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人類学のススメ

人類学の世界をご紹介します。OCNの「人類学のすすめ」から、サービス終了に伴い2014年11月から移動しました。

歯科人類学の本10.日本人の歯とそのルーツ

2011年10月20日 | I4.歯科人類学の本[Dental Anthropolog

Kanazawa2011

 この本は、日本大学松戸歯学部解剖学第1講座教授の金澤英作先生が、歯の特徴・過去と現在の日本人の歯・世界の民族の歯等について書かれたものです。私は、著者の金澤英作先生から寄贈していただきました。2011年10月17日に、わかば出版から出版されました。アマゾンで検索しましたが、ヒットしませんでしたのでリンクさせていません。

 以下にリンクした、デンタルブックセンター・シエン社から購入することができます。

リンク:デンタルブックセンター・シエン社

 本書の内容は、以下のように、全4章からなります。

第1章.ルーツ探しの道具

  1. 歯の名称の基本的知識
  2. それぞれの歯の特徴
  3. 歯の内部構造
  4. 歯の形態学
  5. 世界の多様な集団と歯

第2章.日本人の歯

  1. 旧石器時代
  2. 縄文時代
  3. 弥生時代
  4. 古墳時代
  5. 中世・鎌倉時代
  6. 近世・江戸時代
  7. 近代から現代へ

第3章.日本人の歯のルーツ

  1. モンゴロイド・デンタル・コンプレックス
  2. スンダドントとシノドント
  3. アジア仁の起源をめぐる論争
  4. 縄文人の歯のルーツ
  5. 弥生人の歯のルーツ
  6. 民族のるつぼ中国
  7. フィリピンの人

第4章.太平洋の親類たち

  1. 最初の航海者
  2. メラネシア
  3. ポリネシア
  4. ミクロネシア
  5. ニューギニア
  6. オーストラリア
  7. 太平洋民族の歯の比較

 本書は、新書サイズの本ですが、歯についてわかりやすく系統的に書かれており、歯学部の学生や研究者のみならず、人類学・法医人類学の分野にも参考になります。特に、著者の金澤英作先生ご自身が調査されてきた、太平洋諸島の人々の歯について書かれている点が他の類書と異なる点です。


歯科人類学の本9.入れ歯の文化史

2011年07月26日 | I4.歯科人類学の本[Dental Anthropolog
入れ歯の文化史―最古の「人工臓器」 (文春新書) 入れ歯の文化史―最古の「人工臓器」 (文春新書)
価格:¥ 725(税込)
発売日:2000-08

 この本は、元松本歯科大学の笠原 浩さんが、「入れ歯」について書いたものです。副題には、最古の「人工臓器」とあります。2000年に、文春新書118として、文藝春秋社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  1. 入れ歯のための科学:歯科補綴学とは?
  2. 入れ歯に歴史あり:歯科医学史概説
  3. ワシントンがしかめ面のわけ:アメリカでの歯科医学の勃興
  4. 木床義歯、これぞ日本の職人芸:わが国の歯科医療の歩み
  5. 口中医から歯科医へ:近代日本の歯科医学の開拓者たち
  6. 高度な「人工臓器」をめざして:発展を続ける現代の歯科補綴学
  7. 「抜くな、削るな、殺すな」:新しい歯科医学と未来の入れ歯

 本書では、興味深い話が紹介されています。西欧では、入れ歯の人工歯として、ヒトの歯を使用したというもので、貧しい人々の中には、自分の健康な歯を抜歯して売ったり、戦場で戦死者から歯を抜いていたというものです。これが、ワーテルローの戦い(1815年)や南北戦争(1861年~1865年)でも行われていたそうです。

 国内でも、近世の遺跡では木製の入れ歯が出土することがあります。その点で、非常に参考になります。

Kasahara2000


歯科人類学の本8.歯の解剖学

2011年07月25日 | I4.歯科人類学の本[Dental Anthropolog
歯の解剖学 歯の解剖学
価格:¥ 5,913(税込)
発売日:1998-06

 この本は、元東京大学の藤田恒太郎[1903-1964]さんが、歯の解剖学について書いたものです。1949年に、金原出版から出版されました。歯の解剖学の名著で、何度も改訂されています。

 私が所有している第21版の内容は、以下のように全6章からなります。

  1. 緒論
  2. 永久歯
  3. 歯の鑑別法
  4. 乳歯
  5. 歯群
  6. 歯の異常

 本書には、永久歯・乳歯の詳細な図や写真が掲載されており、かつ、歯科人類学には歯の鑑別法や歯の異常が、非常に参考になります。私も、常に読み返しています。

Fujita1949

『歯の解剖学』第21版表紙(*画像をクリックすると、拡大します。)


歯科人類学の本7.歯の話

2011年07月24日 | I4.歯科人類学の本[Dental Anthropolog

Fujita1965

歯の話 (1965年) (岩波新書)
価格:(税込)
発売日:1965

 この本は、元東京大学の藤田恒太郎[1903-1964]さんが、歯の解剖学について書いたものです。1965年に、岩波新書(青版)の546として、岩波書店から出版されました。本書は、著者が準備中に急逝されたため、井尻正二さん・榎 恵さん・佐伯政友さんのが、遺稿を元にしてまとめています。

 本書の内容は、以下のように、全6章からなります。

  1. 歯とはどんなものか
  2. いろいろな動物の歯
  3. 日本人の歯の特徴
  4. 魚の歯から人の歯まで
  5. 歯の病気・歯の治療
  6. 歯のこぼればなし

 本書は、次回ご紹介する、『歯の解剖学』と共に歯に関する名著として有名で、私も、時々読み返しています。


歯科人類学の本6.お歯黒の研究

2010年10月31日 | I4.歯科人類学の本[Dental Anthropolog

Hara1994

「お歯黒」の研究 (人間の科学叢書)
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2006-03

 この本は、歯科医師の原 三正さんが、お歯黒について書いたものです。私が持っているものは1994年に人間の科学社から出版されたものですが、2006年に人間の科学新社から出版されています。なお、本書の序文は、大阪歯科大学の白数美輝雄さんと元首相の橋本龍太郎[1937-2006]さんが書いています。

 本書の内容は、以下のように、全4編からなります。

第1編.序論

  1. 序章
  2. 身体装飾とはなにか
  3. 鯨面文身
  4. 朱丹粧
  5. 抜歯
  6. 歯牙変工

第2編.本論

  1. お歯黒の名称と出典
  2. 文献に見るお歯黒
  3. お歯黒の起源
  4. お歯黒の伝播
  5. お歯黒と通過儀礼
  6. 五倍子と鉄漿

第3編.特論

  1. お歯黒と公卿
  2. お歯黒と武士
  3. お歯黒と女性
  4. お歯黒と川柳
  5. お歯黒と檳椰子
  6. お歯黒の終焉
  7. お歯黒の名言・迷信・現代人の認識

第4編.総括

  1. 歯科医学の対応
  2. 要約と私見
  3. 今後の研究課題

 本書は、「お歯黒」についてまとめられた唯一の本だと思われます。本書では、人類学・考古学・民族学・民俗学・文化人類学・歴史学等、様々な分野を参考として包括的に書かれており、大変、参考になります。 

 


歯科人類学の本5.歯の風俗誌

2010年10月29日 | I4.歯科人類学の本[Dental Anthropolog

Hasegawa1993

歯の風俗誌
価格:¥ 1,714(税込)
発売日:1993-11

 この本は、元東京歯科大学の長谷川正康さんが、歯にまつわる様々な物語について書いたものです。1993年に、時空出版から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全7話からなります。

第1話.歯にまつわる民族風習

  • 知られざる歯の風習
  • 歯に飾りをつける風習
  • 生きた歯を抜く風習(欠歯)
  • 生歯を削った風俗

第2話.わが国のお歯黒文化

  • お歯黒の起源
  • 男子のお歯黒
  • 江戸の女子お歯黒風俗
  • 「おはぐろ」の化学
  • お歯黒風俗の終焉
  • 日本文学の古典にみられるお歯黒の話

第3話.入れ歯の史話

  • 現存する柳生宗冬の入れ歯
  • 入れ歯との葛藤
  • 入れ歯渡世人と香具師
  • 総入れ歯のルーツは日本

第4話.日本における歯磨きの歴史

  • 歯磨きのはじめ
  • わが国の歯磨粉むかし話
  • 「忠臣蔵」歯磨塩の騒動
  • すさまじいお江戸の歯磨粉商戦
  • 西洋式歯磨きの伝来

第5話.歯吹如来像の謎

  • なぜ見える? 如来の歯
  • 歯吹如来造像の特徴
  • 仏の「三十二相」と「歯の相」
  • 生身仏拝観

第6話.歯の字の話

  • 漢字そのむかし
  • 歯にかかわる甲骨文字
  • 歯のつく漢字
  • 歯の字のつく熟語・古語
  • 醫の字の話
  • 漢字の読みについての話
  • 逆輸入された漢字

第7話.近代歯科医学の先覚者

  • 近代歯科医学の黎明期に

 本書には、歯にまつわる多くの事例を、歴史学・民俗学・考古学等からも考察しており、大変、参考になります。個人的に興味深かったのは、「第2話.わが国のお歯黒文化」で、果実酒やイモ酒を作るときに、口で噛むことが歯を黒くしたのではないかと推定しています。


歯科人類学の本4.歯と顔の文化人類学

2010年10月27日 | I4.歯科人類学の本[Dental Anthropolog

Sugimoto1985

歯と顔の文化人類学 (1985年)
価格:¥ 2(税込)
発売日:1985-07

 この本は、歯科医師の杉本茂春さんが、歯と顔の人類学について書いたものです。1985年に、編集工房ノアから出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全11編に分かれます。

  • 顔の話
  • 鉗・やっとこの話
  • 江戸時代の歯科医
  • 梅毒をめぐって
  • 歯のなぞにいどむ
  • 歯を洗って『甘粛彩陶』の鋸歯紋に及ぶ
  • 舞楽陵王面の教えるもの
  • 北条の石仏群
  • 美と顔の美
  • 木床義歯の研究

 個人的には、「木床義歯の研究」が、参考になりました。この木床義歯は、時々、東京の江戸遺跡から出土することがあります。実際、私自身の経験では、都立上野高校遺跡出土人骨を分析した際に、木床義歯が出土しました。木床の木にはツゲを使い、義歯は中国産の蝋石を使っていました。


歯科人類学の本3.歯科に役立つ人類学

2010年10月11日 | I4.歯科人類学の本[Dental Anthropolog

Kanazawakasai2010

(*画像をクリックすると、拡大します。)

 この本は、日本大学松戸歯学部の金澤英作先生と葛西一貴先生の編集により、歯の人類学について書かれたものです。副題には、「進化からさぐる歯科疾患」とあります。2010年に、わかば出版から出版されました。本日(2010年10月11日)、執筆者のお一人の新潟県立看護大学の藤田 尚さんから献本していただきました。アマゾンで検索しましたが、ヒットしませんでしたので、リンクさせていません。2010年10月5日出版なので、掲載されていないのかもしれません。いずれ、ヒットしましたら、リンクさせます。

 注文は、以下のデンタルブックセンター・シエン社からできるようです。

デンタルブックセンター・シエン社注文ホームページ

 「はじめに」によると、本書の企画の元になったのは、2009年に開催された、日本人類学会歯の分科会シンポジウムだそうです。

 本書の内容は、以下のように、全10章からなります。

  • はじめに(金澤英作・葛西一貴)
  • 人類の進化と歯の進化(河野礼子)
  • 歯の退化と「親知らず」の話(山田博之)
  • 下顎隆起とはなにか(五十嵐由里子)
  • 歯の萌出順と人類進化(金澤英作)
  • 歯の形や大きさはどのように決まるのか(近藤信太郎)
  • 歯の咬耗を考える:人類学からみた”正常”な歯列(海部陽介)
  • う蝕と歯周病の人類学(藤田 尚)
  • 人類学に学ぶ第一大臼歯の咀嚼機能(加藤 均)
  • 歯並びと人類学(葛西一貴)

 本書には、臨床歯科と人類学の分野の研究者が最新の情報を提示しており、人類学のみならず、臨床歯科にも大変、参考になります。歯科人類学の本は、まだまだ多くは出版されていないので重要な本です。


歯科人類学の本2.おもしろい歯のはなし60話

2010年02月11日 | I4.歯科人類学の本[Dental Anthropolog
おもしろい歯のはなし60話 おもしろい歯のはなし60話
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2000-12

 この本は、歯科医師の磯村寿賀人さんが、歯について書いたものです。お話は、プロローグとエピローグを入れて、全60話になっています。

 ちょっと多いので、目次は省略させていただきますが、歯みがきの起源・入れ歯の起源・お歯黒の話・虫歯の考古学・歯の起源・顔の話・子供の歯・8020運動等、歯についての様々なテーマが書かれており、大変、参考になります。歯の入門書として最適な1冊です。


歯科人類学の本1.歯と人類学の話

2009年12月10日 | I4.歯科人類学の本[Dental Anthropolog

歯と人類学の話 歯と人類学の話
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:1992-12

 この本は、故埴原和郎[1927-2004]先生が、歯の人類学について書いた本です。埴原先生は、以前、休刊中の科学雑誌「自然」にも同様のテーマの記事を書いておられます。また、本書にもふれられていますが、エリザベス・サンダース・ホームにて、日米の混血孤児の歯型を研究されており、研究に用いられた歯型は、現在東京大学総合研究博物館に所蔵されています。

 本書の内容は、以下のようになります。

序章.歯と人類学:研究上の利点

  • 歯の特異性
  • 歯と化石
  • 歯と動物の系統
  • 歯の形態の遺伝
  • 乳歯と永久歯
  • 萌出順序の変化

第1部.哺乳類の歯の進化

  • 爬虫類の歯と哺乳類の歯
  • 哺乳類の歯の進化

 霊長類の進化

  • 最古の霊長類:パーガトリウス
  • 狭鼻下目の出現
  • ヒト上科の出現
  • ヒト上科の進化
  • 鮮新世
  • 原人
  • 旧人
  • 新人

第2部.歯の人類学

  • エリザベス・サンダース・ホーム
  • 一般化した乳歯の形態
  • 白人・黒人のデータをとる
  • 生物統計学:研究の基礎として
  • 混血児の歯
  • 人種系統の研究
  • 歯による性別の推定
  • 縄文人の血縁関係

 本書は、歯の人類学の教科書というよりは、人類学的に歯を研究した事例を学ぶことができる本です。

Hanihara1992

埴原(1992)『歯と人類学の話』表紙(*画像をクリックすると、拡大します。)