者が、研究しているようだ。

さて、この増井氏の「太平天国」。最も早く太平天国の情報に接したものとして、あのジョセフ彦といっしょに漂流した「栄力丸」の乗組員利七(文太)を登場させている。帰国し、自分の故郷鳥取藩で話したらしい。太平天国軍のいる南京に船で入ろうとしたが、浅瀬でいけなかった、ことをのべ、太平天国軍の流説を話している。その話は、あの漂流民音吉から聞いたことのようだ。利吉の話しぶりからは、太平天国軍への好意があふれているそうだ。

その次に太平天国に接するのは、高杉たちをのせた千歳丸。しかし、武士たちは、太平天国軍がキリスト教を奉じるためか、邪教の徒と思ったらしい。

太平天国については、吉田松陰も清国の情報を書き写す中で知っていたらしい。しかし、その情報は、限られたものであり、松陰も正確には知らなかったようだ。

ひるがえって考えれば、わたしだって太平天国については何も知らない。神がかった変なおっさんが起こした、というイメージはある。情報がないからだ。

中国の革命は太平天国から始まる。革命の幕を切って落としたという意味では、洪秀全も、幕末の清河八郎と同じかもしれない(ハハハ。それはないか)。