この本は、元東京歯科大学の法歯学者・故鈴木和男[1927-2003]先生が、「法歯学」について多くの事例を紹介された本です。本書は、1979年に『歯は語りかける: 法歯学の犯罪捜査』として日本書籍から出版された本を文庫化したものです。1986年に、中公文庫として中央公論社から出版されました。
私は、1989年から1991年にかけて東京歯科大学で「人類学」の非常勤講師をしており、研究室を表敬訪問した際に、鈴木和男先生から本書を寄贈していただきました。サインの日付は、1989年4月14日でした。この「法歯学」は、「法医学」とは姉妹関係にあります。
本書の内容は、1.法歯学事始め・2.法歯学の出番です・3.外国における法歯学となっており、国内外の様々な事例が紹介されています。鈴木和男先生は、1985年8月12日に起きた「日本航空機123便墜落事故」では、法歯学者として教室員の方々と身元確認にあたられた方です。1985年8月15日から同年12月20日まで、教室員10名が交代で参加されたとのことです。
本日は、墜落事故が起きてから24年目になります。私は、当時、アメリカに留学中で、夏休みを利用して、イリノイ州のキャンプスヴィルでノースウェスタン大学の考古学夏期野外実習に約3ヶ月参加していました。ある日、アメリカ人の友人が、「日本で、飛行機事故が起きたらしい。スキヤキ・ソングで有名な歌手も亡くなったそうだ。」と連絡してくれたので、すぐに、実家に国際電話をしたことを思い出します。
その日の夜から、ラジオを聞いていると、1時間に1回の頻度で、アメリカでも有名な「スキヤキ・ソング」こと、故坂本 九さんの「上を向いて歩こう」が流れてきました。英語ばかりの曲に混じって遠い異国で聞いた、日本語の曲です。多くのアメリカ人が、坂本 九さんの死を悼んでリクエストしていたのでしょう。私は今、その事故が起きた群馬県に住んでいます。