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橋本活道「天地躍動」=オホーツク管内清里町 / 2021年10月10日その6

2021年11月04日 08時14分44秒 | 街角と道端のアート
(承前)

 わざわざ清里町で途中下車したのは、この彫刻を見るためでした。

 台座の裏側に、銘板がありました。

  このブロンズ像は、清里町開基八十五年
 開町四十年を記念して建立したものであり
 天、人、地、の三体で天地躍動を表現し、
 清里町の限りない未来への躍進を願ってい
 ます。
  製作者は、本町出身の彫刻家橋本活道氏
 で、日展名誉会長北村西望氏の監修であり
 ます。
     昭和五十八年九月建立
           清里町長 大橋道生
 

 この作品は、1990年代に札幌彫刻美術館が編集した「北海道の野外彫刻」にも記載されています。

 ただ、以前も記したとおり、なにぶんにも遠いので、見る機会がないままでした。

 筆者は一見して、単純にすごいと感服しました。

 こういうアクロバティックな動きをしている複数の人体を、破綻なくまとめる技倆は、侮れないと思うのです。


 女2、男1の計3人の裸像です。

 通常、神話などでは女性として表象されることの多い「地」が、ここでは男性になっているのが興味深いです。

 特に「天」の裸婦は、思いっきり体をえび反りにして空中高くとび上がり、両腕をいっぱいに広げて、まさに躍動感をフルに表しています。

 それに比べると「人」とおぼしき女性は、両足を地面につけているので、おとなしく見えますが、全身を思い切って右側にひねり、左手を挙げて右足を下げるポーズは、動感を余すところなく表現しています。

 「地」の男性も両手を広げており、活力を感じさせます。

 3人を、構図の上で結びつけているのが、波とも布ともつかない、細長くうねる物体です。
 この曲線がさらに全体に動きと生命感のようなものを与えているといえます。


 筆者の見た狭い範囲では、日展系の彫刻家のほうがこういう難しい人体の動きを、たまに表現したがるような印象があります。
 あくまで「たまに」ですが。
 坂坦道の「飛翔」(オホーツク管内湧別町)や「大地」(帯広駅前)がそれにあたるでしょう。

 もちろん、日展系のすべての作品がこうだといっているわけではありません。

 舟越保武や本郷新など、非日展系の新制作協会の彫刻家は、これほど激しい動きをモデルにさせないですね。

 こういうスタイルを
「躍動感があって生き生きとしている」
とみるか
「非現実的で不自然。わざとらしい」
とみるかは、好みの問題のような気がしてきます。


 撮影のむずかしい彫刻でした。

 いささかヤケクソぎみですが、あえて逆光で撮ってみました。

 1枚目の背景にあるのは、トレーニングセンターです。
 写真のうまい人が撮れば、角度を工夫して、バックに斜里岳を入れることも可能かもしれません。

 像は1983年の建立から40年近くたってもしっかりしていますが、コンクリートらしき台座はメンテナンスに気を配ったほうが良いかもしれないと感じました。


 ところで、監修に名前が出ている北村西望は「長崎市原爆中心地建立平和祈念神像」などで知られる大御所ですが、橋本活道氏のほうは初めて聞きました。
 清里町出身らしいのですが…。

 ネット検索してみると、東京の日暮里にっ ぽ り 駅前にある太田道灌の像のことばかりがヒットします。

 札幌彫刻美術館友の会による労作サイト「北海道デジタル彫刻美術館」によると、網走南ケ丘高校にも「瞳海」という男性の立像があることになっています。
 少なくとも正門前には胸像しかないんですが…(遠藤熊吉の像)。

 中庭などにあるのでしょうか。
 網走新聞のシリーズ記事「まちの彫刻」には掲載されていません。


 さて清里町では、もう1カ所、見たい場所がありました。

 次の列車まではまだだいぶ時間があるので、足を伸ばしてみることにしました。






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