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人類学のススメ

人類学の世界をご紹介します。OCNの「人類学のすすめ」から、サービス終了に伴い2014年11月から移動しました。

世界の人類学者49.フアン・コーマ(Juan COMAS)[1900-1979]

2013年03月31日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Juancomas

フアン・コーマ(Juan COMAS)[1900-1979]

 フアン・コーマは、1900年1月23日に、地中海にあるスペインのメノルカ島で生まれました。コーマは、1921年に、小学校教師となります。やがて、コーマに大きな転機が訪れました。スペイン政府の奨学生として、スイスのジュネーヴ大学に留学し人類学を勉強することになったのです。コーマは、人類学者のウジェーヌ・ピタール(Eugene PITTARD)[1867-1962]の弟子となりました。スペインに戻って働きながら博士号の準備を行い、1939年に前頭縫合のテーマで論文を提出し、博士号を取得しています。

 しかし、コーマに悲劇が訪れました。1936年から1939年にかけて、母国のスペインで人民戦線とフランシスコ・フランコ率いる反乱軍との間にスペイン内戦が起こり、コーマは人民戦線側に加担したのです。フランコ率いる反乱軍が勝利した結果、コーマは、多くの科学者達と共にスペインを追放され、1939年にメキシコへと逃れます。1940年にメキシコの国籍を取得すると、メキシコ国立博物館に職を得て、1943年まで勤めました。その他、1941年には国立人類学歴史学校教授に就任し、1959年まで教鞭をとりました。この国立人類学歴史学校は、当時、メキシコ国立博物館に隣接して1938年に創立されています。

 1955年、メキシコ国立大学内に人類学セクションが設立され、コーマはその責任者に抜擢されました。コーマは、人選もまかされ、アメリカの教育体制にならって自然人類学・文化人類学・考古学・言語人類学という4つの分野を包括する人類学を目指します。

 コーマは、その他、メキシコで多くの学術雑誌も創刊し、その責任者として活躍しました。しかし、1979年1月18日、コーマは79歳の誕生日を目前にして、78歳で死去しました。スペインで生まれ、スイスで教育を受け、メキシコで人類学の基礎を築いた波乱万丈の人生と言えるでしょう。コーマは、生涯で約150の著書と論文を残しています。アメリカ自然人類学会は、学生賞としてコーマ賞を設けてコーマを記念しています。


民族学の本7.通過儀礼

2013年03月30日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of
通過儀礼 通過儀礼
価格:¥ 3,465(税込)
発売日:1999-02

 この本は、フランスの民族学者、ヴァン・ジェネップ(Arnold van GENNEP)[1873-1959]さんが書いた民族学の本です。1909年に出版されたフランス語の原題は『Les Rites de Passage』で、直訳すると本書のタイトル通り「通過儀礼」となります。秋山さと子[1923-1992]さんと彌永信義さんに翻訳で初版は1977年に出版され、新装版が1999年に、新思索社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全10章からなります。

  1. 儀礼の分類
  2. 具体的通過
  3. 個人と集団
  4. 妊娠と出産
  5. 誕生と幼年期
  6. イニシエーション儀礼
  7. 婚約と結婚
  8. 葬式
  9. その他の通過儀礼群
  10. 結論

 通過儀礼とは、出生・成人・結婚・死等、成長過程で段階を経る際に行う儀礼で、英語名ではイニシエーションと呼ばれます。この際、割礼・抜歯・刺青等が行われることが知られています。

 著者のヴァン・ジェネップはフランス語読みですが、オランダ語読みではファン・ヘネップとなり、このフランス語名でも知られています。

 ジェネップは、1873年4月23日にドイツで生まれました。その後、ソルボンヌ大学に入学しましたが、講義内容に失望し東洋語学校や高等学術院で民族学・社会学・宗教学を学びました。1897年には当時ロシア領のポーランドでフランス語教師をしながらロシア語を修得しています。その他、ジェネップは、フランス語以外に英語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語を操ったと言われており、語学に巧みでした。1901年にはパリに戻り、農業省の翻訳技官となりますが、多忙になったために1908年に退官します。1912年には、スイスのヌーシャテル大学の民族学教授に就任しますが、第一次世界大戦勃発に伴いスイスに対して挑発的文章を書いたとして、国外追放処分となりました。1915年に軍属となり、その後国語教師や外務省の情報部に勤務しますが、1922年に外務省も退官します。1957年5月7日、84歳で死去しました。ジェネップ(ヘネップ)は、「通過儀礼」という重要な用語を残しました。

Gennep1998


文化人類学の本28.カラハリ砂漠

2013年03月29日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Kimura1973

カラハリ砂漠 アフリカ最古の種族ブッシュマン探検記 (講談社文庫)
価格:¥ 294(税込)
発売日:1973

 この本は、元大阪大学の美術史家・木村重信さんが、アフリカのブッシュマンについて書いたものです。現在では、一般的に、「ブッシュマン」という名称は用いずに、「サン」が使用されています。1973年に、講談社文庫C27として、講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全5章からなります。

  • カラハリへの道
  • 砂漠の住人
  • 砂とのたたかい
  • 石器時代に生きるブッシュマン
  • 壁画の語る過ぎし年月

 本書は、1965年8月から10月に調査した際の事が書かれており、「サン」に関する貴重な民族誌です。


文化人類学の本27.東南アジアの少数民族

2013年03月28日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of
東南アジアの少数民族 (1971年) (NHKブックス) 東南アジアの少数民族 (1971年) (NHKブックス)
価格:¥ 378(税込)
発売日:1971

 この本は、元東京工業大学の文化人類学者・岩田慶治[1922-2013]さんが、東南アジアの少数民族について書いたものです。1971年に、NHKブックス137として、日本放送出版協会から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全4章からなります。

  1. 少数民族問題を考える座標
  2. 少数民族の生態
  3. 民族社会の進化
  4. 多民族社会への道:明日の東南アジアを考える

 本書の内、第2章には、東南アジアの少数民族の実例が報告されており、大変、参考になります。

Iwata1971


文化人類学の本26.極限の民族

2013年03月27日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of
極限の民族―カナダ・エスキモー,ニューギニア高地人,アラビア遊牧民 (1967年) 極限の民族―カナダ・エスキモー,ニューギニア高地人,アラビア遊牧民 (1967年)
価格:¥ 546(税込)
発売日:1967

 この本は、ジャーナリストの本田勝一さんが、カナダのエスキモー・ニューギニア高地人・アラビア遊牧民の民族誌について書いたものです。なお、現在では一般的に「エスキモー」という用語は使わずに、「イヌイット」という用語を使用しています。1967年に、朝日新聞社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全3部からなります。

  1. カナダ・エスキモー
  2. ニューギニア高地人
  3. アラビア遊牧民

 なお、巻末には、以下のように解説が3つ掲載されています。

  1. 記録と小説(竹西寛子)[小説家]
  2. 地上最後の原始文化(泉 靖一)[文化人類学者:1915-1970]
  3. 「秘境日本」発見の旅(伊藤勝彦)[哲学者]

Honda1967


文化人類学の本25.アラビア遊牧民

2013年03月26日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of
アラビア遊牧民 (講談社文庫 ほ 2-3) アラビア遊牧民 (講談社文庫 ほ 2-3)
価格:¥ 407(税込)
発売日:1972-06

 この本は、ジャーナリストの本田勝一さんが、アラビア遊牧民について書いたものです。なお、本田勝一さんには、この『アラビア遊牧民』の他に、『カナダ・エスキモー』・『ニューギニア高地人』があり、私は勝手に本田勝一さんの民族誌3部作と呼んでいます。1972年に、講談社文庫として講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全9章からなります。

  • アラビア半島内陸のサバクへ
  • 親切で慎み深いベドウィンたち
  • ラクダに人間が飼育されるような生活
  • サバクの夜の主人公は野生動物である
  • 「虚無の世界」としての大砂丘地帯
  • 羊飼いも重労働でなかなか大変だ
  • 親切で慎み深いベドウィンの正体
  • ベドウィンの方が普遍的で、日本人こそ特殊なのだ
  • 『月の砂漠』の夢と現実

 なお、巻末には、元東京大学の石田英一郎[1903-1968]さんによる「日本人とは何か」と元京都大学の米山俊直[1930-2006]さんによる解説が掲載されています。本書は、アラビア遊牧民についての貴重な民族誌です。

Honda1972


文化人類学の本24.ニューギニア高地人

2013年03月25日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Honda1971

ニューギニア高地人 (講談社文庫)
価格:¥ 398(税込)
発売日:1971-07

 この本は、ジャーナリストの本田勝一さんが、ニューギニア高地人について書いたものです。なお、本田勝一さんには、この『ニューギニア高地人』の他に、『アラビア遊牧民』・『カナダ・エスキモー』があり、私は勝手に本田勝一さんの民族誌3部作と呼んでいます。1971年に、講談社文庫として講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  • 意外なジャングル
  • モニ族の簡素で家庭的な生活
  • 石器時代も案外不便なものではない
  • アヤニ族とナッソウ山脈横断の旅へ
  • ニューギニア高地人に襲われた日本軍
  • ダニ族の団体生活と奇妙な男たち
  • ホモ・ルーデンス

 巻末には、元国立民族学博物館の石毛直道さんによる「解説:ニューギニア高地人」が掲載されています。 

 本書の中で、「指なしばあさんは語る」として、手の指10本の内親指2本を除く8本が欠けている老婆が紹介されています。これは、肉親が死ぬと石斧で指を切るという風習がかつてあった名残だそうです。本書は、ニューギニア高地人の貴重な民族誌です。


文化人類学の本23.カナダ・エスキモー

2013年03月24日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of
カナダ・エスキモー (講談社文庫 ほ 2-2) カナダ・エスキモー (講談社文庫 ほ 2-2)
価格:¥ 469(税込)
発売日:1972-02

 この本は、ジャーナリストの本田勝一さんが、カナダ・エスキモーについて書いたものです。なお、本田勝一さんには、この『カナダ・エスキモー』の他に、『ニューギニア高地人』・『アラビア遊牧民』があり、私は勝手に本田勝一さんの民族誌3部作と呼んでいます。なお、現在では一般的に「エスキモー」という用語ではなく、「イヌイット」が使われています。1972年に、講談社文庫として講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全11章からなります。

  • 「ウスアクジュ」への道
  • 極北を生きぬく知恵
  • アザラシ狩り
  • 犬を甘やかしてはならぬ
  • カリブー狩り
  • 雪の家
  • 太陽の沈まぬ国
  • セイウチ狩り
  • エスキモーの心
  • 極北の動物たち
  • 遊猟の民

 巻末には、元国立民族学博物館の祖父江孝男[1926-2012]さんによる「解説:カナダ・エスキモー」が掲載されています。本書は、1963年当時の「イヌイット」の貴重な民族誌です。

Honda19722


文化人類学の本22.アラスカ・エスキモー

2013年03月23日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Sofue1972

アラスカ・エスキモー (1972年) (現代教養文庫)
価格:¥ 252(税込)
発売日:1972

 この本は、元国立民族学博物館の文化人類学者・祖父江孝男[1926-2012]さんが、エスキモーについて書いたものです。なお、現在では一般的に「エスキモー」という用語は使われておらず、「イヌイット」が使われています。1972年に現代教養文庫753として、社会思想社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  1. 放浪の民・狩猟の民
  2. なにはなくとも楽しいわが家
  3. 妻貸しの奇習
  4. 協力とたすけあいの国
  5. 文明化するエスキモー
  6. エスキモーはアジアからきた
  7. エピローグ:日本へのあこがれ

 なお、巻末には、元北海道大学の岡田宏明[1932-2004]さんによる「その後のアラスカ・エスキモーについて」が掲載されています。

 本書は、イヌイットの貴重な民族誌です。


文化人類学の本21.マグレブ紀行

2013年03月22日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of
マグレブ紀行 (中公新書) マグレブ紀行 (中公新書)
価格:¥ 840(税込)
発売日:1999-10

 この本は、元東京外国語大学の文化人類学者・川田順造さんが1969年に北アフリカのマグレブを調査した時のことが書かれています。「マグレブ」とは、北西アフリカのリビア・チュニジア・アルジェリア・モロッコ等の国々で、「日の沈む国」という意味だそうです。1971年1月号から3月号に『中央公論』に連載された、「マグレブ紀行」が元になっています。1971年に中公新書246として、中央公論社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全4章からなります。

  1. オアシス
  2. マグレブの中のオリエント
  3. ベルベル国家を考える
  4. 文化のフロンティア

 本書は、1960年代のマグレブの民族誌として貴重です。

Kawada1971


文化人類学の本20.香港の水上居民

2013年03月21日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Kani1970

香港の水上居民―中国社会史の断面 (1970年) (岩波新書)
価格:¥ 158(税込)
発売日:1970

 この本は、元慶應義塾大学の文化人類学者・可児弘明さんが、香港の船で生活する水上生活者について書いたものです。1970年に、岩波新書青版772として、岩波書店から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  1. 六月の太陽
  2. 顔みしりの社会
  3. 住いとしての船
  4. ワンダリングと水上の幇組織
  5. 死者と生者の互恵関係
  6. 陸へあがる船上生活者
  7. 嶺南の部分文化と全体文化

 本書は、現在では姿を消した香港の水上生活者の貴重な民族誌です。


私の仕事・本15.東国の考古学

2013年03月20日 | B1.私の仕事:本[My Work:Book]
東国の考古学 東国の考古学
価格:¥ 5,250(税込)
発売日:2013-03-08

 この本は、群馬考古学研究会による編で、主に東日本の考古学について書かれたものです。2013年に、六一書房から出版されました。この本が元になったのは、1986年から2011年まで全25号出版された『東国史論』が廃刊となり、かつての執筆者達が再び筆をとったものです。

 本書の内容は、以下のように、全23編の論考が掲載されています。ちなみに、私は、「群馬県の弥生時代再葬墓出土人骨」を執筆しました。

  • 関東地方における発生期の小形石棒(角田真也)
  • 敷石住居址における居住空間の検討(本橋恵美子)
  • 群馬県の弥生時代再葬墓出土人骨(楢崎修一郎)
  • たかが柱穴、されど柱穴(その弐):もっと竪穴建物の柱痕跡を意識した調査を!(桐生直彦)
  • 竪穴式住居埋没土と土地利用:遺跡発掘調査方法に関する一提案(若林正人)
  • 墳丘構築技術にみられるふたつの画期(青木 敬)
  • 栃木県出土の人物埴輪についての覚え書き(新山保和)
  • 古墳時代における祭場の空間構造:長野県坂城街青木下遺跡Ⅱの場合(時枝 務)
  • いわき地方の貝と貝製品を供献・副葬する横穴墓考:八幡横穴墓群・餓鬼堂横穴墓群の事例を中心に(大竹憲治)
  • 多摩川にそそぐ平瀬川流域の古代史像:流域の高塚古墳・横穴墓から探る(村田文夫)
  • あづまのくに(熊倉浩靖)
  • 官社小考(森田 悌)
  • 古代の新田郡に関する諸問題(川原秀夫)
  • 左位郡と新田郡:大間々扇状地上における粕川の史的意義(関口功一)
  • 上野国の郡衙の構造と変遷:新田郡衙を中心として(小宮俊久)
  • 多胡碑の石材採石地と石材名の考察(秋池 武)
  • 瓦塔造立背景に関する仏教史的考証(序):笹生衛論考「瓦塔の景観と滅罪の信仰」批評(1)(池田敏宏)
  • 会津地方における11・12世紀の土器と集落、屋敷、城館:古代から中世への狭間の考古学的素描(山中雄志)
  • 農事の馬小屋:あなたも知らずに馬小屋を掘っていた(篠崎譲治)
  • 宝永と天明の火山灰処理(青木利文)
  • 1783年上州の天明泥流下建物跡(中島直樹)
  • 中島飛行機小泉製作所に対する米軍艦上機空襲(菊池 実)
  • 博物館と社会教育:榛東村耳飾り館における実践から(角田祥子)

 また、「東国史論」を振り返った論考も掲載されています。さらに、巻末には、「東国史論」全25号の目次が掲載されています。

  • 『東国史論』とその時代(時枝 務)

Gunmakoukogakukenkyu2013


文化人類学の本19.コプト社会に暮らす

2013年03月19日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Murayama1974

コプト社会に暮らす (1974年) (岩波新書)
価格:¥ 189(税込)
発売日:1974

 この本は、日本キリスト教団の牧師・村山盛忠さんが、1964年から1968年にかけてエジプトに宣教師として派遣された時の記録が書かれています。コプトとは、エジプトのキリスト教信徒を指します。1974年に、岩波新書青版893として、岩波新書から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全4章からなります。

  1. マハラにて
  2. コプト教会
  3. ヘルワンにて
  4. 日本人であること、宣教師であること

 本書は、1960年代のエジプトの民族誌として貴重です。


文化人類学の本18.南太平洋の環礁にて

2013年03月18日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

南太平洋の環礁にて (1967年) (岩波新書) 南太平洋の環礁にて (1967年) (岩波新書)
価格:¥ 158(税込)
発売日:1967-08-21

 この本は、元中部大学の文化人類学者・畑中幸子さんが1961年から1964年にかけて、フランス領ポリネシア・トゥアモトゥ諸島のプカルア環礁で文化人類学調査を行った結果が書かれています。1967年に、岩波新書F68として岩波書店から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全8章からなります。

  1. ポリネシア人を探しに行く:フランス領ポリネシア
  2. コプラが先か人間が先か:タヒチ島からプカルア島へ
  3. 他人のものは我がもの:小さなコミュニティ(人間集団)
  4. 時間が流れない:荒涼たる世界
  5. 招かれざる客:人間の偉大な生命力
  6. 太陽はプカルアをめぐる:人間は年をとらない
  7. 思いたったら最後:一文なしの放浪の旅
  8. 住めば都のプカルア:はるかなくにオ・タヒチ(タヒチ島)

 本書は、1960年代のプカルア環礁の民族誌として貴重な一冊です。

Hatanaka1967


世界の人類学者48.ウィリアム・ウォルター・グリューリッチ(William Walter GREULICH)[1899-1986]

2013年03月17日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Williamwaltergreulich

ウィリアム・ウォルター・グリューリッチ(William Walter GREULICH)[1899-1986][スタンフォード大学のアーカイヴより改変して引用]

 ウィリアム・ウォルター・グリューリッチは、1899年7月24日に生まれました。やがて、1926年にケニヨン・カレッジを卒業します。その後、1928年にデンヴァー大学で修士号を、1934年にはスタンフォード大学で博士号を取得しました。

 グリューリッチは、生物学を、1927年にレジス・カレッジで、1928年にはコロラド大学で教えました。その後、1931年にスタンフォード大学の解剖学教室で、1934年にはイェール大学で研究を続けます。

 やがて、グリューリッチに大きな転機が訪れました。1936年にイェール大学解剖学教室の講師、1938年に同準教授に昇任します。1940年には、ウェスタン・リザーヴ大学(現、ケース・ウェスタン・リザーヴ大学)の人類学兼解剖学の教授に就任しました。このウェスタン・リザーヴ大学には、著名な解剖学者兼人類学者のトーマス・ウィンゲート・トッド(Thomas Wingate TODD)[1885-1938]が教授として就任していましたが、1938年に死去したため、グリューリッチがその後任となったのです。ここで、グリューリッチは、アイデル・パイル(S. Idell PYLE)の協力を得て、後に有名な本『Radiographic Atlas of Skeletal Development of Hand and Wrist』のデータを収集しました。

 グリューリッチに次の転機が訪れました。1946年に、グリューリッチは、スタンフォード大学の解剖学教授に移籍します。ここで、グリューリッチは1963年に引退するまで研究を続けました。

 グリューリッチの研究テーマは、一貫して、成長と発達でした。1959年から1961年には、第16代アメリカ自然人類学会会長にも就任しています。

Greulichpyle1959_2

Greulich & Pyle(1959)『Radiographic Atlas of Skeletal Development of the Hand and Wrist』

 グリューリッチは、1964年にスタンフォード大学の名誉教授になりましたが、その後も研究を続けています。しかし、1986年10月10日に、87歳で死去しました。成長の研究に捧げた一生だと言えるでしょう。

*ウィリアム・ウォルター・グリューリッチに関する資料として、以下の文献を参考にしました。

  • Wilton Marion Krogman(1971)'William Walter Greulich: A Dedication', "American Journal of Physical Anthropology", 35: 317