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私の仕事・群馬県立自然史博物館29.ネアンデルタール人の謎展2(第7回企画展)

2011年02月11日 | C1.私の仕事:群馬県立自然史博物館[My

 群馬県立自然史博物館の第7回企画展『ネアンデルタール人の謎』展は、1999年3月13日(土)から同年5月9日(日)まで行われました。当時の群馬県立自然史博物館では、夏・秋・春と3回企画展を実施しており、予算も夏が一番多く、秋が中ぐらい、春は少ない予算で実施しなければならず苦労しました。但し、入館者数は、夏が一番多く、次が秋、そして春と段々と減っていくため、費用対効果で仕方がありません。そこで、あまり資料を借りずに所蔵資料をほとんど蔵出しするような形で実施しています。また、展示ケースも館の備品を使用したり、別の企画展で使用した造作を使い回したりして工夫しました。

 前回ご紹介した、「2.霊長類への道」のコーナーの続きは、「発掘からわかる事」と「人骨からわかる事」です。導入展示が終わると、そこに、縄文時代を再現した復元画の大きなパネルを設置しました。この絵は、画家の柳 柊二[1927-2003]先生に描いていただきました。柳先生は、多くの挿絵で有名な方で、1986年に元京都大学霊長類研究所の岩本光雄先生による監修で小学館から出版された子供向けの人類進化の本『人類の誕生』にも挿絵を描いていらっしゃいます。

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ネアンデルタール人の謎展9.縄文時代の復元画展示風景[柳 柊二原画](*画像をクリックすると、拡大します。)

 このパネルの裏には、「発掘からわかる事」というコーナーを設置しました。絵には、縄文時代の竪穴住居・男性・女性・イヌを描いてもらい、その前には、この風景が発掘される時にはどうなるかということを再現しました。竪穴住居では住居の竪穴部、土坑墓には男性と女性の全身骨格レプリカ・イヌの全身骨格・土器のレプリカを配置しています。

 この展示のヒントは、以前、フランスの考古学者、アンドレ・ルロワ-グーラン(Andre Lerois-Gourhan)[1911-1986]が書いた本の英訳『Prehistoric Man』(1957年)に掲載してあったものにヒントを得ました。この本には、東南アジアの高床式住居の前に父親・母親・子供3人・イヌ・ブタ・ニワトリが写った写真があり、その下に発掘された状態として、高床式住居の柱穴・家族5人の人骨・イヌの骨・ブタの骨・ニワトリの骨が発見されるという図があり、解りやすいと感銘を受けたことがあったからです。

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ネアンデルタール人の謎展10.「発掘からわかる事」展示風景(*画像をクリックすると、拡大します。)

 「人骨からわかる事」のコーナーには、実物骨格標本15体を展示しました。

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ネアンデルタール人の謎展11.「人骨からわかる事」展示風景(*画像をクリックすると、拡大します。)

 実物骨格標本は、すべて、アメリカのコレクションで、博物館が2回に分けて資料購入したものです。これらは、全部で15体あり、3ヶ月胎児・4ヶ月胎児・5ヶ月胎児・7ヶ月胎児・8ヶ月胎児・9ヶ月胎児・2ヶ月・1歳・2歳・4歳・6歳・8歳・11歳・15歳・25歳となります。

 お子さま連れの来館者の方の中には、ご自分のお子さんと同じだと興味深く見ている方もいました。

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ネアンデルタール人の謎展12.実物骨格標本展示風景(*画像をクリックすると、拡大します。)

 このコーナーにも、触れる展示として、成人男性・成人女性・約6歳・胎児の頭蓋骨レプリカを用意しました。これら4点共に、ドイツのソムソ社製のものを使用しました。やはり、触れる展示というのはなかなか人気があると感じました。

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ネアンデルタール人の謎展13.「人骨からわかる事」の触れる展示(*画像をクリックすると、拡大します。)


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