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■WAVE NOW 2016 (11月15~20日、札幌) と絵画の現在

2016年12月14日 18時10分29秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 「WAVE NOW」は、北海道ゆかりの首都圏在住4人と道内在住の4人が2002年に始めたグループ展。
 同年、銀座の井上画廊と札幌のコンチネンタルギャラリーで第1回展を開き、翌年からは交互に双方の画廊で開催してきた。

 開始当初のメンバーは、首都圏が浅野修、伊藤彰規、上野憲男、菅野充造の4氏、札幌の阿部典英、杉山留美子、丹野信吾、米谷雄平の4氏という、そうそうたる顔ぶれ。しかし、阿部さんを除く札幌組の3氏が死去したうえ、他のメンバーも高齢化などで下の世代との交代が進み、今回の出品者でオリジナルメンバーは伊藤さんだけになってしまった。
 さらに、井上画廊の閉鎖が決定したことから「WAVE NOW」展の開催は今回が最後となる。
 来年以降は、名称を改めて継続することも検討しているとのことだ。 




 今回の出品メンバーは、伊藤彰規さんのほか、首都圏の加藤健二さん、札幌の富原加奈子さん、林亨さん、小樽の坂東宏哉さんの計5人。
 このうち富原さんは道展彫刻部の会員でもあり、雲を思わせる白っぽい作品が特徴だ。コーヒー豆を入れるような粗くて厚い布を用いているようだ。自立したざぶとんのような形状をしている。
 このシリーズ「風の景」のおもしろいところは、正面と裏とでは、形状や見た目がかなり異なること。表側に大小の正方形のガーゼが貼り付けてあり、裏側には白と黒の濃淡が施されていたりする。
 というか、どちらから見てもそれぞれのおもしろさがあるという立体作品というのが、そもそもめずらしい。(たとえば、裸婦像を背中からだけ見ることは、想定されていまい)

 あとの4人はいずれも抽象画。

 坂東さんは「ダークマター」「事象の地平線」など。
 厚塗りの絵の具がうねる鮮烈な絵画。

 林さんは「心を浮かべて」シリーズで、4点にそれぞれ(きいろいみずぶくろ)(あおいみずぶくろ)(しろいみずぶくろ)(あかいきずぶくろ)と副題がついている。画面はいくつものレイヤーが重なり、青や白のストロークや、緑の点などが重なり合って、奥行き感がある。
 さらに、タブローの前の床の上に、ゴムボールのような球がいくつも転がっている。

 伊藤さん「風光16」のシリーズは1から5まで5点ある。
 白と青のストロークが織りなす、さわやかで、即興性と反復性が両立した作品。

 加藤さん「原風景」は、100号キャンバス3個をつなげたくらいの大きさがある。
 ビリジアンの地の上に黒い線が走っている。色合いは、ミントチョコを思い出させる。

 道展で笠見康大さんの絵画作品を見たときにも似たような感想を抱いたのだが、これらの作品に共通する傾向としては、ストロークによく現れる、肉体の動きのようなものが画面に見えていること。
 20世紀絵画は、構図の妙とか、熱い抽象とか、立体への逸脱、ハイパーリアリズムといったさまざまな方向性に活路を見いだそうとしてきたが、これらの作戦にはいささかの手詰まり感も漂っている。
 写真など他の分野にはない、絵画独自の手法ということを突き詰めると「手の動き」「肉体の動き」ということになるのかもしれない(そして、実はそれは、書道という表現分野を成り立たせている要素でもある)。

 最後になる「WAVE NOW」を見ながら、「絵画の延命策」といっては失礼にあたるのだろうけど、そんなことを考えたのだった。
(富原さんが考察から外れてしまい、すみません)


2016年11月15日(火)~20日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
コンチネンタルギャラリー(札幌市中央区南1西11 コンチネンタルビル地下)

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