私は、1986年6月から7月にかけて、アメリカの首都・ワシントンD.C.にあるジョージタウン大学医歯学部(Georgetown University)で、夏期集中解剖実習を受ける機会を得ました。これは、主に医師や歯科医師の再教育を目的として、夏期に集中して解剖実習を行う目的で始められたものです。毎年、交互に、ジョージタウン大学とミズーリ州セント・ルイスのワシントン大学で開催されていました。
当時は、肉眼解剖学(医学・歯学)・組織学・人体発生学・神経解剖学の5つのコースがありました。私は、この内、肉眼解剖学のコースを選択しました。アメリカの人類学部では、人体解剖実習はありませんでした。また、あったとしても、教育学部体育学科で、見学だけという場合が多かったようです。また、イギリスやフランスでは、医師や歯科医師でないと、人体解剖はできないという制限がありました。
ジョージタウン大学は、1789年に創立されており、医学部は1851年に創立されています。南北戦争直後の1874年には、アメリカ最初のアフリカ系学長としてパトリック・ヒーリー神父(Patrick Francis HEALY)[1830-1910]が就任するように、自由な学風です。

ジョージタウン大学1.ヒーリー・ホール1(Healy Hall)

ジョージタウン大学2.ヒーリーホール2(Healy Hall)
卒業生には、第42代アメリカ合衆国大統領のビル・クリントンや、第14代フィリピン共和国大統領のグロリア・アロヨ等が有名です。
ジョージタウン大学3.大学図書館(Lauinger Library)
ジョージタウン大学4.ドミトリー(宿舎)
ちなみに、私は、この夏期集中人体解剖実習が終了して、ケニアに行くのですが、そのためには、事前に多くの予防接種を受けなければなりません。この予防接種すべてを、ジョージタウン大学附属病院で受けましたが、黄熱病1回・腸チフス2回・コレラ2回・破傷風1回・狂犬病1回と、7回も受けています。この予防接種だけで、身体の調子が悪くなったのを覚えています。その上、現地では、マラリアの予防薬を毎週飲まなければなりません。アフリカ調査の大変さを、出発前に感じました。
余談ですが、このジョージタウン大学やジョージタウンは、1985年に公開された、映画『セント・エルモス・ファイアー』の舞台になった大学です。この映画からは、エミリオ・エステベス、ロブ・ロウ、デミ・ムーア等、後にアメリカ映画で活躍する俳優が多く出演しています。