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人類学のススメ

人類学の世界をご紹介します。OCNの「人類学のすすめ」から、サービス終了に伴い2014年11月から移動しました。

季刊・人類学6.第2巻第2号

2013年07月31日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

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 『季刊・人類学』は、1970年から1989年にかけて、京都大学人類学研究会により、季刊(1月・4月・7月・10月)として毎年4冊刊行されていた雑誌です。第1巻から第20巻まで、当初は社会思想社から、途中から講談社により出版されました。内容は、文化人類学・民俗学・民族学・自然人類学・考古学と、人類学のあらゆる分野が包括的に掲載されていたものです。

 『季刊・人類学』第2巻第2号は、1971年4月30日に社会思想社から刊行されました。アマゾンで検索しましたが、ヒットしませんでしたのでリンクさせていません。

 本号の内容は、以下の通りです。

縄文時代の社会組織(大林太良)

  • コメント(樋口隆康)

切腹考抄(千葉徳爾)

  • コメント1(佐々木高明)
  • コメント2(藤岡喜愛)

弥生式文化の系譜についての実験考古学的試論:抉入片刃石斧をめぐって(松原正毅)

  • コメント(小林行雄)

民衆生活ノート(2)(篠田 統)

ひと:篠田 統氏(馬場 功)

ひと:中村タカヨ氏(有馬真喜子)

タム・タム

バリ島の古村における方位観念について(大重幸二)

「縦横人類学」を読む(山中源二郎)

  • コメント(梅棹忠夫)

註:「山中源二郎」は、「金関丈夫[1897-1983]」のペンネームです。


季刊・人類学5.第2巻第1号

2013年07月30日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Qanthro21

 『季刊・人類学』は、1970年から1989年にかけて、京都大学人類学研究会により、季刊(1月・4月・7月・10月)として毎年4冊刊行されていた雑誌です。第1巻から第20巻まで、当初は社会思想社から、途中から講談社により出版されました。内容は、文化人類学・民俗学・民族学・自然人類学・考古学と、人類学のあらゆる分野が包括的に掲載されていたものです。

 『季刊・人類学』第2巻第1号は、1971年1月30日に社会思想社から刊行されました。アマゾンで検索しましたが、ヒットしませんでしたのでリンクさせていません。

 本号の内容は、以下の通りです。

エチオピアの栽培植物の呼称の分類とその史的考察:雑穀類をめぐって(福井勝義)

  • コメント1(中尾佐助)
  • コメント2(和田祐一)

考現学と世相史(上):現代史研究への人類学的アプローチ(梅棹忠夫)

『家族の構造』(中根千枝著)をめぐって(増田光吉・太田武男・佐々木高明・米山俊直)

『家族の構造』の著者から(中根千枝)

民衆生活ノート(1)(篠田 統)

研究室めぐり5:東北大学日本文化研究施設(有馬真喜子)

ほん:アーサー・ケストラーの『機械の中の幽霊』(藤岡喜愛)

人類学への私見:マルクスに関連して(川添 登)

ひと:今 和次郎氏(有馬真喜子)

ひと:田中二郎氏(馬場 功)

私と人類学:パリ大学民族学科のころ(岡本太郎)

物質文化研究と博物館:文化財学の提唱(中川成夫)

タム・タム

随想:石田英一郎先生をおもう(関 三雄)


日本人の起源の本53.骨考古学と身体史観

2013年07月29日 | I6.骨考古学の本[Osteoarchaeology:Ja
骨考古学と身体史観―古人骨から探る日本列島の人びとの歴史 (日本歴史 私の最新講義) 骨考古学と身体史観―古人骨から探る日本列島の人びとの歴史 (日本歴史 私の最新講義)
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2013-07

 この『骨考古学と身体史観』は、京都大学名誉教授の片山一道さんが骨考古学の視点から日本人の起源について書いたものです。副題には、「古人骨から探る日本列島の人びとの歴史」とあります。本書は、2013年に「日本歴史 私の最新講義」シリーズとして、敬文舎から出版されました。私は、片山一道先生から寄贈していただきました。本来なら、「骨考古学の本」に分類すべきですが、内容が主に日本人の起源についてなので「日本人の起源の本」に分類しました。

 本書の内容は、以下のように、全8講からなります。「章」ではなく、「講」となっているのは、講義シリーズだからあえてそうしたと書かれています。

  • 第1講.身体史観ことはじめ
  • 第2講.日本列島の旧石器時代人の面影
  • 第3講.日本人の原像を探る(1):縄文人に学ぶ彼らの生きかたと死にざま
  • 第4講.日本人の原像を探る(2):弥生時代人の実像と「弥生人」さまざま
  • 第5講.藤ノ木古墳とキトラ古墳の被葬者像
  • 第6講.江戸時代の京町民の実像を古人骨から探る
  • 第7講.あらためて「日本人とはなにか」を考える
  • 特別講.古人骨の語る言葉に耳を傾けよう:わが研究ノートから

 本書は、日本人の起源について、旧石器時代人・縄文時代人・弥生時代人・古墳時代人・江戸時代人と著者の片山一道先生ご自身の研究をふまえながら、先人の研究を批判的に検証しながら書かれており、大変、参考になります。これまで出版されている日本人の起源の本では踏み込んでいない部分にまでふれられており、読むと刺激的な表現も含まれています。

 本書では、片山一道先生が実際に研究された、「新方遺跡」(弥生時代)・「四分遺跡」(弥生時代)・「藤ノ木古墳」(古墳時代)・「キトラ古墳」(古墳時代)・「伏見城跡遺跡」(江戸時代)について書かれており、参考になります。特に、「伏見城遺跡」では、630体もの人骨が出土しており、報告書記載や学会発表は行われていますが、なかなか一般的には目にふれないものが本書でまとめられており非常に参考になります。これまでの、日本人の起源に関する本とは異なることを、是非、ご自身で読んでお確かめ下さい。他の類書とは、一味も二味も異なります。一読をおすすめします。

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人類進化の本63.人類の起源論争

2013年07月28日 | E5.人類進化の本[Human Evolution:Jap
人類の起源論争―アクア説はなぜ異端なのか? 人類の起源論争―アクア説はなぜ異端なのか?
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:1999-12

 この本は、イギリスの科学ジャーナリストのエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]さんが、アクア説について書いたものです。このアクア説とは、1960年にイギリスのアリスター・ハーディー(Alister HARDY)[1896-1985]さんが唱え、1972年に作家のエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]さんが一般向けの本を書いたことで有名になった説です。1997年に出版された原題は『The Aquatic Ape Hypothesis』で、直訳すると「水生類人猿仮説」となるでしょうか。1999年に望月弘子さんによる訳で、どうぶつ社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全14章からなります。

  1. 過去の仮説、未来の仮説
  2. 死者からのメッセージ
  3. 二本足で歩く前
  4. 歩くためのエネルギー
  5. 登場したさまざまな仮説
  6. 残された最後の仮説
  7. 裸のサルが誕生したわけ
  8. 体毛の意味
  9. 人がこんなに太るわけ
  10. 汗と涙の物語
  11. 言葉と喉頭
  12. 喋るということ
  13. さらなる論争への九つの課題
  14. アクア説は異端の説か?

 本書は、著者のエレイン・モーガンさんがアクア説について書いた5冊の著書の内、最後の5番目に出版されたものです。

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人類進化の本62.子宮の中のエイリアン

2013年07月27日 | E5.人類進化の本[Human Evolution:Jap
子宮の中のエイリアン―母と子の関係はどう進化してきたか 子宮の中のエイリアン―母と子の関係はどう進化してきたか
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:1998-09

 この本は、イギリスの科学ジャーナリストのエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]さんが、アクア説について書いたものです。このアクア説とは、1960年にイギリスのアリスター・ハーディー(Alister HARDY)[1896-1985]さんが唱え、1972年に作家のエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]さんが一般向けの本を書いたことで有名になった説です。1994年に出版された原題は『The Descent of the Child』で、直訳すると「子供の由来」となるでしょうか。1998年に望月弘子さんによる訳で、どうぶつ社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全25章からなります。

  1. セックスはほんとうに必要か?
  2. 卵子と精子
  3. 何人産むのが適当か?
  4. 反乱
  5. ゆっくりとゆっくりと
  6. ごく初期のこと
  7. 四ヵ月まで
  8. 裸のサル
  9. 性器と乳房
  10. 最初のトラブル
  11. 妥協案
  12. 絶対に必要な準備のこと
  13. 生命力にあふれたチビ
  14. 望まれる子と
  15. 望まれない子どもたち
  16. 生きのびる知恵
  17. 奪う愛と与える愛
  18. それぞれの時代の育て方
  19. 身ぶりや手ぶりの意味すること
  20. なぜ「なぜ?」を繰り返すのか?
  21. 自分の足で歩くとき
  22. 遊び仲間
  23. 過去を読む
  24. 家族の関係
  25. 新時代の子どもたち

 本書は、著者のエレイン・モーガンさんがアクア説について書いた5冊の内、4冊目に出版したものです。

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人類進化の本61.進化の傷あと

2013年07月26日 | E5.人類進化の本[Human Evolution:Jap
進化の傷あと―身体が語る人類の起源 進化の傷あと―身体が語る人類の起源
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:1999-01

 この本は、イギリスの科学ジャーナリストのエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]さんが、アクア説について書いたものです。このアクア説とは、1960年にイギリスのアリスター・ハーディー(Alister HARDY)[1896-1985]さんが唱え、1972年に作家のエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]さんが一般向けの本を書いたことで有名になった説です。1990年に出版された原題は『The Scars of Evolution』で、直訳するとタイトル通り「進化の傷あと」となるでしょう。1999年に望月弘子さんによる訳で、どうぶつ社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全14章からなります。

  1. 人類の出現
  2. 化石の読み方
  3. 直立二足歩行がもたらす悩み
  4. 人はなぜ日本足で歩くようになったのか?
  5. 裸の代償
  6. 人はなぜ体毛を失ったのか?
  7. 汗かきは死の原因
  8. 人はなぜこんなに汗や涙を流すのか?
  9. 太りすぎがもたらすひけめ
  10. 人はなぜこんなに太るのか?
  11. 人だけに特殊な呼吸システム
  12. 現代のセックス考
  13. 人はやはり海辺で生まれた
  14. 最新科学の新証拠

 本書は、エレイン・モーガンさんがアクア説について書いた5冊の内、3冊目に出版された本です。

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人類進化の本60.人は海辺で進化した

2013年07月25日 | E5.人類進化の本[Human Evolution:Jap

人は海辺で進化した―人類進化の新理論 人は海辺で進化した―人類進化の新理論
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:1998-03

 この本は、イギリスの科学ジャーナリストのエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]さんが、アクア説について書いたものです。このアクア説とは、1960年にイギリスのアリスター・ハーディー(Alister HARDY)[1896-1985]さんが唱え、1972年に作家のエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]さんが一般向けの本を書いたことで有名になった説です。1982年に出版された原題は『The Aquatic Ape』で、直訳すると「水生類人猿」となるでしょうか。1998年に望月弘子さんによる訳で、どうぶつ社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全12章からなります。

  1. 人類の出現
  2. 体毛
  3. 皮下脂肪
  4. 二足歩行
  5. 性交
  6. 泳ぎと潜水
  7. 泳ぐ赤ん坊
  8. 言葉
  9. 統合をめざして
  10. いつ、どこで、それは起こったか?
  11. ダナキル島

 この他、巻末には、アリスター・ハーディーさんが発表した3つの短い論考が再掲載されています。これは、一読に値します。

  • 補章1.3つの論文
  • 補章2.人間におけるネオテニー現象
  • 補章3.ゾウについて

 本書は、エレイン・モーガンさんがアクア説について発表した5冊の内の2番目に出版した本です。

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人類進化の本59.女の由来

2013年07月24日 | E5.人類進化の本[Human Evolution:Jap
女の由来―もう1つの人類進化論 女の由来―もう1つの人類進化論
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:1997-12

 この本は、イギリスの科学ジャーナリストのエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]さんが、アクア説について書いたものです。このアクア説とは、1960年にイギリスのアリスター・ハーディー(Alister HARDY)[1896-1985]さんが唱え、1972年に作家のエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]さんが一般向けの本を書いたことで有名になった説です。原題は『The Descent of Woman』で、直訳するとタイトル通り「女の由来」となるでしょう。この原題は、進化論で著名なチャールズ・ダーウィン(Charles DARWIN)[1809-1882]さんが1871年に出版した「ヒトの由来」の原題『Descent of Man』にちなんだものだと推定されます。1997年に望月弘子さんによる訳で、どうぶつ社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全11章からなります。

  1. 男によってつくられた神話
  2. 変身
  3. 海辺にて
  4. オルガスム
  5. 言葉
  6. Uターン
  7. 狩人
  8. 女性と政治
  9. 女性と子ども
  10. 男との未来について

 本書は、エレイン・モーガンさんがアクア説について書いた5冊の著書の内、最初に出版されたもので、著者の意気込みが伝わってきます。なお、本書は、1972年に中山善之さんによる訳で『女の由来』として二見書房から出版されているそうです。

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人類進化理論3.アクア説:エレイン・モーガンの説

2013年07月23日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

 アクア説は、別名アクア・エイプ説あるいは水生類人猿説とも呼ばれます。この学説は、ドイツのマックス・ヴェシュテンヘーファー(Max WESTENHOFER)[1871-1957]が1942年に唱え、1960年にイギリスのアリスター・ハーディー(Alister HARDY)[1896-1985]が唱え、1972年に作家のエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]が一般向けの本を書いたことで有名になった説です。

 このアクア説は、初期人類の段階で海や川で進化したというものです。

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エレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]

(経歴)

 エレイン・モーガンは、1920年11月7日に、イギリスのウェールズ、ホプキンズタウンでエレイン・フロイドとして生まれました。やがて、オックスフォード大学に進学し、英文学を専攻して卒業します。1945年に、モリエン・モーガン(Morien MORGAN)と結婚し、名前がエレイン・モーガンになりました。

 モーガンは、1950年代にテレビドラマの台本や新聞のコラム等を執筆します。やがて、モーガンはアクア説に気付き、デズモンド・モリス(Desmond MORRIS)を通じて、アリスター・ハーディー(Alister HARDY)[1896-1985]を紹介してもらいました。モーガンにとって幸いだったことは、アリスター・ハーディーが自分と同じ大学出身だったことでしょう。やがて、モーガンは1972年から1997年にかけて5冊の本を執筆します。ハーディーがアクア説についてわずか3つしか論考を残さなかったのに対し、モーガンは人類進化について勉強しながらさらにアクア説を補強していきました。

 モーガンは、2006年にイギリスのグラモーガン大学から名誉文学博士号を授与されました。長年の功績に対してでしょう。しかし、2013年7月12日に92歳で死去しました。後半の人生は、アクア説の普及と補強に徹したと言えるでしょう。

(学説)

 アクア説については、当初、アリスター・ハーディーが自分の考えを本にまとめるということでしたが、とうとうハーディーは本を執筆しませんでした。そこで、エレイン・モーガンは、自身でハーディーの説を補強することができる論文を多く読み、その成果を以下の5冊の本にまとめています。 

 モーガンは多くの本を書いていますが、アクア説について言及したものは以下の5冊で、すべて和訳されどうぶつ社から刊行されています。

  • Morgan(1972)『The Descent of Woman』[『女の由来』(1997)]
  • Morgan(1982)『The Aquatic Ape』[『人は海辺で進化した』(1998)]
  • Morgan(1990)『The Scars of Evolution』[『進化の傷あと』(1999)]
  • Morgan(1995)『The Descent of the Child』[『子宮の中のエイリアン』(1998)]
  • Morgan(1997)『The Aquatic Ape Hypothesis』[『人類の起源論争』(1999)]

 ここまでまとめたエレイン・モーガンの功績は大きく、アクア説は、確かにその入口はマックス・ヴェシュテンヘーファーやアリスター・ハーディーでしたが、さらに深く論考したのはエレイン・モーガンでした。個人的には、アクア説はモーガンの説と呼んでもいいのではないかと思います。

女の由来―もう1つの人類進化論 女の由来―もう1つの人類進化論
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:1997-12

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モーガン(1997)『女の由来』表紙

人は海辺で進化した―人類進化の新理論 人は海辺で進化した―人類進化の新理論
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:1998-03

Morgan1998

モーガン(1998)『人は海辺で進化した』表紙

進化の傷あと―身体が語る人類の起源 進化の傷あと―身体が語る人類の起源
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:1999-01

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モーガン(1999)『進化の傷あと』表紙

子宮の中のエイリアン―母と子の関係はどう進化してきたか 子宮の中のエイリアン―母と子の関係はどう進化してきたか
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:1998-09

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モーガン(1998)『子宮の中のエイリアン』表紙

人類の起源論争―アクア説はなぜ異端なのか? 人類の起源論争―アクア説はなぜ異端なのか?
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:1999-12

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モーガン(1999)『人類の起源論争』表紙


人類進化理論2.アクア説2:アリスター・ハーディーの説

2013年07月22日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

 アクア説は、別名アクア・エイプ説あるいは水生類人猿説とも呼ばれます。この学説は、ドイツのマックス・ヴェシュテンヘーファー(Max WESTENHOFER)[1871-1957]が1942年に唱え、1960年にイギリスのアリスター・ハーディー(Alister HARDY)[1896-1985]が唱え、1972年に作家のエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]が一般向けの本を書いたことで有名になった説です。

 このアクア説は、初期人類の段階で海や川で進化したというものです。

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アリスター・ハーディー(Alister HARDY)[1896-1985]

(経歴)

 アリスター・ハーディーは、1896年2月10日に、イギリスのノッティンガムにて生まれました。1914年に、ハーディーはオックスフォード大学に進学するはずでしたが、第1次世界大戦の勃発により、志願して陸軍に入隊します。

 その後、ハーディーはオックスフォード大学で動物学を学び、1928年にハル大学の動物学教授に就任しました。また、1942年にアバディーン大学で自然史の教授に就任します。1946年、ハーディーは母校・オックスフォード大学で動物学の教授に就任し、引退する1961年までその地位に留まりました。ハーディーの専門は、海洋生物学です。

 1940年には王立協会会員に、1957年にはナイトを授与されています。ハーディーは、1985年5月22日に89歳で死去しました。

(理論)

 ハーディーが、アクア説に気付いたのは1930年だと言われています。その時、フレデリック・ウッド・ジョーンズ(Frederic Wood Jones)[1873-1954]が1929年に出版した『Man's Place Among the Mammals』(哺乳類としてのヒトの位置)を読んでいて、アクア説に気付いたそうです。しかし、ハーディーはその説を30年間もあたためてあえて発表しませんでした。それは、周りの人間が止めたからだそうです。これが本当だとすると、1942年にマックス・ヴェシュテンヘーファー(Max WESTENHOFER)[1871-1957]が発表した時よりも前に気付いていたことになります。つまり、二人は独立でこのアクア説に辿りついたということでしょう。

 ハーディーは、これまで、アクア説について1960年から1977年にかけて3つの論考を残しています。1960年に、「ニュー・サイエンティスト」誌の第7巻に発表しました。この論考は、エレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]の『人は海辺で進化した』(どうぶつ社1998年)に転載されています。

・陸上で進化した哺乳類の内、クジラ・イルカ・ネズミイルカ等は再び海に戻っていった。類人猿の仲間でも、木の上から追われて海岸や浅瀬で貝・甲殻類・ウニ等を食べるようになったものがいたのではないか。その場所は、熱帯地方の海だと推定される。この事は、人間の例外的とも言える水泳能力が示している。

・人間が体毛を失っていることは、クジラ・ジュゴン・マナティー・カバ等暖かい地方に生息する水生哺乳類の特徴である。これは、泳ぐときに抵抗を少なくするためと考えられる。人間の頭部に毛が残っているのは、泳ぐ時に自ら出ているため、熱帯の太陽から保護するためであろう。

・人間の体は流線型であるが、皮下脂肪層が発達しているためである。類人猿と異なり、人間の皮下脂肪層は皮膚にしっかりとはりついている。これは、体毛が少ない事と関係があると推定される。この皮下脂肪層は毛皮の代替物で、これにより広範囲の気温変化に耐えられる。

・人間の直立二足歩行は、水底に足をつけて立っている姿勢で獲得された。ただ、一日の内半分以上は陸上で過ごしたと考えている。人間は直立二足歩行をするため、類人猿のように手を使って体重を支える必要がないため、手は原始的な構造のままである。

・人間の道具の製作は、ラッコのように、石を使ってウニの殻を砕き、甲殻類の殻を割っていた事から始まった。

・人類進化の中での化石人類の空白は、海で生活していたため、海の生き物に食べ尽くされたために化石が発見されない。いずれ、熱帯の海岸近くの鮮新世の堆積物からミッシング・リンク(失われた環)が発見されるだろう。 


人類進化理論1.アクア説1:マックス・ヴェシュテンヘーファーの説

2013年07月21日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

 アクア説は、別名アクア・エイプ説あるいは水生類人猿説とも呼ばれます。この学説は、ドイツのマックス・ヴェシュテンヘーファー(Max WESTENHOFER)[1871-1957]が1942年に唱え、1960年にイギリスのアリスター・ハーディー(Alister HARDY)[1896-1985]が唱え、1972年に作家のエレイン・モーガン(Elaine MORGAN)[1920-2013]が一般向けの本を書いたことで有名になった説です。

 このアクア説は、初期人類の段階で海や川で進化したというものです。

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マックス・ヴェシュテンヘーファー(Max WESTENHOFER)[1871-1957]

(経歴)

 マックス・ヴェシュテンヘーファーは、1871年2月9日にドイツのニュールンベルグ近郊のアンスバッハで生まれました。やがて、ベルリン大学に入学し、著名な病理学者兼人類学者のルドルフ・ウィルヒョウ(Rudolf VIRCHOW)[1821-1902]に学び、1894年に卒業します。その後、1908年に南米のチリ大学医学部で病理学を教える機会があり、1911年までその地位に留まりました。この時、チリ政府はかなりの高額な報酬を払ったと言われています。ところが、1911年にチリの劣悪な健康状態や公衆衛生についてドイツの医学誌に論文を発表したため、チリから国外退去の宣告を受けました。

 1911年にドイツに帰国すると陸軍で働き、1914年から1918年の第一次世界大戦では陸軍少佐として鉄十字勲章も受章しました。戦後、1922年、母校のベルリン大学の病理学教授に就任します。1929年には、再びチリに赴き、チリ大学医学部の病理学教授として活躍しました。チリ滞在中は、梅毒の研究も行っています。

 1932年にドイツに帰国すると、一線からは引退します。その後、1939年から1945年の第二次世界大戦はヨーロッパを戦渦に巻き込みました。しかし、この時代に、ヴェシュテンヘーファーは次々と人類進化に関する本や論文を発表します。人類学への興味は、恐らく、ベルリン大学での師のルドルフ・ウィルヒョウの影響を受けたのでしょう。ところが、第二次世界大戦中に子供3人の内、2人までもが死亡してしまいます。

 第二次世界大戦後の1948年、三度チリに渡り、病理学アドヴァイザーに就任します。1957年9月25日、ヴェシュテンヘーファーは、第二の故郷とも呼んだチリで86歳で死去しました。

(理論)

 マックス・ヴェシュテンヘーファーは、1942年に『Der Eigenweg des Menschen』を出版しました。この本で、以下のように記載しています。

・人類の骨や内臓の構造は、樹上に適応した霊長類よりも哺乳類の原型に近い。恐らく、両生類のサンショウウオに近いと思われる。

・人類の耳の構造は、地中や水中に適応した哺乳類に似ており、特に水中生活をしているものに似ている。

・人類の脾臓や腎臓の構造は、クジラ・イルカ・アザラシ・ラッコ・クマに似ている。


子供向け・人類進化の本23.人類の誕生

2013年07月20日 | E8.子供向けの本:人類進化[Human Evol

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人類の誕生 (小学館の学習百科図鑑)
価格:¥ 1,407(税込)
発売日:1986-03

 この本は、元京都大学霊長類研究所の岩本光雄さんが子供向けに書いた人類進化の本です。岩本光雄さんによる編著により、1986年に、「小学館の学習百科図鑑48」として、小学館から出版されました。私は、本書で絵を描かれていた柳 柊二[1927-2003]先生に寄贈していただきました。

 本書の内容は、以下のように、全8章からなります。

  1. いろいろなサル
  2. サルとヒト
  3. むかしのサル
  4. 猿人
  5. 原人
  6. 旧人
  7. 新人
  8. 化石人類発掘物語

 第8章の化石人類発掘物語は、多くの子供向けの本を書いている「たかしよいち」さんが執筆協力をしています。本書は、人類進化の様々な場面が復元画や写真で再現されており、大変、参考になります。大人が読んでも参考になる良書です。ただ、現在は、出版当時の1986年よりも多くの人類化石が発見されている点に注意が必要です。


季刊・人類学4.第1巻第4号

2013年07月19日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Qanthro14

 『季刊・人類学』は、1970年から1989年にかけて、京都大学人類学研究会により、季刊(1月・4月・7月・10月)として毎年4冊刊行されていた雑誌です。第1巻から第20巻まで、当初は社会思想社から、途中から講談社により出版されました。内容は、文化人類学・民俗学・民族学・自然人類学・考古学と、人類学のあらゆる分野が包括的に掲載されていたものです。

 『季刊・人類学』第1巻第4号は、1970年10月30日に社会思想社から刊行されました。アマゾンで検索しましたが、ヒットしませんでしたのでリンクさせていません。

 本号の内容は、以下の通りです。

統辞類型論:日本語の位置づけについて(和田祐一)

現代諸言語の類型的とらえ方(和田祐一)

イセエビとはしか:民族薬学へのアプローチ(吉田集而)

  • コメント(藤岡喜愛)

日本における茶の系譜(松下 智)

  • コメント(佐々木高明)

もの:白老アイヌの社会生活慣習について(田畑アキ述・藤村久和注)

研究室めぐり4:上智大学史学研究室(有馬真喜子)

ひと:横田健一氏(馬場 功)

ひと:日野舜也氏(有馬真喜子)

人類学者列伝3:アルフレッド・クローバー(松園万亀雄)

タム・タム

縦横人類学(三川目四)

  • コメント(梅棹忠夫)

北カルメン・ヒデ族の飲酒と諸行事(江口一久)

イタリアの山の村から(谷 泰)


季刊・人類学3.第1巻第3号

2013年07月18日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Qanthro13

 『季刊・人類学』は、1970年から1989年にかけて、京都大学人類学研究会により、季刊(1月・4月・7月・10月)として毎年4冊刊行されていた雑誌です。第1巻から第20巻まで、当初は社会思想社から、途中から講談社により出版されました。内容は、文化人類学・民俗学・民族学・自然人類学・考古学と、人類学のあらゆる分野が包括的に掲載されていたものです。

 『季刊・人類学』第1巻第3号は、1970年7月30日に社会思想社から刊行されました。アマゾンで検索しましたが、ヒットしませんでしたのでリンクさせていません。

 本号の内容は、以下の通りです。

アンチ・ホモ・ファーベル:アリになったサルの話(小泉英雄)

  • コメント1(藤岡喜愛)
  • コメント2(鈴木 晃)

「アンチ・ホモ・ファーベル:アリになったサルの話」へのコメント(坂上昭一)

台所文化の比較研究(石毛直道)

  • コメント(梅棹忠夫)

もの:焼畑農耕民のウキとなれずし」(松原正毅)

研究室めぐり3「天理大学おやさと研究所」(有馬真喜子)

伝染病の生態(桑原治雄)

  • コメント(梅棹忠夫)

人類学者列伝2:ルース・ベネディクト:その生涯と学説(米山俊直)

ほん:オスカー・ルイスの「貧困の文化」について(高山智博)

ひと:窪 徳忠氏(有馬真喜子)

ひと:別府春海氏(馬場 功)

タム・タム

フィジーの民族音楽をたずねて(成沢玲子)

アフリカの言語調査より帰って(江口一久)


季刊・人類学2.第1巻第2号

2013年07月17日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Qanthro12

 『季刊・人類学』は、1970年から1989年にかけて、京都大学人類学研究会により、季刊(1月・4月・7月・10月)として毎年4冊刊行されていた雑誌です。第1巻から第20巻まで、当初は社会思想社から、途中から講談社により出版されました。内容は、文化人類学・民俗学・民族学・自然人類学・考古学と、人類学のあらゆる分野が包括的に掲載されていたものです。

 『季刊・人類学』第1巻第2号は、1970年4月30日に社会思想社から刊行されました。アマゾンで検索しましたが、ヒットしませんでしたのでリンクさせていません。

 本号の内容は、以下の通りです。

聖と俗とのコミュニケーション(谷 泰)

  • コメント(藤岡喜愛)

タイにおける「モチ稲栽培圏」の成立(渡部忠世)

  • コメント(中尾佐助)

カセダウチ小論:南九州の小正月来訪神(小野重朗)

  • コメント(佐々木高明)

「機械化人類学」の妄想(小松左京)

  • コメント(梅棹忠夫)

もの:子ウシのくちがせとラクダのブラジャー(石毛直道)

シェルパ族の食生活を探る(柳本治美)

  • コメント(梅棹忠夫)

研究室めぐり2:京都大学霊長類研究所(有馬真喜子)

ニューギニア高地民におけるleadershipとその背景:Chimbu地方(畑中幸子)

  • コメント(編集部)

ひと:平山敏治郎氏(馬場 功)

ひと:原 ひろ子さん(有馬真喜子)

タム・タム

パキスタン・インドの旅行から(加藤秀俊)

ニュージーランドにおける人類学教育(石森秀三)