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人類学のススメ

人類学の世界をご紹介します。OCNの「人類学のすすめ」から、サービス終了に伴い2014年11月から移動しました。

古病理学の洋書20.農耕の起源時の古病理

2010年05月31日 | J2.古病理学の洋書[Palaeopathology:F

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Paleopathology at the Origins of Agriculture
価格:¥ 9,974(税込)
発売日:1984-09

 この本は、ニューヨーク州立大学のマーク・コーヘン(Mark Nathan COHEN)さんとマサチューセッツ大学のジョージ・アーメラゴス(George J. ARMELAGOS)さんによる編で、農耕の起源時の古病理学について書かれたものです。原題は、『Paleopathology at the Origins of Agriculture』で、直訳すると、「農耕の起源時の古病理」となるでしょうか。1984年に、アカデミック・プレス社(Academic Press)から出版されました。

 本書は、1982年にウェンナー・グレン財団のスポンサーで開催されたシンポジウムが元になっています。私は、出版時にアメリカに留学しており、この本は教科書に指定された3冊の内の1冊でした。値段が、かなり高かったという記憶がありましたが、大学で割引もあって$59で購入したようです。当時の価値で、約1万円ぐらいでしょうか?

 本書の内容は、以下のように、23編の論文が掲載されています。

  1. An Introduction to the Symposium(Mark Nathan COHEN)
  2. Indications of Stress from Bone and Teeth(Alan H. GOODMAN・Debra L. MARTIN・George J. ARMELAGOS・George CLARK)
  3. Health as a Crucial Factor in the Changes from Hunting to Develped Farming in the Eastern Mediterranean (J. Lawrence ANGEL)
  4. Socioeconomic Change and Patterns of Pathology and Variation in the Mesolithic and Neolithic of Western Europe: Some Suggestion (Christopher MEIKLEJOHN ・Catherine SCHENTAG・Alexandra VENEMA・Patrick KEY)
  5. Archaeological and Skeletal Evidence for Dietary Change during the Late Pleistocene/Early Holocene in the Levant (Patricia SMITH・Ofer BAR-YOSEF・Andrew SILLEN)
  6. Skeletal Pathology from the Paleolithic through the Metal Ages in Iran and Iraq (Ted A. RATHBUN)
  7. Growth, Nutrition, and Pathology in Changing Paleodemographic Settings in South Asia (Kenneth A. R. KENNEDY)
  8. The Effects of Socioeconomic Change in Prehistoric Africa: Sudanese Nubia as a Case Study (Debra L. MARTIN・George J. ARMELAGOS・Alan H. GOODMAN・Dennis P. Van Gerven)
  9. The Lower Illinois River Region: A Prehistoric Context for the Study of Ancient Diet and Health (Jane E. BUIKSTRA)
  10. Subsistence and Health in the Lower Illinois Valley: Osteological Evidence (Della Collins COOK)
  11. Health Changes at Dickson Mounds, Illinois (A.D.950-1300)(Alan H. GOODMAN・ John LALLO・George J. ARMELAGOS・Jerome C. ROSE)
  12. Skeletal Evidence for Prehistoric Subsistence Adaptation in the Central Ohio River Valley (Claire Monod CASSIDY)
  13. Prehistoricc Health in the Ohio River Valley (Anthony J. PERZIGIAN・Patricia A. TENCH・Donna J. BRAUN)
  14. Health and Disease in Prehistoric Georgia: The Transition to Agriculture (Clark Spencer LARSEN)
  15. Paleopathology and the Origins of Maize Agriculture in the Lower Mississippi Valley and Caddoan Culture Areas (Jerome C. ROSE・Barbara A. BURNETT・Michael S. NASSANEY・Mark W. BLAEUER)
  16. Agriculture, Marginal Environments, and Nutritional Stress in the Prehistoric Southwest (Ann M. PALKOVICH)
  17. Central California: Prehistoric Subsistence Changes and Health (David N. DICKEL・Peter D. SCHULZ・Henry M. McHenry)
  18. Prehistoric Subsistence and Health Status of Coastal Peoples from the Panamanian Isthmus of Lower Central America (Lynette NORR)
  19. Prehistoric Human Biology of Ecuador: Possible Temporal Trends and Cultural Correlations (D. H. UBELAKER)
  20. Paleopathology in Peruvian and Chilean Populations (Marvin J. ALLISON)
  21. The Challenges and Rewards of Sedentism: The Preceramic Village of Paloma, Peru (Robert A. Benfer)
  22. Population, Health, and the Evolution of Subsistence: Conclusions from the Conference (Anna Curtenius ROOSEVELT)
  23. Paleopathology at the Origins of Agriculture: Editor's Summation (Mark Nathan COHEN & George J. ARMELAGOS)

 これらの中で、エリザベスマウンドを含めた、イリノイ州下部のマウンド群に関する論文は、9・10・11・15になります。以下に、ジェーン・バイクストラ(Jane BUIKSTRA)先生の論文から、マウンドの模式図を示します。

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ウッドランド中期のマウンドの構造[本書p.220:Buikstra(1984)より]


私の仕事:発掘調査・エリザベスマウンド1(ノースウェスタン大学とコスター遺跡)

2010年05月30日 | D2.私の仕事:発掘調査・エリザベスマウ

 エリザベスマウンドは、アメリカのイリノイ州パイク郡に所在します。私は、このエリザベスマウンド7号の発掘調査に参加する機会に恵まれました。それは、1985年にノースウェスタン大学第18回サマー・フィールド・スクール(夏期野外実習)に登録して参加したからです。

 アメリカの大学では、夏期に、ほとんどの大学で様々な分野のサマー・スクールを開講しており、単位を取得することが可能です。大学卒業の条件は、卒業に必要な単位を取得することなので、夏期にも単位を取得すれば、それだけ早く卒業することも可能になります。また、基本的に大学間の単位は相互認定されるので、他流試合として、別の大学のサマースクールに参加することが多いようです。

 ノースウェスタン大学(Northwestern University)は、1851年に創立されており、イリノイ州シカゴ郊外の北部にあるエヴァンストン(Evanston)に所在する私立の名門校です。日本でも有名なシカゴ大学は、1890年に創立されているので、それよりも古い大学ということになります。実際、ノースウェスタン大学の学生は、アメリカ中西部のハーヴァード大学だと呼んでいました。

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エリザベスマウンド1.ミシシッピー川遠景

 サマー・フィールド・スクールは、イリノイ州南西部のカフーン郡(Calhoun County)キャンプスヴィル(Kampsville)にある、アメリカ考古学センター(Center for American Archeology)で行われました。このセンターは、1953年に創立されています。近くには、ミシシッピー川やイリノイ川が流れており、遺跡の密度は濃く、キャンプスヴィルから車で1時間以内の同心円部には約2,500の遺跡があるそうです。この地域にはマウンド(古墳)が多く、エジプトのナイル川にかけて、北アメリカのナイルと呼ばれています。

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エリザベスマウンド2.イリノイ川遠景

 このキャンプスヴィルは、当時の人口は約400人で、2000年の人口統計では350人だそうです。この村は、蒸気船がイリノイ川を走っていた時代には、渡船場として栄えたそうです。今でも、イリノイ州交通局により、イリノイ川の渡しを行っています。ありがたいことに、この渡船場は、年中無休でかつ24時間開いており、しかも無料です。私も、何度も使わせていただきました。

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エリザベスマウンド3.イリノイ川の渡船場。対岸がキャンプスヴィル。

 センターは、コスター遺跡の発掘調査で大変、有名になりました。ちなみに、遺跡の名前は土地の持ち主のセオドア・コスター(Theodore KOSTER)さんにちなんでいるそうです。このコスター遺跡は、1968年から1979年に、ノースウェスタン大学が発掘調査を行い、26の文化層が発見されました。その中でも、約6,600年前・約5,000年前・約3,300年前の3期に、集落が形成されています。また、約5,000年前のイヌの骨も発見されており、これは、北米でも最古級だそうです。

 遺跡は、調査終了後、埋め戻されており、遺跡自体を見学することはできませんが、出土遺物は博物館で見ることができます。

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エリザベスマウンド4.コスター遺跡発掘風景(『KOSTER』より)

 ちなみに、私は、渡米する前にこのコスター遺跡についてある程度の知識を得ていました。それは、このコスター遺跡の発掘調査を指揮したノースウェスタン大学の考古学者、スチュアート・ストリューヴァー(Stuart STRUEVER)教授とフリー・ジャーナリストのフェリシア・アントネッリ・ホルトン(Felicia  Antonelli HOLTON)さんが書いた、『KOSTER』という本を読んでいたからです。この本は、1979年に、Anchor Pressから出版されています。今、手元にある本を見ると、1982年4月16日に、お茶の水の丸善で購入と書いています。かすかな記憶を辿ると、安売りのワゴンにあったものの中から、表紙に人骨があったので選んで購入したようです。

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エリザベスマウンド5.『KOSTER』表紙

 ストリューヴァー教授は、1931年に生まれ、ダートマス大学卒業後、シカゴ大学大学院で有名な民族考古学者のルイス・ビンフォードさん(Lewin BINFORD)[1930-]の指導を受けています。指導教官は、わずか1歳年上です。1950年代から1960年代の当時、シカゴ大学では、「ニュー・アーケオロジー(新しい考古学)」という考えに基づいて、科学を考古学に積極的に応用する動きが盛んでした。これは、スプートニク・ショックに伴うそうです。ビンフォードさんは、1962年に「人類学としての考古学」という論文を書いており、事実のみを追求するのではなく説明をすべきであると説きました。興味深いことに、ビンフォードさんは、元々は生物学者だったそうで、民族考古学を創始したきっかけは、沖縄に6年間滞在したことだそうです。

 実際、このセンターでは、村にある39の建物を買い取り、石器・土器・植物・地質・自然人類学・コンピューター・博物館等に使用しています。私は、当時、オレゴン大学に留学していましたが、恐らく約30の大学に手紙を送り、人骨が発掘できるフィールド・スクールを探しました。その結果、このノースウェスタン大学に行き着いたわけです。実際、多くの人類学者からは、このノースウェスタン大学のサマー・フィールド・スクールが全米一であると推薦してくれました。

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エリザベスマウンド6.ストリューヴァー教授(『KOSTER』より)

 私は、まだ本でしか知らないストリューヴァー教授に会えることを楽しみに、オレゴンからイリノイ州に向けて車で出発しました。 


人類進化の本39.イラスト・ガイド私たちヒトの進化

2010年05月29日 | E5.人類進化の本[Human Evolution:Jap

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イラスト・ガイド 私たちヒトの進化
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2000-02

Human Evolution: An Illustrated Guide Human Evolution: An Illustrated Guide
価格:¥ 2,640(税込)
発売日:1989-09-29

 この本は、ロンドン自然史博物館(大英自然史博物館)の古霊長類学者、ピーター・アンドリュース(Peter ANDREWS)さんと古人類学者、クリス・ストリンガー(Chris STRINGER)さんが、動物画家のモーリス・ウィルソン(Mourice WILSON)[1914-1987]さんによる挿絵を使って、人類進化について解説したものです。原書は、1989年にロンドン自然史博物館から出版された、『Human Evolution: An Illustrated Guide』です。2000年に、東京大学名誉教授の遠藤萬里先生による翻訳で、てらぺいあから出版されました。

 本書の内容は、以下の通りです。

  • エジプトの原ホミノイド:エジプトピテクス
  • アフリカの森林の原ホミノイド:デンドロピテクス
  • 最初の真のホミノイド:プロコンスル
  • 太陽のホミノイド:ヘリオピテクス
  • ヨーロッパの森林のホミノイド:ドリオピテクス
  • 湿地のホミノイド:オレオピテクス
  • エナメル質の厚いホミノイド:シヴァピテクス
  • アファールの南ホミノイド:アウストラロピテクス・アファレンシス
  • アフリカの南ホミノイド:アウストラロピテクス・アフリカヌス
  • 頑丈な人もどき:パラントロプス
  • 器用な人=ホモ・ハビリスとホモ・ルドルフェンシス
  • 氷河時代の夜明けの人々
  • ペキン人とホモ・エレクトゥスの進化
  • ホモ・エレクトゥスの進化
  • ホモ・エレクトゥスの子孫たち
  • スウォンズクムとヨーロッパの人類進化
  • ネアンデルタールの人々:ホモ・ネアンデルタレンシス
  • クヨマニョンの人々:ホモ・サピエンス

 本書出版後に、多くの化石人類が発見されており、かなり、人類進化の考え方も変わっていますが、イラストと共に概要を知るのには良いかもしれません。なお、モーリス・ウィルソンさんは、イギリスで有名な動物画家で、人類学の分野では、元オックスフォード大学教授のウィルフリッド・ル・グロ・クラーク(Wilfrid Le Gros CLARK)[1895-1971]さんと組んで、挿絵を多く描いています。


古病理学の洋書・古典1.病気の古さ

2010年05月28日 | J3.古病理学の洋書:古典[Palaeopathol
The Antiquity of Disease The Antiquity of Disease
価格:¥ 1,972(税込)
発売日:2010-01

 この本は、ロイ・ムーディー(Roy L. MOODIE)[1884-1934]が、古病理学について書いたものです。ムーディーは、アメリカにおける最初の古病理学者だと言われています。オリジナル版は、1923年に、シカゴ大学出版から出版されました。私は、古本屋で購入しましたが、最近、リプリント版が出版されたようです。

 このロイ・ムーディーは、イリノイ大学解剖学教授や南カリフォルニア大学歯学部解剖学教授等を歴任しています。シカゴ大学でサミュエル・ウェンデル・ウィリストン(Samuel Wendell WILLISTON)[1851-1918]の元で古生物学を学んでおり、この本も、ウィリストンに捧げられています。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  1. 古病理学
  2. 古代のバクテリアと病気の始まり
  3. 骨の古さの古生物学的証拠
  4. 化石の古病理の確かな事例
  5. 化石人類の病気と受傷と外科の始まり
  6. 原始的な外科手術
  7. 原始的人類の古病理

 著者のムーディーは、人類の古病理よりも、古生物の古病理を多く記載したことで有名です。実際、南カリフォルニア大学に移籍してからは、カリフォルニア州ロサンゼルスのラ・ブレア遺跡出土哺乳類化石の古病理を多く記載しています。この、ラ・ブレア遺跡は、タール・ピットで、水を求めて来た動物・肉食獣に追われた草食獣・草食獣を襲った肉食獣・人類の骨が多く発見されていることで有名です。本書の第2・3・4章も、古生物の古病理について書かれています。

 残念ながら、ムーディーは50歳という若さで他界しています。もう少し長生きすれば、アメリカの古病理学も違った展開を見せたかもしれません。

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『The Antiquity of Disease』表紙(*画像をクリックすると、拡大します。)


私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟21(1984年発掘調査のまとめ)

2010年05月27日 | D1.私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟[

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ドゥアラ洞窟151.ドゥアラ洞窟(Douara Cave)遠景

 ドゥアラ洞窟では、1970年・1974年・1980年・1984年と4次にわたって発掘調査が行われました。この内、1984年発掘調査のまとめは、1987年に、赤澤 威先生と阪口 豊先生の編により、東京大学総合研究博物館紀要の第29号として出版されました。

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ドゥアラ洞窟152.ドゥアラ洞窟(Douara Cave)1984年調査報告書表紙(Bulletin No.29・University Museum・University of Tokyo, 1987)

 この紀要第29号は、東京大学総合研究博物館のホームページで全文が公開されています。以下は、そのリンクです。便利な時代になりました。

リンク:東京大学総合研究博物館公式ホームページ・Bulletin No.29

 本書の内容は、以下のように、全11章からなります。

  1. Paleoenvironments in Palmyra District during the Late Quaternary (Y. SAKAGUCHI)
  2. Thaniyyet Wuker: A Pre-Pottery Neolithic (Sumio FUJII・Takeru AKAZAWA・Yoshihiro NISHIAKI・Hisahiko WADA)
  3. 1984 Excavations at Douara Cave: Methods and Techniques (Takeru AKAZAWA・Tasuku KIMURA・Yukihiro HIRAI・Shuichiro NARASAKI)
  4. Stratigraphy and Sedimentological Analysis of the Douara Cave Deposits, 1984 Excavations (Yukihiro HIRAI)
  5. Middle Paleolithic Assemblages from the Douara Cave, 1984 Excavations (Yoshihiro NISHIAKI)
  6. Lithic Assemblages from the Wadi Fan Deposits at Douara (Yoshito ABE・Yoshihiro NISHIAKI・Takeru AKAZAWA)
  7. Plant Remains from the 1984 Excavations at Douara Cave (Akiko MATSUTANI)
  8. Paleomagnetic Study of the Middle Paleolithic Hearth at Douara Cave (Hideo SAKAI)
  9. Thermoluminescence of Barite Nodules from the Middle Paleolithic Hearth at Douara Cave (Kiyotaka NINAGAWA・Isao YAMAMOTO・Nobusuke TAKAHASHI・Naoki INOUE・Yoshihiko YAMASHITA・Tmononori WADA・Hideo SAKAI)
  10. C14 Dating by Accelerator Mass Spectrometry of Carbonized Plant Remains from a Middle Paleolithic Hearth at Douara Cave, Syria (Koichi KOBAYASHI・Kunio YOSHIDA・Hisao NAGAI・Mineo IMAMURA・Hideki YOSHIKAWA・Hiroshi YAMASHITA・Shohei OKIZAKI・Singo YAGI・Takayuki KOBAYASHI・Masatake HONDA)
  11. The Ecology of the Middle Paleolithic Occupation at Douara Cave, Syria (Takeru AKAZAWA)

 4次にわたる調査で、人骨は出土しませんでした。木村 賛先生と私は、第3章に名前を載せていただきました。

 出土した小型の哺乳類の骨は、フクロウが消化できない毛や骨を吐き出すペレットではないかと推定されています。実際、1984年の発掘では大きな獣骨は出土せず、小さな骨しか出土していません。

 また、イギリスの動物考古学者のセバスチャン・ペイン(Sebastian PAYNE)さんが、1974年の発掘調査で出土した獣骨を1983年にまとめたものでは、イヌの骨ではないかと推定される下顎骨が出土しており、約35,000年前の世界最古のイヌとして話題になりました。

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ドゥアラ洞窟153.ドゥアラ洞窟(Douara Cave)出土イヌ下顎骨(Dog Mandible)[Bulletin 21・University Museum・University of Tokyo, 1983] 

 この紀要第21号は、東京大学総合研究博物館のホームページで全文が公開されています。ドゥアラ洞窟発掘調査の発掘調査報告書パートⅢです。以下は、そのリンクです。 

リンク:東京大学総合研究博物館公式ホームページ・Bulletin No.21

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ドゥアラ洞窟154.ドゥアラ洞窟(Douara Cave)全景

以下は、ドゥアラ洞窟発掘調査の発掘調査報告書パートⅠです。以下は、そのリンクです。

リンク:東京大学総合研究博物館公式ホームページ・Bulletin No.14

以下は、ドゥアラ洞窟発掘調査の発掘調査報告書パートⅡです。以下は、そのリンクです。

リンク:東京大学総合研究博物館公式ホームページ・Bulletin No.16

 この1984年のドゥアラ洞窟の発掘調査は、私にとって初めての海外調査で、大変、参考になりました。人骨は出土しませんでしたが、石器・獣骨・植物・地質等、様々な分野の研究者が共同で調査をする必要性を痛感しました。ただ、個人的には、この調査の後で、アメリカのウィスコンシン大学に留学が決まっていましたが、結局、シリアではビザがとれなかったため、一旦、日本に帰国することになりました。

 海外留学を経験した今では、そのままアメリカに観光ビザで入国し、大学で学生ビザに書き換えてもらえば大丈夫だったとわかりますが、当時は、まだ経験不足でした。その後、赤澤 威先生の計らいで、丁度日本に滞在中だった、オレゴン大学人類学部の考古学者、メルヴィン・エイキンズ(Meivin AIKENS)先生のお世話で、オレゴン大学に留学することができました。エイキンズ先生は、当時、オレゴン大学の人類学部長で、東京のアメリカ大使館まで一緒に行っていただき、手続きをしていただきました。


人類進化の本38.400万年の人類史

2010年05月26日 | E5.人類進化の本[Human Evolution:Jap

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400万年の人類史―ヒトはいかにして地球の主になったか (カッパ・サイエンス)
価格:¥ 725(税込)
発売日:1983-01

 この本は、元朝日新聞社の科学ジャーナリスト・河合信和さんが、人類の進化について書いたものです。1983年に、カッパ・サイエンスとして、光文社から出版されました。現在では、人類の歴史は約700万年前から600万年前までさかのぼりますが、当時は、約400万年と考えられていました。

 本書の内容は、以下のように、全6章からなります。

  1. 二本足で立ったサル:ヒトへの道を歩みはじめた猿人
  2. 火と言語を携え、ヨーロッパへ:氷河期を生き抜いた原人
  3. サピエンス登場す:大自然に抱かれたハンター、旧人
  4. 自然を支配しはじめた新人:きめ細かな適応をとげた知恵
  5. 新大陸に渡った日:処女地への果てしなき夢
  6. 農耕がもたらした光と影:それは人類の「原罪」か?

 本書が、他の人類進化の本と異なるのは、第5章と第6章で、アメリカにおける人類学や考古学の状況を取材にもとづいて書いている点です。同様の内容は、著者の河合信和さんが『科学朝日』にも書いています。私も、学生時代に本書を読み、ずいぶんと影響を受けました。実際、本書の第5章で紹介されている、イリノイ州のキャンプスヴィルで毎年夏に開催されていたノースウェスタン大学のサマー・フィールドスクールに私も参加することになります。


考古学の本2.先史時代の人類

2010年05月25日 | T1.考古学の本[Archaeology]

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先史時代の人類 (1969年) (新潮選書)
価格:¥ 630(税込)
発売日:1969

 この本は、アメリカの考古学者、ロバート・ブレイドウッド(Robert J. BRAIDWOOD[1907-2003]が、世界の先史時代の遺跡や遺物について書いたものです。原題は、『Prehistoric Men』で、初版は1948年にフィールド自然史博物館から出版されています。本書は、第7版を、文化人類学者の泉 靖一[1915-1970]さん・増田義郎さん・大貫良夫さん・松谷敏雄さんの4人で翻訳しています。1969年に、新潮選書として新潮社から出版されました。

 著者のブレイドウッドは、ミシガン州のデトロイトに生まれ、ミシガン大学を卒業後、シカゴ大学大学院を卒業し、引退まで、このシカゴ大学で教鞭をとりました。主に、イラク・イラン・トルコで農耕の起源をテーマに発掘調査を実施しています。また、その調査には、考古学者・農学者・植物学者・動物学者・地質学者等を動員して、総合調査を実施したパイオニアです。さらに、シカゴ大学の同僚で炭素年代測定法を考案し後にノーベル賞を受賞した、ウィラード・リビー(Willard LIBBY)[1908-1980]の影響も受け、年代測定を実施しています。これらは、やがて、シカゴ大学で、ニュー・アーケオロジー(New Archeology)と呼ばれる学派を形成する下地となりました。 

 ちなみに、このブレイドウッドは、アメリカ映画の「インディアナ・ジョーンズ」のモデルあるいはジョーンズの先生のモデルではないかと言われています。映画の中でも、ジョーンズは、シカゴ大学出身で、レイベンウッドに考古学を学んだという設定になっています。

  • 序文
  • 先史時代はどのようにして明らかにされてゆくか
  • 変わりゆく先史時代の世界
  • 先史時代人とは何か
  • 文化のはじまり
  • さらに豊かになる文化
  • 初期の新人たち
  • 終末と前奏曲
  • 最初の革命
  • 文明の征服
  • 先史時代の終幕
  • まとめ

 本書は、出版年が古いのですが、当時のブレイドウッドの考えや、調査の方法等、参考になります。

 


私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟20(アパメア遺跡)

2010年05月24日 | D1.私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟[

 8月25日(土)には、アパメア遺跡を見学しました。この遺跡は、ハマーの北西約55kmに位置する軍事都市跡です。紀元前300年には存在し、一時は、人口約50万人を擁したとも言われています。2世紀頃に建設された、列柱道路は有名です。

 その後、紀元後7世紀には破壊されてしまいますが、やがて十字軍の時代にも重要視された都市でした。しかし、1152年に大地震で破壊し、歴史の舞台から姿を消したそうです。

 以下の写真は、すべて、私が撮影したものです。しかし、この遺跡に関する知識がほとんど無いので写真のみ掲載します。

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ドゥアラ洞窟149.アパメア(Apamea)遺跡遠景

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ドゥアラ洞窟150. アパメア(Apamea)遺跡列柱道路1

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ドゥアラ洞窟151.アパメア(Apamea)遺跡列柱道路2

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ドゥアラ洞窟152. アパメア(Apamea)遺跡列柱道路3

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ドゥアラ洞窟153.アパメア(Apamea)遺跡列柱道路4

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ドゥアラ洞窟154.アパメア(Apamea)遺跡列柱道路5

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ドゥアラ洞窟155.アパメア(Apamea)遺跡現状(1984年時点)


私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟19(ウガリット遺跡)

2010年05月23日 | D1.私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟[

 8月24日には、地中海沿いの都市・ラタキアに近い場所にあるウガリット遺跡を見学しました。このウガリット遺跡は、紀元前1,450年から紀元前1,200年頃の港湾都市遺跡です。しかし、紀元前1,200年頃に、破壊されたそうです。

 遺跡は、1928年に偶然発見され、その後、発掘調査が行われました。この調査で、紀元前1,400年頃のウガリット文字を刻んだ粘土板が発見されています。この文字は、世界最古のアルファベット文字だと言われていますが、異論もあるようです。

 以下の写真は、すべて、私が撮影したものです。ただ、この遺跡に関する知識がほとんどないので、写真のみ掲載します。

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ドゥアラ洞窟142.ウガリット(Ugarit)遺跡1

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ドゥアラ洞窟143.ウガリット(Ugarit)遺跡2

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ドゥアラ洞窟144.ウガリット(Ugarit)遺跡3(宮殿への入口)

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ドゥアラ洞窟145.ウガリット(Ugarit)遺跡4

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ドゥアラ洞窟146.ウガリット(Ugarit)遺跡5

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ドゥアラ洞窟147.ウガリット(Ugarit)遺跡6

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ドゥアラ洞窟148.ウガリット(Ugarit)遺跡7


私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟18(エブラ遺跡)

2010年05月22日 | D1.私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟[

 ドゥアラ洞窟の発掘調査も無事に終了し、エクスカーション(巡検)に出発することになりました。全員で、1984年8月19(日)から8月25日(土)まで、チャーターした小型バスで、シリア北部の第2の都市アレッポ等の遺跡を見学する予定です。

 私は、この調査の後でアメリカのウィスコンシン大学に留学することが決まっていたのですが、何度ダマスカスのアメリカ大使館に通っても入国ビザの申請が通りません。そこで、私は皆とは別行動でダマスカスに行き、ビザの申請をすることになりました。シリアには日本赤軍が潜伏しているとのことで、日本人にはビザを出さないということは後で知りました。結局、私は、8月22日(水)の夜に、アレッポで合流することができました。

 8月24日(金)に、全員でエブラ遺跡を見学しました。この遺跡は、アレッポから南西約55kmに位置する遺跡で、紀元前2,400年から紀元前2,240年及び紀元前1,800年から紀元前1,650年の都市国家跡です。紀元前2,250年頃の楔形文字が刻まれた粘土板が約15,000枚も発見されていることで有名です。ちなみに、「エブラ」とは、石灰岩を意味するそうです。

 この遺跡は、紀元前2,240年頃と紀元前1,650年から1,600年の2回破壊され、その後、歴史の舞台から姿を消しました。

 以下の写真は、すべて、私が撮影したものです。ただ、この遺跡についてはほとんど知識がないので、解説することができません。写真のみ、掲載します。 

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ドゥアラ洞窟134.エブラ(Ebla)遺跡1

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ドゥアラ洞窟135.エブラ(Ebla)遺跡2

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ドゥアラ洞窟136.エブラ(Ebla)遺跡3

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ドゥアラ洞窟137.エブラ(Ebla)遺跡4

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ドゥアラ洞窟138.エブラ(Ebla)遺跡5

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ドゥアラ洞窟139.エブラ(Ebla)遺跡6

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ドゥアラ洞窟140.エブラ(Ebla)遺跡7

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ドゥアラ洞窟141.エブラ(Ebla)遺跡8


人類進化の洋書25.ネアンデルタール人の埋葬・シリアアフリンのデデリエ洞窟の発掘調査

2010年05月21日 | E6.人類進化の洋書[Human Evolution:F

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『Neanderthal Burials』表紙(*画像をクリックすると、拡大します。)

 この本は、国際日本文化研究センター(当時、現高知工科大学)の赤澤 威先生とダマスカス大学のスルタン・ムヘセン(Sultan MUHESEN)さんによる編集で、シリアのネアンデルタール人の遺跡デデリエ洞窟について書かれたものです。原題は、『Neanderthal Burials: Excavations of the Dederiyeh Cave Afrin, Syria』で、直訳すると、「ネアンデルタール人の埋葬:シリア・アフリンのデデリエ洞窟の発掘調査」となります。2002年に、国際日本文化研究センターから出版されています。非売品なのか、アマゾンで検索しましたがヒットしませんでした。私は、出版時に、赤澤 威先生から寄贈していただきました。

 このデデリエ洞窟は、1989年から2001年まで合計11回にわたって発掘調査が行われています。1993年8月23日に、このデデリエ洞窟で発見されたネアンデルタール人幼児は、当時話題になりました。実は、1997 年にはさらに、ネアンデルタール人の幼児が追加発見されています。このネアンデルタール人の発見は、1961年にイスラエルのアムッド洞窟で、鈴木 尚[1912-2004]先生が発見して以来、日本人調査団としては、2例目となります。もちろん、シリアでの日本人によるネアンデルタール人の発見は初めてで、かつシリア初です。

 本書は、以下のように、全3部16章からなります。

第1部.The Dederiyeh Cave

  • 1.A Summary of the Stratigraphic Sequence(Takeru AKAZAWA, Sultan MUHESEN, Yukio DODO, Hajime ISHIDA, Osamu KONDO, Minoru YONEDA, Christophe GRIGGO)
  • 2.The Sediment and Paleoenvironment of the Dederiyeh Cave(Takashi OGUCHI & Koichiro FUJIMOTO)
  • 3.Faunal Remains from the Dederiyeh Cave, 1993 through 1996 Excavations(Christophe GRIGGO)
  • 4.Neanderthal Burials of the Dederiyeh Cave(Takeru AKAZAWA, Sultan MUHESEN, Osamu KONDO, Yukio DODO, Minoru YONEDA, Christophe GRIGGO, Hajime ISHIDA)

第2部.Neanderthal Child of Burial No.1

  • 5.The Skull of the Neanderthal Child of Burial No.1(Yukio DODO, Osamu KONDO, Takashi NARA)
  • 6.The Postcranial Bones of the Neanderthal Child of Burial No.1(Osamu KONDO & Yukio DODO)
  • 7.The Bony Labyrinth of the Dederiyeh Child(Fred SPOOR, Jean-Jacques HUBLIN, Osamu KONDO)
  • 8.Dental Remains Excavated at the Dederiyeh Cave during the 1989-1994 Seasons(Yuji MIZOGUCHI)
  • 9.Age Determination of the Dederiyeh 1 Neanderthal Child Using Enamel Cross-Stiations(Chiharu SASAKI, Kunihiro SUZUKI, Hiroyuki MISHIMA, Yukishige KOZAWA)

第3部.Neanderthal Child of Burial No.2

  • 10.The Skull of the Neanderthal Child of Burial No.2 (Hajime ISHIDA & Osamu KONDO)
  • 11.The Postcranial Bones of the Neanderthal Child of Burial No.2 (Osamu KONDO & Hajime ISHIDA)
  • 12.The Dentition of the Neanderthal Child of Burial No.2 (Osamu KONDO & Hajime ISHIDA)
  • 13.A Study of Body Shape Based on Skeletal Reconstruction (Osamu KONDO & Yukio DODO)
  • 14.Reconstructing the Growth of a Neanderthal Skull (Makiko KOUCHI & Masaaki MOCHIMARU)
  • 15.Triangular Mesh Modeling for Anthropological Applications (Hiromasa SUZUKI・Takashi KANAI・Yasuyuki KANDORI・Kenichi TOKI・Mikio TERASAWA・Fumihiko KIMURA)
  • 16.Reconstruction of the Dederiyeh Neanderthal Child (Michiyo MIYANAGA & Akira TAKAHASHI)

Conclusions (Takeru AKAZAWA & Sultan MUHESEN)

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『Neanderthal Burials』裏表紙(*画像をクリックすると、拡大します。)


雑誌・動物考古学27.「動物考古学」第27号

2010年05月20日 | L7.動物考古学の雑誌:動物考古学[J. o

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(*画像をクリックすると、拡大します。)

 雑誌「動物考古学」の第27号は、2010年5月に、動物考古学研究会により出版されました。本号には、論文3編・研究ノート3編・資料紹介1編・その他3編が掲載されています。

(論文)

  • 植月 学「縄文時代晩期骨塚における動物遺体の形成過程」
  • 金 憲奭・西本豊弘・浪形早季子「韓国の先史時代における家畜水牛」
  • 藤井弘章「江戸時代の紀州における本草学者のウミガメ調査と漁民の民俗知識」

(研究ノート)

  • 渡辺 明・鈴木正博・西本豊弘・浪形早季子「金土貝塚の再吟味:古鬼怒湾再奥部における貝塚文化と骨角器・貝製品の新例」
  • 浅見貴子・宮内勝巳・實川 理「丸山横穴墓出土の人骨について」
  • 忍澤成視「伊豆諸島御蔵島・大隈諸島種子島における現生オオツタノハの調査:日本列島先史時代における東西の貝の道の実態解明にむけて」

(資料紹介)

  • 常松幹雄「弥生時代の動物形土製品:福岡市元岡・桑原遺跡群出土資料」

(その他)

  • 書籍紹介:斎藤 努監修『考古調査ハンドブック2.必携考古資料の自然科学調査法』(ニューサイエンス社)[西本豊弘]
  • 書籍紹介:野中健一『虫はごちそう』(小峰書店)[住田雅和]
  • 「第13回動物考古学研究集会開催報告」(2009年12月19日~同20日・ミュージアムパーク茨城県自然博物館)

私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟17(ジェルフ・アジュラ洞窟)

2010年05月20日 | D1.私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟[

 発掘調査が終了した後の1984年8月18日(日)、全員でジェルフ・アジュラ洞窟の見学に行きました。このジェルフ・アジュラ洞窟は、アメリカの有名な自然人類学者、カールトン・クーン(Carleton S. COON)[1904-1981]が、調査した洞窟です。

 クーンは、ハーヴァード大学でアーネスト・フートン(Earnest HOOTON)[1887-1954]の弟子となり、その後、ハーヴァード大学で教鞭をとった後、ペンシルヴェニア大学で1963年の引退まで人類学を教えました。第二次世界大戦中は主に北アフリカに従軍して、負傷もしており、1945年には少佐で退役しています。

 戦争中に北アフリカに従軍した経験からなのか、戦後、1948年にイラク・1949年と1951年にイラン・1954年にアフガニスタン・1955年にシリア等のアラブ諸国の遺跡を発掘調査しています。クーンは、この発掘調査の成果を、1957年に『The Seven Caves(7つの洞窟)』という本にまとめてAlfred A. Knopfから出版しました。

 この『7つの洞窟』の第8章には、シリアのジェルフ・アジュラ洞窟のことが写真と共に紹介されています。この洞窟は、ジェルフ・アジュラ洞窟という呼び名以外に、ハイファ洞窟とも呼ばれていたようです。

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ドゥアラ洞窟120.『The Seven Caves』の中扉(手持ちの本には、カバーが無く、表紙には題名が印字していないため、中扉をアップします)

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ドゥアラ洞窟121.ジェルフ・アジュラ洞窟遠景1

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ドゥアラ洞窟122.ジェルフ・アジュラ洞窟遠景2

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ドゥアラ洞窟123.ジェルフ・アジュラ洞窟近景1

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ドゥアラ洞窟124.ジェルフ・アジュラ洞窟近景2(『The Seven Caves』・プレート28より)

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ドゥアラ洞窟125.ジェルフ・アジュラ洞窟近景3

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ドゥアラ洞窟126.ジェルフ・アジュラ洞窟近景4(『The Seven Caves』・プレート31より)

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ドゥアラ洞窟127.ジェルフ・アジュラ洞窟内部1

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ドゥアラ洞窟128.ジェルフ・アジュラ洞窟内部2(『The Seven Caves』・プレート30より)

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ドゥアラ洞窟129.ジェルフ・アジュラ洞窟内部3(橋に注意。1955年に作られた橋が、約30年経た1984年時にまだ健在だった)

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ドゥアラ洞窟130.ジェルフ・アジュラ洞窟内部4(橋を作っている所)

 クーンは、自然人類学者なので、人骨を発見したかったようですが、ここでは人骨は出土しませんでした。その代わりに、石器や石器の破片を約35,312点発見しました。この内、2,007点を持ち帰ることにしたそうです。

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ドゥアラ洞窟131.ジェルフ・アジュラ洞窟脇に捨てられている石器(赤澤 威先生によると、昔はもっとあったそうです。)

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ドゥアラ洞窟132.ジェルフ・アジュラ洞窟から外を見る

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ドゥアラ洞窟133.カールトン・クーンが、死去した1981年に出版した自叙伝『Adventures and Discoveries』(Prentice-Hall出版)表紙 

 私には、どうしても不思議なことがありました。それは、あれほど発掘調査を行ったクーンが、どうしてドゥアラ洞窟を発見して発掘しなかったのかです。ところが、クーンが死去した1981年に出版された自叙伝にその理由が書いてありました。

 クーンの発掘調査時に、シリア当局からは、調査できる場所はパルミラのホテルから半径7km以内と制限されていたそうです。ただ、クーンが持ち込んだ車はアメリカの車で、「km」表示ではなく「マイル」表示だったので、何とか約10km離れた場所にあるジェルフ・アジュラ洞窟を調査できたということでした。つまり、約18km離れた場所にあるドゥアラ洞窟は、たとえ発見していたとしても調査できなかったことになります。現代では考えられない事情が、当時にはあったのです。


人類進化の洋書24.ネアンデルタール人と西アジアにおける現代人

2010年05月19日 | E6.人類進化の洋書[Human Evolution:F
Neandertals and Modern Humans in Western Asia Neandertals and Modern Humans in Western Asia
価格:¥ 13,705(税込)
発売日:1998-09-30

 この本は、国際日本文化研究センター(当時、現高知工科大学)の赤澤 威先生・東京大学の青木健一先生・ハーヴァード大学のオファー・バール-ヨセフ(Ofe BAR-YOSEF)さんによる編集で、1998年にPlenum Pressから出版されました。私は、出版時に、赤澤 威先生から寄贈していただきました。

 本書の元となったシンポジウムは、私も参加したかったのですが、仕事が重なっていたため聴講することができず、六本木のとあるレストランで開催されたパーティだけは参加したことを思い出します。

 本書は、以下のように、全4部34編の論文が掲載されています。

第1部.Issues of Evolution and Chronology

  • 1.Evolutionary Implications of Altered Persppectives on Hominine Demes and Populations in the Later Pleistocene of Western Eurasia (F. Clark HOWELL)
  • 2.Chronological and Biogeographic Perspectives on Later Human Evolution (Chris STRINGER)
  • 3.The Chronology of the Middle Paleolithic of the Levant (Ofer BAR-YOSEF)
  • 4.Progress in ESR and U-Series Chronology of the Levantine Paleolithic (Henry P. SCHWARCZ & W. J. RINK)
  • 5.GIF Laboratory Dates for Middle Paleolithic Levant (Helene VALLADAS・Norbert MERCIER・Jean-Louis JORON・Jean-Louis REYSS)
  • 6.The Faunal Sequence of the Southwest Asian Middle Paleolithic in Relation to Hominid Dispersal Events (Eitan TCHERNOV)

第2部.Arhcaeological Assemblages: Cultural Interpretations and Subsistence Strategies

  • 7.The Earliest Paleolithic Occupation in Syria (Sultan MUHESEN)
  • 8.Site Formation Processes in Kebara and Hayonim Caves and Their Significance in Levantine Prehistoric Caves (Paul GOLDBERG & Ofer BAR-YOSEF)
  • 9.Intrasite Spatial Patterns and Behavioral Modernity: Indications from the Late Levantine Mousterian Rockshelter of Tor Faraj, Southern Jordan (Donald O. HENRY)
  • 10.The Lithic Assemblages of Amud Cave: Implications for Understanding the End of the Mousterian in the Levant (Erella HOVERS)
  • 11.Hayonim Cave Lithic Assemblages in the Context of the Near Eastern Middle Paleolithic: A Preliminary Report (Liliane MEIGNEN)
  • 12.Bitumen as Hafting Material on Middle Paleolithic Artifacts from the El Kown Basin, Syria (Eric BOEDA・Jacques CONNAN・Sultan MUHESSEN)
  • 13.The Technological Abilities of the Levantine Mousterians: Cultural and Mental Capacities (Naama GOREN-INBAR & Anna BELFER-COHEN)
  • 14.The Role of Hunting and Scavenging in Neandertal Procurement Strategies: New Evidence from Kebara Cave (Israel) (John D. SPETH & Eitan TCHERNOV)
  • 15.Pleistocene Species Trends at Hayonim Cave: Changes in Climate versus Human Behavior (Mary C. STEINER & Eitan TCHERNOV)
  • 16.Neandertal and Early Modern Human Mobility Patterns: Comparing Archaeological and Anatomical Evidence (Daniel E. LIEBERMAN)
  • 17.Prospects for Stable Isotopic Analysis of Later Pleistocene Hominid Diets in West Asia and Europe (Stanley H. AMBROSE)

第3部.The Human Fossils

  • 18.Climatic Changes, Paleogeography, and the Evolution of the Neandertals (Jean-Jacques HUBLIN)
  • 19.Spiens and Neandertals: Rethinking the Levantine Middle Paleolithic Hominids(Baruch ARENSBURG & Anna BELFER-COHEN)
  • 20.Anatomy of the Neandertal Infant Skeleton from Dederiyeh Cave, Syria (百々幸雄・近藤 修・Sultan MUHESEN・赤澤 威)
  • 21.The Search for the Earliest Modern Europeans: A Comparison of the Es-Skhul 1 and Krapina 1 Juveniles (Nancy MINUGH-PURVIS)
  • 22.Does Any Mousterian Cave Present Evidence of Two Hominid Species? (Yoel RAK)
  • 23.Morphological Variation in West Asian Postcrania: Implications for Obstetric and Locomotor Behavior (Karen R. ROSENBERG)
  • 24.Ontogenetic Variation in Late Pleistocene Homo Sapiens ftom the Near East Implications for Methodological Bias in Reconstructing Evolutionary Biology (Anne-marie TILLIER)
  • 25.Upper Limb versus Lower Limb Loading Patterns among Near Eastern Middle Paleolithic Hominids (Erik TRINKAUS・Christopher B. RUFF・Steven E. CHURCHILL)
  • 26.A Reassessment of the Tabun C2 Mandible (Rolf M. QUAM & Fred H. SMITH)

第4部.Cultural and Human Evolution: Views from Neighboring Regions

  • 27.The Evolution of Culture: A Comparative Perspective (Kevin N. LALAND)
  • 28.Domestic Fire as Evidence for Language (Avraham RONEN)
  • 29.A Comparative Perspective on Paleolithic Cultural Patterns (Kathy D. SCHICK)
  • 30.The Middle and the Early Upper Paleolithic around the Black Sea (Janusz K. KOZLOWSKI)
  • 31.Turkey as a Key (Marcel OTTE)
  • 32.The Impact of Climatic Changes on the Demography of Late Neandertal and Early Anatomically Modern Populations in Europe (Paul MELLARS)
  • 33.Why Anatomically Modern People Did Not Disperse from Africa 100,000 Years Ago (Richard G. KLEIN)
  • 34.Afterward (David PILBEAM)

 本書は、日本人が主に編集したものですが、掲載された論文にはほとんど日本人研究者が含まれていないことが特徴です。しかし、当時の人類学・先史学の権威の論文が掲載されており、大変、参考になります。

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私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟16(ドゥアラ洞窟の保護)

2010年05月18日 | D1.私の仕事:発掘調査・ドゥアラ洞窟[

 ドゥアラ洞窟を保護することになりました。洞窟下から集めた石で、石垣をつくり、発掘したグリッドにはビニールシートを敷き、土砂で埋め戻しました。こうして、次回の発掘作業に備えました。

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ドゥアラ洞窟112.洞窟下から石を上げる作業

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ドゥアラ洞窟113.石で石垣を作り、洞窟を保護する作業1

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ドゥアラ洞窟114.石で石垣を作り、洞窟を保護する作業2

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ドゥアラ洞窟115.セメントで、石垣を固める作業

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ドゥアラ洞窟116.片側の石垣がセメントで固められた

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ドゥアラ洞窟117.ビニールシートをかける作業

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ドゥアラ洞窟118.ビニールシートを敷いた状態

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ドゥアラ作業119.土砂を埋め戻した状態(左:ファラハン、右:赤澤 威先生)