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人類学のススメ

人類学の世界をご紹介します。OCNの「人類学のすすめ」から、サービス終了に伴い2014年11月から移動しました。

アイヌの本14.エゾの歴史

2014年04月06日 | F6.アイヌの本[Ainu]
エゾの歴史―北の人びとと「日本」 (講談社選書メチエ) エゾの歴史―北の人びとと「日本」 (講談社選書メチエ)
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:1996-02

 この『エゾの歴史』は、北海道開拓記念館の海保嶺夫さんが、アイヌと関連がある「エゾ」の歴史について書いたものです。副題には、「北の人びとと日本」とあります。1996年に、講談社選書メチエ69として、講談社から出版されました。なお、2006年に再録された講談社学術文庫でも読むことができます。

エゾの歴史 (講談社学術文庫) エゾの歴史 (講談社学術文庫)
価格:¥ 1,155(税込)
発売日:2006-02-11

 本書の内容は、以下のように、全11章からなります。

  • 序章.エゾ地の交易
  1. エゾから見たエミシ論
  2. エゾの登場
  3. エゾと擦文文化
  4. 波濤を越えて
  5. 未完の王権
  6. 「エゾ」政権から「和人」政権へ
  7. 底抜け鎖国体制:北からの道・北への道
  8. エゾ地の閂
  9. エゾ地の人別帳
  • 終章.北方史研究私論:おわりにかえて

 本書は、アイヌと関連があるエゾの歴史について、主に考古学や歴史学から探っており、大変、参考になります。

Kaiho1996


アイヌの本13.エミシとは何か

2014年04月05日 | F6.アイヌの本[Ainu]
エミシとは何か―古代東アジアと北方日本 (角川選書) エミシとは何か―古代東アジアと北方日本 (角川選書)
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:1993-11

 この『エミシとは何か』は、国際日本文化研究センター(当時)の中西 進さんによる編で、学際的に行われたエミシについてのシンポジウムの記録です。副題には、「古代東アジアと北方日本」とあります。1993年に、角川選書247として、角川書店から出版されました。

 なお、シンポジウムは、1993年2月12日と同年2月13日の2日間にわたり、公開シンポジウム「東アジアの中の日本」として開催されています。

 本書の内容は、以下のように、全2部からなります。

Ⅰ.講演

  • 東アジアと北ッ海(上田正昭)
  • 人類学からみたエミシ(埴原和郎)
  • 北方日本の原始古代文化:稲作の北進をめぐって(田辺昭三)
  • 高句麗・渤海と北方日本(井上秀雄)
  • 高句麗使と恵便法師(上垣外憲一)
  • 北辺の古代文化(中西 進)
  • 行基図と北辺の発見:飛鳥から粛慎への道(千田 稔)
  • 東アジア文化と奥州藤原氏(村井康彦)

Ⅱ.討論

 本書は、アイヌと深い関連があるエミシについて、様々な分野から学際的に検証された結果が書かれており、大変、参考になります。

Nakanishi1993


アイヌの本12.小シーボルト蝦夷見聞記

2014年04月04日 | F6.アイヌの本[Ainu]
小シーボルト蝦夷見聞記 (東洋文庫) 小シーボルト蝦夷見聞記 (東洋文庫)
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:1996-02

 この『小シーボルト蝦夷見聞記』は、ハインリッヒ・フォン・シーボルト(Heinrich con SIEBOLD)[1854-1908]が、19世紀に北海道と樺太を訪問して、当時のアイヌの風習についてまとめたものです。1996年に、原田信男さんによる翻訳で、東洋文庫597として平凡社から出版されました。

 著者のハインリッヒ・フォン・シーボルトは、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(Philipp Franz von SIEBOLD)[1796-1866]の次男として生まれています。有名な父親を「大シーボルト」と呼び、この次男を「小シーボルト」と呼んで区別しています。この小シーボルトは、1869年に来日し、オーストリア=ハンガリー公使館で勤務します。やがて、岩本はなと結婚しました。1895年に帰国し、1898年にウィーンでオイフェミア・カーペンターと結婚します。しかし、1907年に胃の手術を受け1908年に56歳で死去しました。

 本書の内容は、以下のように、全2章からなります。

  • 蝦夷島におけるアイヌの民族学的研究
  • アイヌの毒矢
  • 北海道歴観卑見

 「蝦夷島におけるアイヌの民族学的研究」は1881年に発表、「アイヌの毒矢」は1878年に発表、「北海道歴観卑見」は1878年に視察した際の報告書が1959年に発表されています。

 また、巻末には、以下の参考資料も掲載されています。

  • ハインリッヒ・フォン・シーボルト(ヨーゼフ・クライナー)
  • ハインリッヒ・フォン・シーボルトと北海道(原田信男)
  • ハインリッヒ・フォン・シーボルト略年譜

 本書は、19世紀のアイヌの民族誌が書かれており、貴重な記録です。

Siebold1996


アイヌの本11.増補・アイヌ考古学

2014年04月03日 | F6.アイヌの本[Ainu]
増補アイヌ考古学〔北方新書3〕 (北方新書 (003)) 増補アイヌ考古学〔北方新書3〕 (北方新書 (003))
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2000-04-10

 この『増補・アイヌ考古学』は、元東京大学の考古学者・宇田川 洋さんが、北海道のアイヌ関連の考古学について書いたものです。1980年に歴史新書102として教育社から出版された『アイヌ考古学』を、2000年に『増補・アイヌ考古学』として、北方新書003として北海道出版企画センターから出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全4章からなります。

概観:考古学よりみた中・近世の北海道

1.中世のアイヌ考古学

  • 内耳土器をもつ文化
  • 中世陶磁器の移入

2.チャシ文化の概念:近世考古学の実践

  • チャシとは何か
  • チャシの年代
  • チャシの機能と構造
  • チャシの立地と分布
  • チャシの発生と形態
  • チャシとコタンの関係

3.アイヌ文化の概念

  • クマ祭文化複合体
  • イワクテとオプニレ
  • 和産物の伝来・侵略
  • 中・近世のアイヌ文化

4.北海道の中・近世考古学の歴史

 本書は、考古学からアイヌの歴史について迫っており、大変、参考になります。

Utagawa2000


アイヌの本10.アイヌ歳時記

2014年04月02日 | F6.アイヌの本[Ainu]
アイヌ歳時記―二風谷のくらしと心 (平凡社新書) アイヌ歳時記―二風谷のくらしと心 (平凡社新書)
価格:¥ 735(税込)
発売日:2000-08

 この『アイヌ歳時記』は、元二風谷アイヌ文化資料館の萱野 茂[1926-2006]さんが、二風谷におけるアイヌの生活について書いたものです。2000年に、平凡社新書054として、平凡社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全5章からなります。

  • 序章.二風谷に生まれて
  1. 四季のくらし
  2. 神々とともに生きて
  3. 動物たちとアイヌ
  4. 生きることと死ぬこと
  5. アイヌの心をつづる

 本書は、二風谷にアイヌ民族として生まれ、二風谷アイヌ文化資料館を開館し、後に参議院議員としても活躍した著者が見聞きした当時のアイヌの生活が生き生きと書かれており、大変、参考になります。特に、自然人類学にとっては第4章の「生きることと死ぬこと」が参考になります。

Kayano2000


アイヌの本9.アイヌ民族の歴史と文化

2014年04月01日 | F6.アイヌの本[Ainu]
アイヌ民族の歴史と文化―教育指導の手引 アイヌ民族の歴史と文化―教育指導の手引
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2000-08

 この『アイヌ民族の歴史と文化』は、道都大学短期大学部の田端 宏さんと札幌大学の桑原真人さんによる監修で、アイヌについて書かれたものです。副題には、「教育指導の手引」とあります。2000年に、山川出版社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全2章からなります。

第1章.なぜアイヌ史を学ぶのか(桑原真人)

  • アイヌ民族の現状と差別問題
  • 道民の「開基」意識とアイヌ民族問題
  • アイヌ史の学習を
  • 本書の課題と構成

第2章.アイヌ民族問題に関する教育をどう展開するか

  1. 古代国家と蝦夷(中村和之)
  2. 中世の日本・中国史料にみえるアイヌ民族の姿(中村和之)
  3. 松前藩の成立と商場知行制(山北尚志)
  4. 場所請負制とアイヌ社会(山北尚志)
  5. 明治国家の成立とアイヌ民族(山本融定)
  6. アイヌ民族の復権と自立(山本融定)
  7. アイヌ民族の伝統的な文化(山北尚志)
  8. 近現代のアイヌ文化と権利獲得への動き(中村和之)

 本書は、アイヌの歴史が古代から近現代まで書かれており、大変、参考になります。なお、巻末には、関係年表も掲載されています。

Tabatakuwabara2000


アイヌの本8.アイヌの歴史

2014年03月31日 | F6.アイヌの本[Ainu]
アイヌの歴史 海と宝のノマド (講談社選書メチエ 401) アイヌの歴史 海と宝のノマド (講談社選書メチエ 401)
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2007-11-09

 この『アイヌの歴史』は、旭川市博物館の瀬川拓郎さんがアイヌの歴史について書いたものです。副題には、「海と宝のノマド」とあります。ちなみに、「ノマド」とは、英語の「Nomad」で「遊牧民」という意味です。2007年に、講談社選書メチエ401として、講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  1. アイヌ文化のなりたち:北の縄文から近世
  2. 格差社会の誕生:宝と不平等
  3. 「サケの民」の成立:交易品を推理する
  4. ワシ羽をもとめる人びと:交易品を推理する
  5. 侵略する北の狩猟採集民:オホーツク文化との関係
  6. 境界をみる:「日本」文化との関係
  7. アイヌ・エコシステムの世界:交易と世界観の転換

 本書は、アイヌの歴史を、著者の専門の考古学のみならず、歴史学・文化人類学等、学際的に探っており、大変、参考になります。

 なお、本書は、Kindle版でも購入して読むことが可能です。

アイヌの歴史 海と宝のノマド (講談社選書メチエ) アイヌの歴史 海と宝のノマド (講談社選書メチエ)
価格:(税込)
発売日:2007-11-08

Segawa2007


アイヌの本7.アイヌ民族

2014年03月30日 | F6.アイヌの本[Ainu]
アイヌ民族 (朝日文庫) アイヌ民族 (朝日文庫)
価格:¥ 693(税込)
発売日:2001-11

 この『アイヌ民族』は、元朝日新聞の本多勝一さんが、アイヌ民族の500年以上も前の歴史を復元して書いたものです。1997年に単行本として、2001年に朝日文庫として朝日新聞社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全3部からなります。

第1部.アイヌモシリ

  • 大森林
  • シカとサケ
  • 四季のさち
  • アイヌモシリ
  • 「アイヌ」と「シサム」
  • 天地創造
  • 祖先
  • コタンとチセ
  • イコインカル
  • ドスとウエインカル

第2部.ハルコロ

  • ウエペケレ
  • 吹雪の日
  • 雪どけの日
  • 月の滴の日
  • イヨマンテの日
  • 戦いの日
  • 新緑の日
  • 冬の雨の日
  • 真夏の日
  • フチの安息の日
  • 流れ星の日

第3部.パセクル

  • ウパシクマ
  • パセクル
  • シロマイヌ

 本書は、これまで、『極限の民族』で、「カナダ・エスキモー」・「ニューギニア高地人」・「アラビア遊牧民」について調べてきた本多勝一さんが、日本国内のアイヌを対象として、文化人類学・歴史学・考古学等から迫ったもので大変、参考になります。

Honda2001

*本書は、1993年に出版された単行本や1997年に出版された本多勝一全集でも読むことができます。

アイヌ民族 アイヌ民族
価格:¥ 1,682(税込)
発売日:1993-04

アイヌ民族 (本多勝一集) アイヌ民族 (本多勝一集)
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:1997-07


アイヌの本6.シンポジウム・アイヌ

2014年03月29日 | F6.アイヌの本[Ainu]
アイヌ―シンポジウム その起源と文化形成 (1972年) アイヌ―シンポジウム その起源と文化形成 (1972年)
価格:¥ 756(税込)
発売日:1972

 この『シンポジウム・アイヌ』は、埴原和郎さん等、人類学・考古学・文化人類学・言語学からアイヌの起源や文化について迫ったものです。副題には、「その起源と文化形成」とあります。1972年に、北大図書刊行会から出版されました。

 シンポジウムの参加者は、以下の通りです。なお、シンポジウムは、1971年7月11日から同13日まで行われています。

  • 埴原和郎(人類学)[1927-2004]
  • 藤本英夫(考古学)[1927-2005]
  • 浅井 亨(言語学)
  • 吉崎昌一(考古学)[1931-2007]
  • 河野本道(文化人類学)
  • 乳井洋一(作家)

 本書の内容は、以下のように、全11章からなります。

  1. アイヌ論への招待
  2. 石器時代の彼方に
  3. 崩壊と抵抗の歴史
  4. 葬制の系譜
  5. アイヌの骨を読む
  6. 衣食住の伝統
  7. 物質文化をさぐる
  8. 北方とのつながり
  9. アイヌ語を考える
  10. プロトアイヌ農耕論
  11. アイヌ文化の形成

 本書は、出版されてから30年以上経過しており、内容も一部古くなっていますが、それでも、当時のアイヌ研究にかける意気込みや当時の考え方が伝わります。

Haniharaetal1972 


アイヌの本5.明治前日本人類学・先史学史

2012年06月08日 | F6.アイヌの本[Ainu]

Kodama1971

明治前日本人類学・先史学史―アイヌ民族史の研究(黎明期) (1971年)
価格:¥ 4,095(税込)
発売日:1971

 この本は、元北海道大学の解剖学者・児玉作左衛門[1895-1970]さんがアイヌについて書いたものです。タイトルは『明治前日本人類学史・先史学史』となっており、人類学史や考古学史の本を想像させますが、実際は、副題にあるように「アイヌ民族史の研究(黎明期)」という内容です。1971年、著者の死後に日本学術振興会から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全3部からなります。

前編:古文献に現れた渡島蝦夷、蝦夷とアイヌ民族

  1. 阿倍野比羅夫の渡島遠征
  2. 斉明紀博徳書、新唐書東夷伝、宋史日本伝にある蝦夷の記録
  3. 阿倍臣渡島遠征後平安末期までの渡島蝦夷に関する記録
  4. 諏訪縁起絵詞の中にある蝦夷
  5. 聖徳太子絵傳中の所謂蝦夷図
  6. 天正年間の蝦夷の習俗
  7. 奥羽地方のエミシとエゾ

中編:外国人が書いた蝦夷に関する記録

  1. 日本人から聞いて書いた外国人の蝦夷記事
  2. 蝦夷地に行き調査した外国人の蝦夷記事

後編:本邦人が書いた蝦夷調査記録

 本書は、生涯をアイヌ研究に捧げた児玉作左衛門さんが、アイヌ研究史についてまとめたもので、参考になります。


アイヌの本4.アイヌ(AINU)[英文]

2012年06月07日 | F6.アイヌの本[Ainu]

Kodama1970

 この本は、元北海道大学の解剖学者・児玉作左衛門[1895-1970]さんが、アイヌについて書いたものです。原題は『Ainu: Historical and Anthropological Studies』で、直訳すると「アイヌ:歴史的及び人類学的研究」となるでしょうか。1970年に、北海道大学医学部から出版されました。アマゾンで検索しましたが、ヒットしませんでしたのでリンクさせていません。

 本書の内容は、以下のように全12章からなります。

  1. The oldest description on the Ainu and Hokkaido
  2. Historical changes of the designation of the Ainu today in the documents made by European reporters
  3. Distribution and fluctuations of the Ainu population
  4. The historical consideration on the Ainu in Asia
  5. Somatoscopical studies
  6. Tattoomarks and hairdressing
  7. Somatometrical studies: Special references to the Hidaka Ainu
  8. Craniological studies
  9. The characteritics of the cerebrum of the Ainu
  10. The so-called artificial injuries on the Ainu skulls
  11. The problem of racial classifications of the Ainu
  12. A list of the old Japanese-written documents on Ezo

 本書は、生涯をアイヌ研究に捧げた著者・児玉作左衛門さんがアイヌについてまとめたものです。内容は、解剖・骨学・生体計測のみではなく、歴史・分布・入墨等に及んでいます。本書は、著者が亡くなった年に出版されています。なお、第10章の「所謂アイヌ頭蓋骨の人工損傷」では、かつて、小金井良精[1859-1944]さんが脳を取り出す際に、頭蓋骨の大後頭孔が人工的に損傷されたという説を提唱し、児玉作左衛門さんも認めていた説を、ネズミによる損傷であると結論づけています。


アイヌの本3.学問の暴力

2011年01月10日 | F6.アイヌの本[Ainu]
学問の暴力―アイヌ墓地はなぜあばかれたか 学問の暴力―アイヌ墓地はなぜあばかれたか
価格:¥ 2,500(税込)
発売日:2008-06

 この本は、苫小牧駒澤大学の植木哲也さんが、アイヌ墓地盗掘事件について書いたものです。2008年に、春風社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全6章からなります。

  1. 幕末の事件
  2. 明治と大正の発掘旅行
  3. 昭和の学術調査
  4. 「人為的」損傷の研究
  5. 発掘の論理と倫理
  6. 知の力

 本書では、慶応元(1865)年のイギリス人によるアイヌ墓地盗掘事件・小金井良精[1859-1944]によるアイヌ墓地発掘調査・児玉作左衛門[1895-1970]によるアイヌ墓地発掘調査等について書かれています。

Ueki2008


アイヌの本2.アイヌ墓地をあばいたイギリス人たち

2011年01月09日 | F6.アイヌの本[Ainu]
アイヌ墓地をあばいたイギリス人たち 一八六五年箱館 アイヌ墓地をあばいたイギリス人たち 一八六五年箱館
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2007-07-01

 この本は、慶応元(1865)年に北海道函館近郊で起こった、イギリス人によるアイヌ墓地盗掘事件について書かれています。2007年に、フリー・ライターの浜 靖史さんにより、文芸社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全9章からなります。

  1. アイヌの墓地が荒らされた
  2. 生麦事件の強硬派だったワイス
  3. ヘイジロウは和人嫌い
  4. 迅速に行動した小出奉行
  5. 落部村盗掘の目撃者がいた
  6. 落部村盗掘の全容明るみに
  7. 新たな疑惑:もうひとるの盗掘
  8. 人骨は返ってきたが・・・
  9. 黒い影:小出暗殺

 当時、イギリスではアイヌ白人説が有力で、生物学者や人類学者の注目を集めていました。そこで、落部村で13体・森村で3体の合計16体を盗掘したという事件です。この盗掘が目撃されたことから大事件に発展したため、落部村の13体はすぐに返還されました。しかし、森村の3体はすでにイギリスに送ったとのことで、後に返還されましたが、上海の墓地から発掘した人骨とすり替えられたのではないかという疑惑があがっています。そして、アイヌ人骨数体は、大英自然史博物館に送られたというのです。

Hama2007

 この事件については、人類学者・埴原和郎[1927-2004]先生による論考が、以前にもご紹介した『日本人の骨とルーツ』(角川書店・1997年)の「第7章.アイヌ研究事始め」に書かれています。埴原先生は、以前、札幌医科大学に勤務されていたことがあるので、興味がおありだったのでしょう。

 埴原先生によると、アイヌ頭蓋骨について最初に報告したのは、イギリスのジョージ・バスク(George BUSK)[1807-1886]で、1867年に1体の記載があります。バスクは、海軍に所属する外科医でしたが、1856年から1859年にかけて、王立外科学校のハンテリアン比較解剖学教授となり、1871年には王立外科学校校長に就任しています。このバスクは、人類学の世界では、アイヌ研究よりも、ジブラルタル人というネアンデルタール人の研究で有名です。

 バスクの次にアイヌ頭蓋骨を報告したのは、イギリスのジョセフ・バーナード・デイヴィス(Joseph Bernard DAVIS)[1801-1881]で、1870年に出版されています。このデイヴィスは、『Crania Britannica』を書いているように、主に、頭蓋骨を研究していました。

 さて、埴原先生によると、大英自然史博物館に保管されているアイヌ頭蓋骨は3体あり、その標本番号は、「1866-2-7-1」・「1866-2-7-2」・「1882-5-31-1」とあり、最初の2体は受入年が1866年であり、函館の盗掘事件と関連があるのではないかと書いています。判別方程式で検証すると、3体とも男性で、1体はアイヌ・2体は東北人(和人)に分類されたそうです。

日本人の骨とルーツ 日本人の骨とルーツ
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:1997-10


アイヌの本1.アイヌ墳墓盗掘事件

2011年01月08日 | F6.アイヌの本[Ainu]

Koida1987

 この本は、小井田 武さんが、慶応元(1865)年に北海道の道南部函館近郊の落部村と森村で起きた、イギリス人によるアイヌ墳墓盗掘事件について書いたものです。1987年に、みやま書房から出版されました。アマゾンで検索しましたが、ヒットしませんでしたので、リンクさせていません。私は、1998年9月に札幌学院大学で開催された第52回日本人類学会に参加した際に見学した、北海道開拓記念館で購入しました。

 このアイヌ墳墓盗掘事件とは、函館の英国領事館員等が、アイヌ墳墓を盗掘し16体の人骨を入手したという事件です。この事件は、大正七(1918)年に発行された、『人類学雑誌』第33巻第5号・第6号・第8号・第9号・第10号・第12号に、北海道庁道史編纂係の阿部正巳さんが「アイヌ墳墓発掘事件の顛末」として6回にわたって報告しています。

 阿部正己[1879-1946]さんは、山形県酒田市生まれですが、哲学館(東洋大学)を卒業後北海道庁に入庁して北海道史の編纂を行いながら、当時の『人類学雑誌』に論文や記事を多く投稿しています。その後、北海道史の事業が頓挫したため、1918年に辞職して故郷の酒田市に戻り、城輪柵の発掘調査も指導した方です。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  • 序文.発刊によせて(野村義一)
  • 序章.鎮魂の譜
  • 第1章.落部村の事件
  • 第2章.森村の盗掘
  • 第3章.森村の遺骨返還
  • 終章.終焉のない一件落着
  • あとがき.舞台になったふるさとから

 この事件は、当時、大問題となり、アイヌの遺骨は返還されましたが、この内何点かは別の遺骨とすり替えられたと言われています。