虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

日本歴史と小田実

2007-10-12 | 読書
小田実は、読書家だから、日本の歴史にも相当詳しいはずだけど、あまり英雄や豪傑については語らない。今日、小田実の「生きる術としての哲学」(岩波書店)という最後の講義集という本をめくってみたら、信長が生きていたら、秀吉と同じように朝鮮侵略をやっていただろうか、という話をしていた。小田は、信長は、合理主義者だったから、朝鮮侵略はしなかったのではなかろうか、と推理していた。もちろん、あの非道な信長を弁護したのではないのだが。

秀吉の朝鮮侵略については、徳富蘇峰の説を支持していた。小田は、「民岩太閤記」を書くにさいし、この時代のことを研究したそうだが、一番、参考になったのは、徳富蘇峰の近世日本国民史だった、と評価していた。

秀吉の朝鮮侵略については、秀吉が耄碌したから、とかいろいろな説があるけど、小田は、秀吉は西洋の歴史を優等生として学んだもので、世界史の一環としての行動ではなかったか、といっている。もちろん、これも秀吉を弁護しているのではないのだが、おもしろい、と思った。

あと、小田は、「薩南血涙史」という西南戦争史料集を愛読している、と語っていた。あの西郷隆盛や坂本龍馬について小田はどう思っていたのか、小田の日本史講義が残されなかったのは残念だ。

わたしが小田の本に紹介されて好きになった日本史人物は、宮崎滔天と堺利彦だ。滔天については、坂本龍馬が生き続けていたら、滔天のようなコースもありうるのではないかと、うろ覚えだけど、書いていたような気もする。