年に1度の展覧会とは別に、やや規模を縮小した展覧会を毎年開いている団体公募展やグループがある。
「春の院展」とか「北海道抽象派作家協会秋季展」などがそれにあたる。この、オホーツク美術協会の春季展も、そういった種類の展覧会であろう。会員、会友と、一般出品者から選抜された推薦数人が出品している。
全体的にみると、絵画が多いが、抽象画や、インスタレーション的な作品もある。ただし、今回は、日本画(膠彩画)はない。
ほかに陶芸があり、数は少ないが、染色、七宝、版画、切り絵、彫刻などもある。
会場から入ってすぐ右の壁面にはオーソドックスな油彩の風景画が並ぶ。
芳賀文明さん(美幌)「待春」が目を引いた。というのは、芳賀さんは白日展にも出品しているが、そちらでは冬の森林が主な題材で、今回のように、1本の木に的を絞った絵は、初めて見たからだ。
ロマン派的な感興を誘う1点である。
内藤栄子(北見)「春望」は、本人がどこまで意識しているかわからないが、丘の上にも耕地が広がっている景観がいかにもオホーツク地方である。
左側には、渡辺良一さん(美幌)「記憶の古層」。
縦長の画面を上下に半分ずつ切り分け、上半分はペンによるドローイング、下半分に金や銀の光沢を持った絵の具を塗っている。渡辺さんは主体美術の会員だが、オホーツク美術協会には、実験的な作品を出すことが多いのだろうか。
そのとなりは、安田完さん(同)「失楽園」。
安田さんは春陽会と道展の会員である。
海上の流氷の上に、布と縄でぐるぐる巻きにされて裸足の先だけがこちら側に見えている人物が横たわっている。人物は頭部を奥に、足が手前に配されている。海のモスグリーンが冷たげだ。
水彩では、やっぱりベテラン勝谷明男さん(北見)「雪の里」が手練れの技をみせている。
厳冬期の、しかし新雪でもなければ暖かくて雪どけぎみでもない、朝の情景をとらえているが、その色合い、わだちの足跡など、雪国に住む人間でなければわからないであろうリアルさに、つくづく感服してしまう。
点景人物の配し方なども絶妙。
門間久子さん(北見)「回想」
七宝。緑の中間色の出し方には苦心したのではないか。
清水ミサオさん(同)「daisy」
ほとんど同じ白い花を18枚描いて並べているが、版画ではない。
それより気にかかるのは、絵と絵の間、ちょうど絵の端による十字路にあたるところに、マスクのような粗い布が貼られ、そこに「2011.3.11」「07.7.16」「03.9.26」「95.1.17」「94.10.4」「93.7.12」「93.1.15」「68.5.16」「52.3.4」「46.12.21」とかかれていること。
これは順に、東日本大震災、中越地震、十勝沖地震、阪神淡路大震災、北海道東方沖地震、北海道南西沖地震、釧路沖地震、十勝沖地震、十勝沖地震、南海地震の年月日をさしているものと思われる。
伊藤貴美子さん(網走)「無題」
伊藤さんは国展に初入選を決めたばかり。
一見、色の洪水だが、整理はされている。キノコ雲のようなフォルムと地とが劃然と分かれているのもこの作者ならでは。
いのこはるきさん(北見)「生-1」「生-2」
いのこさんの絵は、米国の抽象表現主義を忠実に発展させているように思う。「1」は群青を基調とした画面。「2」はポロックを思わせる黄色の飛沫が全面を覆う作品だが、斜めの線上に飛沫が集まり、ポロックよりも構図への意図を感じさせる。
じつは、いま、ここまで抽象画を突き詰めている人というのは、いそうで、少ないのだ。八木保次さんとも共通する、情念の噴出がある。
田丸忠さん(北見)「PATTERN 2011.4」
正方形の紙25枚。幾何学的な線の反復。
林弘堯さん(北見)「puzzle」
10メートルの壁面を使った大作。網やビニール袋などを用いて、平面にレイヤーの厚みをつくりだしている。
昨年のオホーツク美術協会展で協会賞を得た横山恭子さん(北見)は「大地に立つ」という題とは裏腹に、池の風景画。近景の木々を思い切って暗くしたあたりに、光の調子に鋭い感受性を持つ作者の関心のありかが伺えるように思う。
ほかに、即興的なドローイングを出品した管恵子さん(北見)、水彩のような淡い薄塗りがおもしろい角茂子さん(訓子府)、素焼きの人形を何点も出した毛利萬里子さん(北見)など、ふだんとはひと味ちがう作品を出した人も多く、そこらへんが春季展のおもしろさなのだと思った。
2011年4月19日(火)~24日(日)9:30~4:30
北網圏北見文化センター美術館(北見市公園町)
・北海道北見バス「小泉三輪線」で「野付牛公園入口」降車、公園内を歩き約400メートル、徒歩5分
・JR北見駅から約1.8キロ、徒歩およそ22分
「春の院展」とか「北海道抽象派作家協会秋季展」などがそれにあたる。この、オホーツク美術協会の春季展も、そういった種類の展覧会であろう。会員、会友と、一般出品者から選抜された推薦数人が出品している。
全体的にみると、絵画が多いが、抽象画や、インスタレーション的な作品もある。ただし、今回は、日本画(膠彩画)はない。
ほかに陶芸があり、数は少ないが、染色、七宝、版画、切り絵、彫刻などもある。
会場から入ってすぐ右の壁面にはオーソドックスな油彩の風景画が並ぶ。
芳賀文明さん(美幌)「待春」が目を引いた。というのは、芳賀さんは白日展にも出品しているが、そちらでは冬の森林が主な題材で、今回のように、1本の木に的を絞った絵は、初めて見たからだ。
ロマン派的な感興を誘う1点である。
内藤栄子(北見)「春望」は、本人がどこまで意識しているかわからないが、丘の上にも耕地が広がっている景観がいかにもオホーツク地方である。
左側には、渡辺良一さん(美幌)「記憶の古層」。
縦長の画面を上下に半分ずつ切り分け、上半分はペンによるドローイング、下半分に金や銀の光沢を持った絵の具を塗っている。渡辺さんは主体美術の会員だが、オホーツク美術協会には、実験的な作品を出すことが多いのだろうか。
そのとなりは、安田完さん(同)「失楽園」。
安田さんは春陽会と道展の会員である。
海上の流氷の上に、布と縄でぐるぐる巻きにされて裸足の先だけがこちら側に見えている人物が横たわっている。人物は頭部を奥に、足が手前に配されている。海のモスグリーンが冷たげだ。
水彩では、やっぱりベテラン勝谷明男さん(北見)「雪の里」が手練れの技をみせている。
厳冬期の、しかし新雪でもなければ暖かくて雪どけぎみでもない、朝の情景をとらえているが、その色合い、わだちの足跡など、雪国に住む人間でなければわからないであろうリアルさに、つくづく感服してしまう。
点景人物の配し方なども絶妙。
門間久子さん(北見)「回想」
七宝。緑の中間色の出し方には苦心したのではないか。
清水ミサオさん(同)「daisy」
ほとんど同じ白い花を18枚描いて並べているが、版画ではない。
それより気にかかるのは、絵と絵の間、ちょうど絵の端による十字路にあたるところに、マスクのような粗い布が貼られ、そこに「2011.3.11」「07.7.16」「03.9.26」「95.1.17」「94.10.4」「93.7.12」「93.1.15」「68.5.16」「52.3.4」「46.12.21」とかかれていること。
これは順に、東日本大震災、中越地震、十勝沖地震、阪神淡路大震災、北海道東方沖地震、北海道南西沖地震、釧路沖地震、十勝沖地震、十勝沖地震、南海地震の年月日をさしているものと思われる。
伊藤貴美子さん(網走)「無題」
伊藤さんは国展に初入選を決めたばかり。
一見、色の洪水だが、整理はされている。キノコ雲のようなフォルムと地とが劃然と分かれているのもこの作者ならでは。
いのこはるきさん(北見)「生-1」「生-2」
いのこさんの絵は、米国の抽象表現主義を忠実に発展させているように思う。「1」は群青を基調とした画面。「2」はポロックを思わせる黄色の飛沫が全面を覆う作品だが、斜めの線上に飛沫が集まり、ポロックよりも構図への意図を感じさせる。
じつは、いま、ここまで抽象画を突き詰めている人というのは、いそうで、少ないのだ。八木保次さんとも共通する、情念の噴出がある。
田丸忠さん(北見)「PATTERN 2011.4」
正方形の紙25枚。幾何学的な線の反復。
林弘堯さん(北見)「puzzle」
10メートルの壁面を使った大作。網やビニール袋などを用いて、平面にレイヤーの厚みをつくりだしている。
昨年のオホーツク美術協会展で協会賞を得た横山恭子さん(北見)は「大地に立つ」という題とは裏腹に、池の風景画。近景の木々を思い切って暗くしたあたりに、光の調子に鋭い感受性を持つ作者の関心のありかが伺えるように思う。
ほかに、即興的なドローイングを出品した管恵子さん(北見)、水彩のような淡い薄塗りがおもしろい角茂子さん(訓子府)、素焼きの人形を何点も出した毛利萬里子さん(北見)など、ふだんとはひと味ちがう作品を出した人も多く、そこらへんが春季展のおもしろさなのだと思った。
2011年4月19日(火)~24日(日)9:30~4:30
北網圏北見文化センター美術館(北見市公園町)
・北海道北見バス「小泉三輪線」で「野付牛公園入口」降車、公園内を歩き約400メートル、徒歩5分
・JR北見駅から約1.8キロ、徒歩およそ22分
それにブログにも取り上げていただきうれしいです。月末は東京に行き見れるだけ展覧会を見てきます。沢山吸収してきます(笑)
国展には、先日のエントリでふれた片岸さんも工芸の準会員で出品されています。
東京にはしばらく行ってません。
うらやましいです。
いまならシュルレアリスム展とか岡本太郎でしょうか。
う~ん、そもそも何やってるのか、よく知らない(苦笑)。