人類学のススメ

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私の仕事・群馬県立自然史博物館19.常設展示・自然界におけるヒト19(人間性の起源と進化5・埋葬2)

2010年07月08日 | C1.私の仕事:群馬県立自然史博物館[My

 「埋葬」のジオラマ(ダイオラマ)での人形4体は、前回、ご紹介したように、アメリカの芸術家、ヴィート・カネラ(Vito CANNELLA)さんが製作しました。カネラさんは、「復顔」展示のように、ネアンデルタール人の頭蓋骨を復元してから、筋肉を復元して皮膚を復元するという手法をとりました。

 まず、ジオラマ(ダイオラマ)の右側に立っている男性の頭蓋骨は、シャニダール洞窟出土1号人骨を使用して復顔しました。この1号人骨は、約30歳~45歳の男性と推定されてます。

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群馬県立自然史博物館115.「埋葬」ジオラマ(ダイオラマ)近接1(*画像をクリックすると、拡大します。)

 ちなみに、ネアンデルタール人の衣服については議論しましたが、毛皮をまとわせることにしました。ただ、この毛皮も毛の部分を内側にするか外側にするかという判断もしなければなりませんが、今回は毛の部分を外側にしました。これらの毛皮は、ヨーロッパから、アカシカとノロジカの毛皮を取り寄せたものです。

 また、髪の毛の色や皮膚の色は、金髪で色白に復元する場合が多いのですが、金髪の人の先祖という誤解がされるのを恐れて、あえて、黒い髪と褐色の肌にしました。ただ、個人的には、寒冷適応をしているネアンデルタール人は、金髪で白い肌であったと思います。

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群馬県立自然史博物館116.シャニダール洞窟第1号人骨復顔1(*画像をクリックすると、拡大します。)

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群馬県立自然史博物館117.シャニダール洞窟第1号人骨復顔 2(*画像をクリックすると、拡大します。)

 実際のシャニダール洞窟で花粉が発見されたものは、シャニダール4号人骨です。しかし、この人骨の残存状態はあまり良くないので、シャニダール5号人骨を使用しました。この5号人骨は、約35歳~50歳の男性と推定されています。

 死者に供えられた花は、ノコギリソウ・ヤグルマギク・ノボロギク・ムスカリ・タチアオイ・トクサを日本の業者に頼んで製作してもらいました。その方法は、実際に栽培して、実物から型取りしたそうです。

 完成間際に、アメリカ自然史博物館のイアン・タッターソール(Ian TATTERSALL)先生から連絡があり、展示をリアルにするために、死者の眼は見開いた状態にする方が良いのではという示唆がありました。しかし、眼を見開いた状態では来館者に抵抗があることや生きている人を埋めているという誤解を招くおそれがあることを説明して、最終的に眼を閉じた状態にしました。

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群馬県立自然史博物館118.「埋葬」ジオラマ(ダイオラマ)近接2

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群馬県立自然史博物館119.シャニダール洞窟5号人骨復顔1

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群馬県立自然史博物館120.シャニダール洞窟5号人骨復顔2


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