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◆ 『GANTZ -ガンツ- 』35巻 感想

2012年10月28日 | ◆マンガ 感想

『GANTZ -ガンツ- 』35巻 (奥浩哉 先生)

 Gantz_35

 34巻感想はこちら

 私はコミックス派なので連載を追っておりません。

 なので、見当違いのことを書いてしまうこともあるかもしれませんが、

 ご容赦いただけると幸いです。

 

 

 

 

以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)

 

 

 

 

 

【桜井の戦い、その結末】

●「再会」の喜びと、憎悪の再燃

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 前巻にて、坂田師匠の姿を見た桜井。

 さらにそこには、最愛の人の姿も・・・ と始まった35巻。

 

 思わぬ再会に号泣する桜井。

 このとき、彼の頭からは復讐のことなぞ吹き飛んでいるはず。

 しかし、巨人のことを思い出すや、再び「アイツらを全滅させなきゃ」と怒りを燃やします。

 彼の憎しみのきかっけが、最愛の人を殺されたことにあるのにもかかわらず、

 その最愛の人を目の前に、憎悪を再燃させる彼は、もはや復讐の鬼。

 心のどこかで、自分が見ている2人は“偽物”なのだと感じているのでしょうね・・・ 切ない。

 

 この“偽物”は、桜井にとっての心の歯止め。

 彼自身が自分を止めたがっている、そんな心の一部が具現化したモノ。

 復讐を名目にして、無関係の巨人までも大量殺戮してしまうことに疑問を感じてはいる・・・

 のだけど、憎悪は止まらず、ただ突き進むのみという、やるせなさが伝わってくる場面。

 そして、この進撃はついに終わりを迎えることになるのでした・・・

 

 

 

●それは『儚い贖い』だが・・・

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 最期のとき・・・

 己の死期を悟る彼の前には、巨人の母子が。

 動かない母親に、幼い兄妹が寄り添う姿を見てなお彼は

 「ウジ虫ども・・・・・・」とつぶやきますが、その目にはもう憎しみの色は見てとれない。

 

 崩れる部屋の中、桜井が最期に見たのは最愛の人たちの姿。

 そして、最後の最後に【儚い贖い】をもって、幼い兄妹を救う桜井は、

 憎悪ではなく、愛情を抱いて逝くことができたのではないか・・・ と、私は感じました。

 

 彼の行ったことは決して善いことではなかった。

 けれども、彼のような立場に置かれた時、燃え上がる憎しみを止める術を私は知らない。

 おそらくは巨人の側にも、同様な人々は大勢いるのでしょう。

 こうした憎悪の連鎖は戦争にはつきもので、だけどその行く末は、

 全てを燃やし尽くすことが出来ない以上、己を燃やし尽くすしかないのだと

 感じさせる最期となりました。 ただ、愛を思い出して逝けたことは、慰めとなったでしょうね。

 

 巨人も人類も、戦火の中で互いに被害を与え、そして受け、憎悪や恐怖が渦巻く状況。

 そうした中、愛や思いやりを復活させた、このシーンはかなり重要です。

 この後の展開が、それを証明していると言えるでしょう。

 

 

 

【戦争の行く先】

●人類の勝利間近・・・?

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 敵宇宙船内にて、大進撃を続けるGANTZの巨大兵器軍団。

 心臓部ともいえる地点への攻撃が迫り、ついに決着となるのか?

 と緊張感が高まりますが・・・

 

 そこへ出てきた超巨大砲塔。

 街ごと破壊できるレベルの兵器って、すさまじいなオイ!

 巨人が小さく見えるくらいの巨大さならば、さもありなんといった感じですが、

 これによって損害を受けるGANTZ軍団だったものの、その進撃は止まらず。

 徐々に目標へと近づいてゆくことに・・・

 

 

 

●“神”の視座から眺める者たち

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 それをモニターで眺める“指導者”グループ。

 もう勝った気でいるのか、テーブルには酒まで用意されていますが、

 彼らの言葉からは、戦っている者への気づかいなど全くなく、

 使い捨てにするつもり満々なのがイヤらしてすぎて、気分悪いですなー。

 

 それもこれも、彼らが安全圏から“神”のごとく状況を眺めているのが大きい。

 この傲慢、正直ムカつきますわ。

 しかし、それもこれも、まさかの終わりを迎えることに・・・

 彼らは“神”にはなれなかったですねえ。 あれで、あっさり退場してしまったのは驚きでした。

 ただ、彼らがいなかったら、日本戦線は大きく崩れていただろうと考えると、

 その行動の功罪は、賛否いろいろになってしまうでしょうね、難しいものです。

 

 

 

【玄野の戦いと、ほんの些細な融和への道筋】

●西との衝突

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 そして主人公・玄野の戦いは、西との衝突へつながることに・・・

 この2人の戦いの興味深い点は、「変わらなかった者」と「変わった者」による

 ぶつかり合いだったことですね。 西が前者で、玄野が後者。

 

 この2人の戦いに重なったのが、彼らの父親たちの姿だったのは面白い。

 どちらも、息子に対する絶対の信頼などはなく、「苦手」もしくは「生み出したことを後悔」

 と語っているのは、理解できなくはないものの、どこか寂しいモノを感じずにはいられない。

 やや西の父親の方が哀しげなのは、印象的でしたけども・・・

 

 だからこそ、この2人にとって重要なのは、おそらく「自立」。

 父親がどうであろうと、自分の生き方を、自ら見出していかねばならない

 そんな立場に立たされているのだろうと感じます。

 ゆえに、「変わらなかった者」と「変わった者」の対比は大きい。

 最後、西が母を呼びながら泣いているシーンは、1度目の「死」と同じく、

 まさに「自立」できなかった少年の嘆きを象徴しているともいえるのです。

 

 

 

●敵を知り、情けを知る

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 玄野とタエとの会話。

 自分の母親を殺されているのにもかかわらず、タエさんは巨人全体を憎んではいない。

 これには玄野の存在が大きいでしょうし、巨人女性・フラのことも関係しているのでしょうが、

 そこに憎悪はなく、むしろ彼らの滅亡を避けたいという願いが感じられます。

 

 「普通に暮らしている人も死んでしまう」

 その当たり前のことを、この状況下で認識できるだけでも大したもの。

 愛や思いやりの復活が、この巻ではかなり重要になっていると感じます。

 桜井の一件を経てここに至った後、本作品の流れは大きく変わることに。

 玄野と西との衝突をはさんで、物語は一気に収束へと向かうことになります。

 

 

 

【ついに終局へ・・・?】

●脱出・・・

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 この玄野の脱出シーン・・・ すさまじかった。

 あの格好で、あれくらいの高度でも平気なの? といった疑問は、

 だってGANTZの兵器だし、で済ませてしまえばOKなのです。

 壮観でした! すごかった!

 

 帰還した玄野を待っていたのは、テロリストの汚名・・・

 だったものの、いきなり物語が大転換していたのには、驚きつつも爽快感。

 エピソードのタイトル【英雄の作り方】通り、ここから英雄に祭り上げられてゆくのかな?

 汚名が広まった後で、それが逆転というのも、なんとなく人間社会っぽい感じですねえ。

 

 

 

●最終局面へ・・・?

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 一方、加藤・玄野2号のグループは・・・

 戦いもひと段落し、脱出を考える一行のもとに、1本の電話が。

 それによると、戦争は終わりに向かっているということ。

 

 やはり、アメリカが強かった。

 これはハリウッドで、主戦場を舞台に『GANTZ -ガンツ- 』映画化してほしいですね!

 戦いの中心となったのはアメリカのようで、そちらで追い込みがかかっていると聞き、

 そこへ向かうメンバーたち・・・ という流れ。

 

 これにて戦いにも終止符が打たれるのでしょうか?

 しかし気になるのは、巨人との戦いが終わっても、

 GANTZの謎がまだまだ明かされていないこと。

 次巻予告では異様な姿の存在が描かれていますが、これですべてに終わりが来るのか?

 “神”はいるのか? または求められるのか? 最後の決着が待たれます。

 

36巻感想はこちら

 

 


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
西と玄野は似た者同士ですからね (Unknown)
2014-04-28 20:37:11
西と玄野は似た者同士ですからね
初期からそんな描かれ方してましたけど
ただ、玄野にはタエちゃんや加藤が居た
西は学校でもイジメられてるし最愛の母がいない世界に心を開こうともしなかった。
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コメントありがとうございます。 (67)
2014-04-29 04:13:22
コメントありがとうございます。

その通りですね。玄野には様々な人々との交流があり、それが成長への大きな力となったことは間違いなかったと感じます。

一方の西は、自ら進んで飛び込んでゆく玄野のような意志はなく、他人よりも高みに登ったつもりで、いつも隠れながら行動していたのが、玄野との「歩幅」の違いになっていたのでしょうね…
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