大井敏恭、林亨、末次弘明の3氏の絵画展。企画の塚崎美歩さんを含めて、この会場のいつもの顔ぶれだが、大井さんの画風は一変し、末次さんの仕事も幅を広げている。林さんも色使いに変化が見られる。
ポルトギャラリーは1階(一部中二階)と3階の2会場からなるが、3階をすべて末次さんが使用している。
大小20点以上あり、近年の彼の精力的な制作ぶりが垣間見える。
入って右手の壁には、ほとんど藍色で、わずかに濃度の薄い部分が中央で模様をつくっているという100号大の絵画が4点。「BABYLON」「NABYLON 水の都」が2点ずつ。
中央の壁には、藍色の地に白い直方体が一つだけ描かれている小さな作品「我が土地」などが並ぶ。
奥の床の上には「ON YOUR CORNEA」と題された大作が2点ごろんと置かれている。
うち1点は、この2年ほど取り組み、全道展にも出品されている、心電図を思わせる動的な筆さばきが特徴の作品だ。
藍色の作品が多い中、「HOLES」と題された作品は赤が主体。
また「LANDSCHAFT」は複数の色面からなる抽象作品。
会場で2点だけ、絵画ではない作品(「UNTITLED」)がある。透明なケースの中に植物が収められている。
前回の個展のときも、赤いリンゴが置かれていたが、絵画の並ぶ中に植物をぽつんと置くと、会場全体を活性化するカンフル剤のような役割を持つのかもしれない。
なお、簡単な会場見取り図では1から25までの番号が付されていたが、そこに当てはまらない小品が、入り口に近い奥まった壁に掛かっていた。
以前、岩見沢駅構内にある「i-BOX」ギャラリーで行った小さな個展に出品されていた、ろうそくの火を描いた連作のうちの一つだと思う。
大井さんは5点で、いずれも1階に展示され、大きなガラス窓越しに南大通りからも見える。
うち「Untitled」はほぼ、これまでの作品と同系列で、画家の脳裡に浮かんださまざまなものが描かれている。
残る4点はいずれも「Theme and Variations」と題され、白い地の上に、緑や黄色、赤などさまざまな長さの、あまり長くなく、太さはおおむね一定の線が、ランダムに画面を走っている。
明るい色調は軽快な感じを与える。
大井さんの絵の系列では、もう20年ぶりくらいに、「意味」から遠く隔たった地点で制作されているのではないか―というふうに思ってしまう。
林さんは1階に2点と、中二階に4点。
1階の1点が「心を浮かべて(みずぶくろ)」。
残る5点はいずれも「心を浮かべて(みなも)」と題されている。
「(みずぶくろ)」のほうは、作品の手前の床上に木の球がいくつも転がっている。
これは単に立体をおいてみたというよりも、キャンバス上にちりばめられた絵の具の飛まつと対応しているものと思われる。
これらの飛まつは「心を浮かべて」シリーズの特徴のひとつで、意味論的には、心や思いといったものの象徴として機能しているといえるし、絵画空間の要素としては、イメージではない「物質性」の表れとして機能している。
つまり、まずはイメージの反映としてたち現れる絵画のあり方に対し、物質性というあり方を提示しているのだといえよう。
なお、奇妙な展覧会タイトルは、禅の言葉に由来するらしい。
禅からの連想でいえば、3人の抽象絵画は現代の山水画といえなくもないかもしれない。
いろいろ面倒なことの多い現代社会からの一種の逃亡先として、山水画はその意味を失っていないからだ。
3月5日(月)~25日(日)午前11時~午後7時(最終日~午後5時)
ポルトギャラリー(札幌市中央区南1西22 北翔大学北方圏学術情報センター1階と3階)
●ワークショップ「対話による鑑賞―見る人がアートをつくる」=3月25日(日)午後2~3時
関連記事へのリンク
■Golden Round (2017)
【告知】Golden Round
■The songlines (2016年4月)
【告知】NO-DOアートプロジェクト―ポルト・由仁「夏の遠足2015」
■北翔大北方圏学術情報センタープロジェクト研究美術グループ研究報告展 Caustics (2015)
■Art in Progress 企画展「Timeless:時の肖像」 (2013)
【告知】絵画の場合2012 -最終章-
=以上、3人とも出品
■SAG INTRODUCTION(2009)
■絵画の場合(2007年1月)
■絵画の場合(2005年)
=以上、大井氏と林氏が出品
■WAVE NOW 2016
■林亨展(2004年)
■林亨展(2002年)
■林亨展(2000年)
■末次弘明個展 “mono” (2017)
■第71回全道展(2016年6月)=末次さん出品。画像なし
■末次弘明のまとめ展 (2012年)
・地下鉄東西線「西18丁目駅」1番出口から約390メートル、徒歩5分。2番出口から約490メートル、徒歩7分
・同「円山公園駅」5番出口から約460メートル、徒歩6分
・ジェイアール北海道バス「北1条西20丁目」降車、約420メートル、徒歩6分
※手稲方面行きが止まります。快速や都市間高速バスは止まりません
・ジェイアール北海道バス、中央バス「円山第一鳥居」降車、約680メートル、徒歩9分
※手稲、小樽方面行き(都市間高速バスを含む)全便が止まります
・ジェイアール北海道バス「桑11 桑園円山線」の「大通西22丁目」降車、すぐ目の前。
※桑園駅-大通西22丁目-円山公園駅―啓明ターミナルを走っている路線です
ポルトギャラリーは1階(一部中二階)と3階の2会場からなるが、3階をすべて末次さんが使用している。
大小20点以上あり、近年の彼の精力的な制作ぶりが垣間見える。
入って右手の壁には、ほとんど藍色で、わずかに濃度の薄い部分が中央で模様をつくっているという100号大の絵画が4点。「BABYLON」「NABYLON 水の都」が2点ずつ。
中央の壁には、藍色の地に白い直方体が一つだけ描かれている小さな作品「我が土地」などが並ぶ。
奥の床の上には「ON YOUR CORNEA」と題された大作が2点ごろんと置かれている。
うち1点は、この2年ほど取り組み、全道展にも出品されている、心電図を思わせる動的な筆さばきが特徴の作品だ。
藍色の作品が多い中、「HOLES」と題された作品は赤が主体。
また「LANDSCHAFT」は複数の色面からなる抽象作品。
会場で2点だけ、絵画ではない作品(「UNTITLED」)がある。透明なケースの中に植物が収められている。
前回の個展のときも、赤いリンゴが置かれていたが、絵画の並ぶ中に植物をぽつんと置くと、会場全体を活性化するカンフル剤のような役割を持つのかもしれない。
なお、簡単な会場見取り図では1から25までの番号が付されていたが、そこに当てはまらない小品が、入り口に近い奥まった壁に掛かっていた。
以前、岩見沢駅構内にある「i-BOX」ギャラリーで行った小さな個展に出品されていた、ろうそくの火を描いた連作のうちの一つだと思う。
大井さんは5点で、いずれも1階に展示され、大きなガラス窓越しに南大通りからも見える。
うち「Untitled」はほぼ、これまでの作品と同系列で、画家の脳裡に浮かんださまざまなものが描かれている。
残る4点はいずれも「Theme and Variations」と題され、白い地の上に、緑や黄色、赤などさまざまな長さの、あまり長くなく、太さはおおむね一定の線が、ランダムに画面を走っている。
明るい色調は軽快な感じを与える。
大井さんの絵の系列では、もう20年ぶりくらいに、「意味」から遠く隔たった地点で制作されているのではないか―というふうに思ってしまう。
林さんは1階に2点と、中二階に4点。
1階の1点が「心を浮かべて(みずぶくろ)」。
残る5点はいずれも「心を浮かべて(みなも)」と題されている。
「(みずぶくろ)」のほうは、作品の手前の床上に木の球がいくつも転がっている。
これは単に立体をおいてみたというよりも、キャンバス上にちりばめられた絵の具の飛まつと対応しているものと思われる。
これらの飛まつは「心を浮かべて」シリーズの特徴のひとつで、意味論的には、心や思いといったものの象徴として機能しているといえるし、絵画空間の要素としては、イメージではない「物質性」の表れとして機能している。
つまり、まずはイメージの反映としてたち現れる絵画のあり方に対し、物質性というあり方を提示しているのだといえよう。
なお、奇妙な展覧会タイトルは、禅の言葉に由来するらしい。
禅からの連想でいえば、3人の抽象絵画は現代の山水画といえなくもないかもしれない。
いろいろ面倒なことの多い現代社会からの一種の逃亡先として、山水画はその意味を失っていないからだ。
3月5日(月)~25日(日)午前11時~午後7時(最終日~午後5時)
ポルトギャラリー(札幌市中央区南1西22 北翔大学北方圏学術情報センター1階と3階)
●ワークショップ「対話による鑑賞―見る人がアートをつくる」=3月25日(日)午後2~3時
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=以上、3人とも出品
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■絵画の場合(2007年1月)
■絵画の場合(2005年)
=以上、大井氏と林氏が出品
■WAVE NOW 2016
■林亨展(2004年)
■林亨展(2002年)
■林亨展(2000年)
■末次弘明個展 “mono” (2017)
■第71回全道展(2016年6月)=末次さん出品。画像なし
■末次弘明のまとめ展 (2012年)
・地下鉄東西線「西18丁目駅」1番出口から約390メートル、徒歩5分。2番出口から約490メートル、徒歩7分
・同「円山公園駅」5番出口から約460メートル、徒歩6分
・ジェイアール北海道バス「北1条西20丁目」降車、約420メートル、徒歩6分
※手稲方面行きが止まります。快速や都市間高速バスは止まりません
・ジェイアール北海道バス、中央バス「円山第一鳥居」降車、約680メートル、徒歩9分
※手稲、小樽方面行き(都市間高速バスを含む)全便が止まります
・ジェイアール北海道バス「桑11 桑園円山線」の「大通西22丁目」降車、すぐ目の前。
※桑園駅-大通西22丁目-円山公園駅―啓明ターミナルを走っている路線です