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私の仕事・群馬県立自然史博物館18.常設展示・自然界におけるヒト18(人間性の起源と進化4・埋葬1)

2010年07月07日 | C1.私の仕事:群馬県立自然史博物館[My

 群馬県立自然史博物館の常設展示『人間性の起源と進化』の「埋葬」は、ネアンデルタール人の埋葬をジオラマ(ダイオラマ)で展示しました。これは、イラクのシャニダール洞穴で発見されたネアンデルタール人の埋葬風景を再現したものです。

 ここには、等身大人形4体が展示してありますが、アメリカの芸術家、ヴィート・カネラ(Vito CANNELLA)さんが製作しました。カネラさんは、以前ご紹介した、「復顔」の模型も製作しています。

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群馬県立自然史博物館108.「埋葬」等身大ジオラマ(ダイオラマ)全景(*画像をクリックすると、拡大します。)

 シャニダール洞穴は、実際にはかなり大きいのですが、展示スペースの関係で、展示したジオラマ(ダイオラマ)は小さくしています。このシャニダール洞穴は、1957年から1961年にかけて、当時コロンビア大学のラルフ・ソレッキ(Ralph Solecki)さん等が発掘調査をした、約8万年前~6万年前の遺跡です。

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群馬県立自然史博物館109.シャニダール洞穴遠景1(*画像をクリックすると、拡大します。)

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群馬県立自然史博物館110.シャニダール洞穴遠景2[タイムライフブックス『ネアンデルタール人』(1977)、p.137](*画像をクリックすると、拡大します。)

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群馬県立自然史博物館111.シャニダール洞穴の発掘風景。右下の人がいる場所で、4号人骨が発見された。[タイムライフブックス『ネアンデルタール人』(1977)、p.148](*画像をクリックすると、拡大します。)

 ちなみに、このシャニダール4号人骨は、約30歳~45歳の男性であると推定されています。この人骨の周りの土からは、花粉分析の結果、ノコギリソウ、ヤグルマギク、ノボロギク、ムスカリ、タチアオイ、トクサ等が同定されており、発見したラルフ・ソレッキ先生は、「最初に花を愛でた人々」と呼んでいます。

 しかし、この花粉分析については、最近の混入であるとか、動物が持ち込んだもの等の意見もあります。個人的には、死者に対して花を捧げたのだろうと思っています。ネアンデルタール人については、現代人につながると考える研究者と現代人につながらないと考える研究者とがおり、花粉分析否定派はネアンデルタール人が現代人につながらないと考える研究者が多く、花粉分析肯定派はネアンデルタール人が現代人につながると考える人が多いようです。

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群馬県立自然史博物館112.「埋葬」等身大ジオラマ(ダイオラマ)近接(*画像をクリックすると、拡大します。)

 私自身は、ネアンデルタール人は現代人につながらないと考えていますが、花粉分析肯定派です。ネアンデルタール人が現代人につながるかつながらないかと、花粉分析は別だと考えています。

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群馬県立自然史博物館113.シャニダール洞穴4号人骨の出土状況[タイムライフブックス『ネアンデルタール人』(1977)、p.149](*画像をクリックすると、拡大します。)

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群馬県立自然史博物館114.シャニダール洞穴4号人骨の出土状況実測図[ラルフ・ソレッキ『シャニダール洞窟の謎』(1977)、p.230](*画像をクリックすると、拡大します。)

 ちなみに、シャニダール洞窟からは、以下のように全部で9体が発見されています。最近、これに加えて1体が追加発見されたようです。

  • シャニダール1号:男性・約30歳~40・45歳
  • シャニダール2号:男性・約20歳~30歳
  • シャニダール3号:男性・約40歳~50歳
  • シャニダール4号:男性・約30歳~45歳
  • シャニダール5号:男性・約35歳~50歳
  • シャニダール6号:女性・約20歳~35歳
  • シャニダール7号:性別不明・約8ヶ月~9ヶ月
  • シャニダール8号:女性・若い成人
  • シャニダール9号:性別不明・約6ヶ月~1歳

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