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人類学のススメ

人類学の世界をご紹介します。OCNの「人類学のすすめ」から、サービス終了に伴い2014年11月から移動しました。

世界の人類学者5.アーネスト・フートン(Earnest HOOTON)[1887-1954]

2011年11月30日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

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フートン1.アーネスト・フートン(Earnest HOOTON)[1887-1954]

 アーネスト・フートンは、1887年11月20日に、イギリスからの移民である父親のウィリアム・フートンと母親のマーガレット・ニュートンの間に、アメリカのウィスコンシン州クレマンスヴィルにて生まれました。1907年にローレンス・カレッジ(現在のローレンス大学)を卒業後、ウィスコンシン大学マディソン校大学院に進学し、1908年に修士号・1911年に博士号を取得しました。ただ、専攻は人類学ではなく、西洋古典文学の分野でした。

 フートンは、1910年から1913年にかけて、ローズ奨学生として、イギリスのオックスフォード大学に留学します。ちなみに、このローズ奨学生とは、イギリスの政治家のセシル・ローズ(Cecil RHODES)[1853-1902]に由来します。ローズは、ダイアモンドで一大資産を築き、アフリカのローデシア国(現在のザンビアとジンバブエ)の国名にもなった人物です。古人類学の分野では、1921年にザンビアのブロークン・ヒルで発見されたカブウェ人骨が、以前はローデシア人と呼ばれていました。そのローズは、生涯独身を通したため、死後に莫大な遺産をオックスフォード大学に預け、英語圏の学生がオックスフォード大学で学ぶ機会を与えています。この制度は、ローズが死去した翌年の1903年から始まっています。フートンは、ローレンス・カレッジ卒業生としては史上2番目のローズ奨学生でした。

 フートンは、本来はオックスフォード大学で西洋古典文学を学ぶ予定でしたが、ここで人類学に興味を移しました。記録によれば、フートンは1910年に人類学のディプロマ・コースに入学し、1912年に卒業しています。ちなみに、オックスフォード大学におけるディプロマ・コースは、人類学の分野では英語圏で世界最古と言われており、1907年に制度が始まっています。フートンが在籍した当時は、著名なエドワード・バーネット・タイラー(Edward Burnett TYLOR)[1832-1917]が引退し、1910年に後継者として、ロバート・マレット(Robert Ranulph MARETT)[1866-1943]が就任していました。マレットは、1914年には社会人類学部を創設しますが、先史学や自然人類学にも興味を持っていました。また、フートンは、アーサー・キース(Arthur KEITH)[1866-1955]にも学んでいます。

 フートンは、 1913年にハーヴァード大学の講師に就任し、1921年に助教授・1927年に準教授・1930年に教授に就任し、死去する1954年までそのポストに就いていました。ちなみに、1913年当時、アメリカ国内の大学で人類学講師という名称を有していたのは、フートンだけでした。

 フートンは、ハーヴァード大学時代、主に生体計測を専門として研究を行っています。この専門は、やがて、飛行機の座席の設計に生かす等、純粋な学問だけではなく、応用分野にまで貢献しました。また、人類学の教科書や普及書も多数執筆して、アメリカにおける人類学草創期に貢献しました。フートンの興味も幅広く、アフタヌーン・ティーには国内外から外部講師を招き学生も含めてサロンとしたようです。これは、恐らく、イギリスの影響だと思われます。

 フートンの教え子達は、やがてアメリカ全土に赴任して人類学の様々な分野のパイオニアになっていきました。 この教え子達には、ハリー・シャピロ(Harry SHAPIRO)[1902-1990]、カールトン・クーン(Carleton COON)[1904-1981]、フレデリック・ハルス(Frederick HULSE)[1906-1990]、ウィリアム・ハウエルズ(William HOWELLS)[1908-2005]、シャーウッド・ウォッシュバーン(Sherwood WASHBURN)[1911-2000]、アルバート・デイモン(Albert DAMON)[1918-1973]、スタンリー・ガーン(Stanley GARN)[1922-2007]等、後に様々な分野の第一人者となる人類学者達が含まれています。

 フートンは、1954年5月3日に、66歳で死去しました。少し早すぎると思われますが、アメリカにおける自然人類学の基礎を築いたという点では、十分すぎる業績を残したと言えるでしょう。

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フートン2.ハーヴァード大学にてゴリラのオスの頭蓋骨を手に取るフートン。