M馬日記(元、日曜レーサー)

塩噴きじいさんの独り言
※2011年11月をもって一時停止
 (再開未定)

【雑記】素晴らしい・・

2009年08月03日 | Weblog
「山と山が連っていて、どこまでも山ばかりである。」

この一文を読んだだけで眼前に広がる景色が想像できる。どこまでもどこまでも
果てしなく稜線が繋がりそれが続いている圧倒的な自然の風景。それを見ている
自分のとてもちっぽけな存在。その対比の中、人間は自然に生かされていると感
じる。

たった23字の一文で無限の広がりをイメージさせることが出来る。この圧倒的な
筆力。イメージを具象化できるその力。試してみるといい。今、自分の目の前に
見えるスナップショットを文章に出来ますか?ま、それができる人は物書きになっ
ているでしょうけどね。

ただし、この文章の素晴らしさというのは、書き手側の力だけでは成り立たず、
受け手である読者がそれを想像できなければ、結局は「山が連なっている。」と
全く同じレベルになってしまう。つまり体験していないと、この場合はその情景を
写真ででもいいから見ていないと難しいし、さらにその表層上のことの下に埋めて
ある自然の雄大さと人間の無力さを感じる感受性がないと業務連絡と同じになって
しまいます。

予備校時代、全共闘崩れの国語講師が言うには、国語力は6歳までで決まる。
だから君たちにはもう無理。だが受験で必要なテクニックは身につけることが出来
る。残念ながら感受性は成長しないけど、この1年間はそれを疑似体験しよう。

これがどうなのか?はわからないけど、小さいときに色々なところに行き、沢山の
人に会い、様々な体験をして、そしてそれを言葉に、文書にし、沢山たくさん考え
ることがその後の感受性にとても大切なものだとは容易に想像できる。

****

   「道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、
    雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を
    追ってきた」


この美しい日本語。
素晴らしいでしょう?

私たちの日本語はこんなにも情緒豊かに自然と自分の心を重ねてその一瞬を切り取る
ことができるのですよ。

夏休みですね。
久しぶりに「美しさ」に触れてみませんか?
軽薄短小、事務連絡・通知、アホで稚拙で意味不明の依頼、携帯語?
文書というより”解読すること”が必要な作業から解放されて心のリフレッシュ
に日本の名文はいかが?

 ※冒頭:楢山節考  深沢七郎
  末尾:伊豆の踊子 川端康成


  275㎞
コメント
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