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人類学のススメ

人類学の世界をご紹介します。OCNの「人類学のすすめ」から、サービス終了に伴い2014年11月から移動しました。

人類進化の本11.北京原人物語

2009年08月31日 | E5.人類進化の本[Human Evolution:Jap
北京原人物語 北京原人物語
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2005-03

Dragon Bone Hill: An Ice-Age Saga of Homo Erectus Dragon Bone Hill: An Ice-Age Saga of Homo Erectus
価格:¥ 3,451(税込)
発売日:2004-02-16

 この本は、アメリカのロス医科大学のノエル・ボアズ[Noel T. BOAZ]さんとアイオワ大学のラッセル・ショホーン[Russell L. CIOCHON]さんが、北京原人について書いた本です。原書は2004年に出版されており、タイトルは、『Dragon Bone Hill』で、これは、北京原人が発見された周口店の龍骨山を意味します。長野 敬さんと林 大さんの翻訳で、2005年に青土社から出版されました。ただ、ショホーンさんというのは、私が聞いた感じではショハーンだと思います。

 本書の内容は、以下のように全9章からなります。

  1. 龍骨山の骨
  2. 竜の再主張
  3. 進化上の意義: 巨人か遺伝子か
  4. 第三の機能: 北京原人の謎の頭蓋についての仮説
  5. なりかけの人類による適応行動
  6. ホモ・エレクトゥスの時代と気候
  7. 龍骨山に見られるヒトらしさ: 脳、言語、火、人肉食
  8. 究極の疑問を解決する: ホモ・エレクトゥスの始まりと終わり
  9. 新しい仮説の検証

 この北京原人は、1920年代から1930年代にかけて発見され、1941年の太平洋戦争勃発の前夜に行方不明になったまま、未だにその行方がわからない北京原人の物語です。本書では、この北京原人のみならず、今では、ホモ・エレクトスと呼ばれている化石人類について、アフリカ・西アジア・インドネシア出土のものも合わせて解説しています。

 


日本人の起源の本13.沖縄人はどこから来たか

2009年08月30日 | F1.日本人の起源の本[Origin of Japane

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沖縄人はどこから来たか―「琉球=沖縄人」の起源と成立
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:1999-09

 この本は、沖縄県立大学の考古学者・安里 進さんと琉球大学の人類学者・土肥直美さんが、考古学と人類学の立場から、沖縄人の起源について対談した内容をまとめたものです。司会は、琉球大学の歴史学者・高良倉吉さんがつとめています。1999年に、ボーダーインクから出版されました。

 本書の内容は、以下のように全5章からなります。また、論考「考古学と人類学の視点から」も章の間に挿入されています。

  1. 起源論との出会い
  2. 日本人起源論と「琉球=沖縄人」
  3. 複雑でダイナミックな人の動き
  4. 港川人と琉球=沖縄人
  5. グスク時代に何が起こったか?

 沖縄の人類学や考古学に関する本はあまり多くないので、この本は大変、貴重な本です。


日本人の起源の本12.島の先史学

2009年08月29日 | F1.日本人の起源の本[Origin of Japane

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島の先史学―パラダイスではなかった沖縄諸島の先史時代
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2005-04

 この本は、札幌大学の高宮広土さんが、生まれ故郷の沖縄諸島の先史時代について書いた本です。高宮さんは、元沖縄国際大学の考古学者・高宮広衛先生のご子息です。カナダとアメリカで、人類学を学ばれて、故郷とは反対の北海道に勤務されています。

 本書の内容は、以下のように全7章からなります。

  1. 「島の先史学」的アプローチ
  2. 沖縄諸島の先史時代
  3. ヒトはいつごろ沖縄諸島に適応したか
  4. 動物遺体からみた沖縄諸島の先史時代
  5. 植物遺体からみた沖縄諸島の先史時代
  6. 沖縄諸島における農耕の始まり:現代沖縄人の起源
  7. 結論:島の先史学の可能性

 これまで、沖縄の先史時代に関しての本はそう多く出版されていません。その点で、沖縄出身の先史学者による沖縄に関する先史時代に関する本書は、大変、重要な本です。


日本人の起源の本11.古墳時代親族構造の研究

2009年08月28日 | F1.日本人の起源の本[Origin of Japane

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古墳時代親族構造の研究―人骨が語る古代社会 (ポテンティア叢書)
価格:¥ 4,893(税込)
発売日:1995-05

 この本は、九州大学の人類学者・考古学者の田中良之先生が、主に西日本の古墳出土人骨の親族構造について、書かれた本です。1995年に、柏書房から出版されました。

 本書の内容は、以下のように全6章からなります。

  1. 原始・古代親族構造解明のための方法論的検討
  2. 古墳時代親族構造の学説史的検討
  3. 上ノ原横穴墓群被葬者の親族関係
  4. 前半期古墳の事例
  5. 後半期古墳の事例
  6. 古墳被葬者の親族関係

 明治時代から、日本人の起源の研究は、現代人人骨・古墳時代人骨・縄文時代人骨を使って行われてきました。これは、縄文時代人骨が貝塚から発見される場合が多いために保存状態が良かったからです。また、古墳時代人骨は、古墳の石室に埋葬されており、土壌と接する場合が少なかったために、保存状態が良かったからです。

 もちろん、最近では、中世や近世の保存状態の良い人骨も出土していますが、これは、例外と言えるもので、中世の場合は海岸部に埋葬されていたために保存状態が良く、東京の場合は水に浸かっているために保存状態の良い近世人骨が発見されています。

 本書では、歯の歯冠計測値を用いて、それぞれの人骨の親族関係を推定しています。これは、古墳時代人骨の保存状態が良いことと、横穴式石室には、何代かにわたって追葬することが可能だからです。実際、歯は骨と比べると、遺伝的にその形質が伝わりやすいと考えられており、本書にも興味深い研究結果が述べられています。


雑誌・動物考古学6.「動物考古学」第6号

2009年08月27日 | L7.動物考古学の雑誌:動物考古学[J. o

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(*画像をクリックすると、拡大します。)

 雑誌「動物考古学」の第6号は、1996年5月に出版されました。本号の内容は、掲載順に、以下のように7編が掲載されています。

  • 松村博文・西本豊弘「中妻貝塚出土多数合葬人骨の歯冠計測値にもとづく血縁関係」
  • 北條朝彦「出土遺物に描かれた動物(Ⅱ):奈良・平安期の西日本における諸例および東日本補遺」
  • 長谷川 豊「縄文時代におけるイノシシ猟の技術的基盤についての研究:静岡県・大井川上流地域の民俗事例調査から」
  • 南 正人「ニホンジカの習性を利用した鹿笛猟:声紋を使った鹿笛の音とニホンジカの鳴き声の比較から」
  • 木村大治「焼畑農耕民ボンガンドにおける植物の利用と認知」
  • 古屋敷則雄「環状土壙群・列石の方位と配置の規則性について」
  • 樋泉岳二「動物考古学研究会報告」

 個人的には、「中妻貝塚出土多数合葬人骨の歯冠計測値にもとづく血縁関係」と「縄文時代におけるイノシシ猟の技術的基盤についての研究」が、参考になりました。


雑誌・動物考古学5.「動物考古学」第5号

2009年08月26日 | L7.動物考古学の雑誌:動物考古学[J. o

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(*画像をクリックすると、拡大します。)

 雑誌「動物考古学」第5号は、1995年11月に出版されました。本号の内容は、掲載順に、以下のように5編が掲載されています。

  • 西本豊弘「縄文人の食肉交換について」
  • 樋泉岳二「遺跡産魚骨同定の手引(Ⅱ)」
  • 菅 豊「呪具としての魚叩棒・呪術としての魚叩行為(日本編)」
  • 扇崎 由・安川 満「岡山市南方(済生会)遺跡のイノシシ類下顎骨配列」
  • 直良信夫「ポリネシア出土の脊椎動物遺体(1)」

 個人的には、今号の5編とも、大変、参考になりました。


雑誌・動物考古学4.「動物考古学」第4号

2009年08月25日 | L7.動物考古学の雑誌:動物考古学[J. o

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(*画像をクリックすると、拡大します。)

 雑誌「動物考古学」の第4号は、1995年5月に出版されました。本号の内容は、掲載順に、以下のように5編が掲載されています。

  • 竹川大介「ソロモン諸島のイルカ漁:イルカの群を石の音で追い込む漁撈技術 」
  • 竹内 潔「アフリカ熱帯森林のサブシステンス・ハンティング:コンゴ北東部の狩猟採集民アカの狩猟技術と狩猟活動」
  • 菅 豊「呪具としての魚叩棒・呪術としての魚叩行為(北米北西海岸ネイティブ編)」
  • 米田美江子「白枝荒神遺跡出土の絵画土器」
  • 新美倫子「カシワの実の落ちる時期とその量について」

*本号の表紙には、竹内 潔さんの論文タイトルが「狩漁」になっていますが、正誤表が入っており「狩猟」が正しいとなっています。論文自体のタイトルは、正しい表記になっています。

 個人的には、「呪具としての魚叩棒・呪術としての魚叩行為」を興味深く読ませていただきました。私がアメリカに留学していた時に、不思議だったのは、サケが遡上する川の近くに居住していながら、そのサケを食料として利用する部族と利用しない部族がいることでした。ただ、残念ながら、まだ納得できる理由が提示されていないようですが・・・。


日本人の起源の本10.骨が語る奥州戦国九戸落城

2009年08月24日 | F1.日本人の起源の本[Origin of Japane
骨が語る奥州戦国九戸落城 骨が語る奥州戦国九戸落城
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2008-03

 この本は、岩手県二戸市に位置する、九戸城について人類学・考古学・年代学・文献史学の専門家が発掘調査結果をまとめたものです。この九戸城は、戦国時代の武将で南部氏の一族・九戸政実[1536-1591]氏の居城でした。

 天正19(1591)年3月に挙兵しましたが、豊臣秀次[1568-1595]を総大将とする討伐軍に抗戦したものの、9月には投降し、その後、一族共々斬殺されています。討伐軍の総大将・豊臣秀次も、その後、1595年に豊臣秀吉に一族共々斬殺されているのは、因縁でしょうか。この九戸政実氏をテーマとした本に、高橋克彦さんによる、『天を衝く』があります。講談社から出版されていますが、その副題は、「秀吉に喧嘩を売った男九戸政実」となっています。

 この九戸城の発掘調査は、1989年から2003年に行われ、1995年には、二ノ丸跡から十数体の傷を負った人骨が発見されています。これは、1591年の戦いの際に斬殺された犠牲者の遺体であろうというのが、本書のテーマです。

 本書の内容と著者は、以下のように全4章からなります。2008年に、東北大学出版会から出版されました。

  1. 史跡九戸城跡の発掘調査(二戸市埋蔵文化財センター・関 豊)
  2. 九戸城二ノ丸跡出土人骨の同位体分析(東京大学・米田 穣)
  3. 九戸城二ノ丸跡出土人骨(東北大学・百々幸雄)
  4. 文献史学的考察(東京都立荒川工業高校・竹間芳明)

 日本各地から出土する古人骨ですが、今回の例のように、骨にまで傷がついている事例は、そう多くはありません。その点で、本書は、中世人骨の受傷例として、大変、参考になります。

 


考古学の本1.旧石器時代ガイドブック

2009年08月23日 | T1.考古学の本[Archaeology]
ビジュアル版 旧石器時代ガイドブック (シリーズ「遺跡を学ぶ」別冊) ビジュアル版 旧石器時代ガイドブック (シリーズ「遺跡を学ぶ」別冊)
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2009-08

 この本は、日本の旧石器時代について、写真や絵を多用して解説した本です。浅間縄文ミュージアムの堤 隆さんが著者で、2009年に新泉社から出版されました。これは、新泉社から出版されている「遺跡を学ぶ」シリーズの別冊2として出版されています。

 私は、人類進化の系統樹の原図を提供した関係で、著者の堤さんから寄贈していただきました。本日、届きましたので、紹介させていただきます。

 本書の内容は、以下のように全20に分かれています。

  1. ようこそ旧石器時代へ
  2. 偉大なる旅
  3. 四万年以前の居住者はいたのか
  4. 最古の居住者の素顔
  5. 氷期の森
  6. 後期旧石器時代の動物たち
  7. 旧石器遺跡を掘る
  8. 狩猟・採集民の道具
  9. 石器をつくる技
  10. 黒曜石を求めて
  11. 旧石器の進化
  12. 磨かれた斧
  13. 環状キャンプに集う
  14. 仕掛けられた陥し穴
  15. あらゆる環境への適応
  16. 旧石器人は何を食べたか
  17. 遊動生活
  18. 最古の海洋航海者
  19. ホモ・サピエンスの美学
  20. 旧石器時代の人びとと社会

 巻末には、「一度は訪ねたい旧石器遺跡・博物館」のリストが掲載されており、訪問する際に大変、役に立ちます。


骨考古学の本2.古人骨は語る

2009年08月23日 | I6.骨考古学の本[Osteoarchaeology:Ja

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古人骨は語る―骨考古学ことはじめ
価格:¥ 2,548(税込)
発売日:1990-05

古人骨は語る―骨考古学ことはじめ (角川ソフィア文庫) 古人骨は語る―骨考古学ことはじめ (角川ソフィア文庫)
価格:¥ 630(税込)
発売日:1999-12

 この本は、副題に「骨考古学ことはじめ」とあるように、元京都大学の人類学者・片山一道先生が、骨考古学について書かれた本です。日本の本で、「骨考古学」という用語が使われたのはこの本が最初だと思います。私は、何の貢献もしていませんが、出版時に、片山先生から寄贈していただきました。

 本書は、単行本として1990年に同朋舎から出版され、その後、1999年に角川ソフィア文庫として角川書店から文庫化して出版されました。なお、単行本と文庫本との違いは、文庫本の末尾に東北大学の人類学者・百々幸雄先生による解説「骨考古学とカズさん」が掲載されている点です。このように、単行本と文庫本では、同じ内容でも、一部写真が差し替えられていたり、解説が加わったりと異なることが多いので、私は、必ず両方購入するようにしています。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  1. 骨考古学ことはじめ
  2. 人の骨について
  3. 古人骨の古人識別
  4. 古人骨から探る生業活動
  5. 古人骨から探る健康白書
  6. 古人骨から探る人口現象
  7. 骨考古学のすすめ

 この本が、他の骨考古学の本と異なる点は、古人口学について1章をさいて、説明している点でしょう。我が国でも、以前は、元厚生省人口問題研究所に勤務されていた人類学者の故小林和正先生が、雄山閣から出版された「人類学講座11.人口」という本を書かれています。しかし、最近では、九州大学の中橋孝博先生ぐらいしか、古人口学について書かれている方はそう多くはないのが実情です。

 本書は、骨考古学の入門書として最適の本です。

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片山(1990)『古人骨は語る』表紙(*画像をクリックすると、拡大します。)


動物考古学全般の本20.骨の学校

2009年08月22日 | L1.動物考古学の本:全般[Zooarchaeolo
骨の学校―ぼくらの骨格標本のつくり方 骨の学校―ぼくらの骨格標本のつくり方
価格:¥ 1,785(税込)
発売日:2001-03

 この本は、沖縄大学の盛口 満さんと自由の森学園の安田 守さんが、生徒さん達と骨格標本を作製してきた経験について書いた本です。2001年に、木魂社から出版されました。

 本書の内容は、Ⅰ.クジラの骨の拾い方・Ⅱ.ウサギの骨に見る秘密・Ⅲ.骨格標本のつくり方のようになっています。

 この本で扱われている骨は、クジラ・タヌキ・魚・ニワトリ・ムササビ・ウサギ・カメ・フグ・コマッコウ・イッカク・ヒキガエル・ブタ等があります。

 個人的には、「フライドチキンの骨学」と「豚足骨継ぎマニュアル」が、身近に手に入るもので、かつ誰にでもできる内容で、大変興味深く読みました。


動物考古学全般の本19.僕らが死体を拾うわけ

2009年08月21日 | L1.動物考古学の本:全般[Zooarchaeolo
僕らが死体を拾うわけ―僕と僕らの博物誌 僕らが死体を拾うわけ―僕と僕らの博物誌
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:1997-06

 この本は、沖縄大学の盛口 満さんが、生徒さんと一緒に、拾ってきた動物の死体から動植物の標本を作ってきた経験を元にして書いた本です。1997年に、どうぶつ社から出版されました。

 本書の内容は、パート1.僕が何でも拾うわけ・パート2.僕らが死体を拾うわけ・パート3.嫌われ者の奇妙な生態・パート4.変わり者の愉快な世界となっています。

 盛口さんは、以前、自由の森学園に勤務されており、そこで生徒さん達と多くの標本を作製されたようです。その頃、私は群馬県立自然史博物館に勤務していたのですが、ある日、自由の森学園の図書館の司書の方から、骨格図譜の問い合わせがありました。そこで、私が個人的に所有している骨格図譜をコピーしてお送りしたのを思い出しました。

 この本は、動物考古学のみならず、理科教育にも大変、役に立つ本です。


骨考古学の洋書4.骨に書かれた歴史

2009年08月20日 | I7.骨考古学の洋書[Osteoarchaeology:

Written in Bones: How Human Remains Unlock the Secrets of the Dead Written in Bones: How Human Remains Unlock the Secrets of the Dead
価格:¥ 3,577(税込)
発売日:2003-03

Written in Bones: How Human Remains Unlock the Secrets of the Dead Written in Bones: How Human Remains Unlock the Secrets of the Dead
価格:¥ 2,550(税込)
発売日:2003-03

 この本の原題は、『Written in Bones』で、「骨に書かれた歴史」という意味です。ポール・バーン[Paul BAHN]さんによる編集で、2003年に、A Firefly Bookから出版されました。副題には、「人骨がどのようにして死者の秘密を明らかにしたか」とあるように、世界中の遺跡から出土した人骨やミイラから明かされる歴史について書かれた本です。

 本書は、全5章に分かれ、第1章.生活方法・第2章.自然死・第3章.殺人・第4章.お墓・第5章.ミイラとミイラ化となっています。

 カラー写真や図を多用しており、世界中の人骨やミイラについての素晴らしい物語が多数紹介されています。是非、翻訳化されることを望む1冊です。


法医人類学の本3.骨と語る

2009年08月19日 | I1.法医人類学の本[Forensic Anthropol

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骨と語る―法人類学者の捜査記録
価格:¥ 1,835(税込)
発売日:1995-09

 この本は、アメリカの法医人類学者・故ウィリアム・メイプルズ(William R. MAPLES)[1937-1997]さんが、ご自分が扱ってきた事例について紹介した本です。共著者は、マイケル・ブラウニング(Michael BROWNING)さんです。原題は、1994年に出版された「Dead Men Do Tell Tales」で、直訳すると「死者は物語を語る」となります。監修・解説は、元東京都監察医務院長の上野正彦さんで、小菅正夫さんの翻訳により、1995年に徳間書店から出版されました。

 本書の内容は、以下のように全16章からなります。

  1. 毎日がハロウィーン: 法人類学者という稼業
  2. お喋りな頭蓋骨: しゃれこうべから殺しの手口を知る
  3. 骨の束: 白骨になるまでの時間
  4. 土に抱かれて: 埋葬死体を発見する
  5. 浮き荷と投げ荷: バラバラにされた犠牲者たち
  6. 魂が病むとき: 自殺で受ける奇妙な外傷
  7. 悪鬼を出し抜く: 殺人者が投げかける難問
  8. 不自然な自然: エレファント・マンの骨を鑑定する
  9. 日出づるなき処: 子供たちの不当な死
  10. 炎と骨壺: 火葬が作り出すミステリー
  11. 愛の瓦礫: 無理心中現場の一万個の骨
  12. 失われた軍隊: ヴェトナム戦没者の遺骨識別
  13. 取り違えられた征服者: フランシスコ・ピサロの真偽
  14. 砒素と大統領: ザカリー・テーラーは毒殺か?
  15. 全ロシアの皇帝: 骨が語るニコライ二世虐殺の真相
  16. わが骸をして語らしめん: 恐るべき五重殺人

 この本で、特に興味深いのは、第8章の「不自然な自然: エレファント・マンの骨を鑑定する」でした。エレファント・マンは、イギリス人の、故ジョン・メリック(John MERRICK)[1862-1890]のことです。ただ、本名は、本書にも触れられていますが、「John」ではなく、「Joseph」のようで、エレファント・マンを診察した医師、フレデリック・トリーヴズが書き換えたようです。

 1979に上演された「エレファント・マン」や、1980年に上映された映画「エレファント・マン」で有名になりました。また、本書にも触れられていますが、今年亡くなった歌手のマイケル・ジャクソン[1958-2009]さんが、王立ロンドン医科大学から当時の金額で100万ドルで買い取ろうとしたという報道もなされました。

 メリックさんの死因は、まだ、特定されてはいませんが、本書ではプロテウス症候群ではないかとされています。ただ、保存されていた皮膚の標本は、第二次世界大戦中のドイツ空軍によるロンドン大空襲で焼失してしまったため、現代のDNA鑑定が不可能となってしまったのは残念なことです。

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法医人類学の本2.白骨は語る

2009年08月18日 | I1.法医人類学の本[Forensic Anthropol

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白骨は語る
価格:¥ 2,548(税込)
発売日:1994-07

 この本の原題は、『Witnesses From the Grave』というもので、直訳すると、「墓場からの目撃者」となります。著者は、ジャーナリストのクリストファー・ジョイス[Christopher JOYCE]さんと作家のエリック・ストーバー[Eric STOVER]さんのお二人です。小泉摩耶さんの翻訳で、1994年にNTT出版株式会社から出版されました。

 本書は、主に、アメリカのオクラホマ大学の法医人類学者、クライド・スノー[Clyde SNOW]さんの仕事にふれています。本書の内容は、以下のように全17章に分かれます。第Ⅰ部は、「骨が語る事件の真実」として、第1章から第7章になります。また、第Ⅱ部は、「ヨーゼフ・メンゲレを追う」として、第8章から第10章になります。さらに、第Ⅲ部は、「アルゼンチンでの大量虐殺」として、第11章から第14章になります。

  1. スノー、骨学を学ぶ
  2. 科学的検死法の確立
  3. 妻をソーセージにした男
  4. 航空機墜落事故を追って
  5. 床下に子どもの白骨
  6. 砒素づけの無法者
  7. カスター将軍、最後の陣地
  8. アウシュビッツの死の天使
  9. 人事を尽くして真実に迫る
  10. 最後の疑問を解く
  11. 明るみに出た非道
  12. リリアナの話
  13. 情けあれど正義はあらず
  14. でも私たちは歌い続ける

 どれも、興味深いのですが、その中でも「第7章.カスター将軍、最期の陣地」は戦跡考古学と関連しています。これは、1876年6月25日、サウスダコタ州で起きたリトルビッグホーンの戦いで戦死した、ジョージ・アームストロング・カスター[1839-1876]将軍のエピソードです。

 ここで、スノーは、バラバラになった骨から死亡年齢や民族の特徴を読みとり、歴史的記録と照合していく作業を行います。意外だったのは、この戦いで戦死した兵士の40%以上が、外国生まれだったということでした。また、身長が高い者は、軍人としての階級が上だったという事実です。法医人類学を、考古学や人類学に応用した事例と言えるでしょう。

Joycestover1994