人類学のススメ

人類学の世界をご紹介します。OCNの「人類学のすすめ」から、サービス終了に伴い2014年11月から移動しました。

ニホンザルの本40.「知恵」はどう伝わるか

2011年02月28日 | M3.霊長類の本:ニホンザル[Japanese M
「知恵」はどう伝わるか―ニホンザルの親から子へ渡るもの (生態学ライブラリー) 「知恵」はどう伝わるか―ニホンザルの親から子へ渡るもの (生態学ライブラリー)
価格:¥ 2,205(税込)
発売日:2002-05

 この本は、四日市大学の田中伊知郎さんが、ニホンザルの親子の関係を授乳や毛づくろいを通して書いたものです。副題には、「ニホンザルの親から子へ渡るもの」とあります。1999年に、生態学ライブラリー6として、京都大学学術出版会から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全5章からなります。

  1. 観察の始まり
  2. 授乳行動
  3. ニホンザルと物理法則
  4. 行動の社会的伝達:ニホンザルにおけるシラミ取りを中心にして
  5. 終わりに

 本書は、主に長野県の地獄谷野猿公苑のニホンザルを観察した結果が書かれています。日本語で書かれた、このようなテーマの本はあまり無いので、参考になります。

Tanaka1999


人類学史の本23.「聖嶽」事件

2011年02月27日 | H1.人類学史の本[History of Anthropol
「聖嶽」事件―報道被害と考古学論争 「聖嶽」事件―報道被害と考古学論争
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2010-03

 この本は、「聖嶽」名誉毀損訴訟弁護団編により、東北旧石器捏造事件の余波を受けた聖嶽事件報道とその影響で2001年3月9日に自殺された別府大学の賀川光夫先生について書かれたものです。2010年に、雄山閣から出版されました。副題には、「報道被害と考古学論争」とあります。

 本書の内容は、以下のように、全3部と参考資料からなります。

はじめに

第Ⅰ部.週刊文春による聖嶽報道

  1. 青天の霹靂(第1回目報道)
  2. 「捏造」の断定(第2回目報道)
  3. 3月15日号(第3回目報道)
  4. 抗議の自殺

第Ⅱ部.名誉回復への道のり

  1. 提訴へ
  2. 大分地裁での闘い
  3. 地裁での審理で明らかになった文春の報道姿勢

第Ⅲ部.勝訴まで

  1. 福岡高裁
  2. 勝訴へ
  3. 文春の裁判姿勢

参考:支援会の記録

  1. その1.支援の広がりとその経緯
  2. その2.座談会「賀川光夫先生名誉回復の裁判を終えて」

終わりに

 私は、学生時代に賀川光夫先生にお願いして、大分県枌洞窟の発掘調査に参加させていただきました。この遺跡は、縄文時代人骨が多数出土した有名な遺跡です。私にとっては、初めて多数の人骨を扱うことができた思い出深い調査でした。

 その後、思いがけず、聖嶽洞窟の第二次調査に関わることになり、調査が行われた1999年には3度お会いし、色々とお話を伺うことができました。その中で、私の子供時代のかかりつけの小児科医は賀川光夫先生と軍隊時代からの友人だということも知りました。

 賀川光夫先生が自殺なさったことは、2001年3月10日の早朝に、お茶の水女子大学の松浦秀治先生から自宅にかかってきた電話で知りました。とても驚き、かつ悲しみがこみあげてきたと同時に、賀川先生を捏造者扱いした人々に憤りを感じたことを昨日のことのように思い出します。賀川光夫先生のご冥福を改めてお祈りいたします。

Hijiridaki2010


私の仕事・報告書(その他)1.大分県聖嶽洞窟の発掘調査

2011年02月26日 | B5.私の仕事:人骨報告書・その他市町村

Harunari2001

(*画像をクリックすると、拡大します。)

 この報告書は、大分県聖嶽洞窟の発掘調査の報告書です。正確には、第二次調査の報告書となります。この聖嶽洞窟は、大分県佐伯市(第一次及び第二次調査時は本匠村)に所在し、1962年に別府大学(当時)の賀川光夫先生と新潟大学(当時)の小片 保先生等によって第一次調査が行われ、旧石器時代の人骨と石器が伴出した遺跡として有名になりました。その後、この遺跡は、高校の日本史の教科書にも掲載されていました。

 1997年に、桃山学院大学(当時)の尾本恵市先生を代表とする「日本人および日本文化の起源に関する学際的研究」(文部省科学研究費特定領域研究)が発足し、1999年12月10日から同年12月24日にかけて第二次調査が行われました。

 私は、大分県出身ということもあり、特定領域研究の考古学班班長の国立歴史民俗博物館(当時)の春成秀爾先生から依頼され、準備に奔走しました。ちなみに、調査時は、私は群馬県立自然史博物館に所属していましたが、翌年の2000年に(財)群馬県埋蔵文化財調査事業団に異動しました。実際、1999年4月23日・同11月20日と鹿児島及び大分を訪問して調整したことを思い出します。

 この第二次調査は、別府大学(当時)の橘 昌信先生を団長とし、前出の春成秀爾先生と東京都教育庁(当時)の小田静夫先生が副団長として調査は開始されました。この元に、考古学班班長はパリノ・サーヴェイ株式会社の辻本崇夫さん・古脊椎動物学班班長は愛知教育大学の河村善也先生・考古科学年大学班班長はお茶の水女子大学の松浦秀治先生が務め、私は人類学班班長を務めました。

 この第二次調査の報告書は、以下のように、全Ⅳ部14章からなります。2001年3月30日に、春成秀爾先生による編で、考古学資料集13として、国立歴史民俗博物館から出版されました。私は、人類学班副班長を務めた新潟県立歴史博物館(当時、現新潟県立看護大学)の藤田 尚さんと一緒に「人骨」について書かせていただきました。ちなみに、この遺跡は、第一次調査時は「聖岳」(ひじりだけ)と記載されていましたが、第二次調査では現地名である「聖嶽」(ひじりだき)に変更されています。

はじめに(春成秀爾)

Ⅰ部.発掘調査前史

 1章.第1次調査の概要(春成秀爾)

 2章.第2次調査の企画(春成秀爾・小田静夫)

Ⅱ部.地形・地質

 3章.周辺の地形・地質と洞窟の形態(河村善也)

Ⅲ部.発掘調査

 4章.調査の概要(橘 昌信・辻本崇夫・津村宏臣)

 5章.層序と各調査区(橘 昌信・辻本崇夫・津村宏臣)

Ⅳ部.調査結果

 6章.石器(津村宏臣)

 7章.人骨(楢崎修一郎・藤田 尚)

 8章.脊椎動物遺体(河村善也・丹羽良平・若松明希・村瀬安和)

 9章.骨遺存体の年代分析(松浦秀治・近藤 恵)

10章.炭化物の年代(今村峯雄・春成秀爾)

11章.1962年発掘頭骨の再検討(馬場悠男)

12章.1961・62年出土の石器(橘 昌信)

13章.遺跡・遺物の再検討(春成秀爾)

14章.結論

英文要旨(春成秀爾・水山昭宏)

 1999年の第二次調査では、人骨96点・歯47点の合計143点が出土しました。これらの約7割は水洗で発見されており、第一次調査の排土から発見されています。これと合わせて、本匠村歴史民俗資料館所蔵の人骨も報告しました。

 以下は、この報告書の内、「7章.人骨」と巻頭の人骨カラー部分のPDFです。全部で、3.3MBあります。

「narasakifujita2001.pdf」をダウンロード


ニホンザルの本39.食べる速さの生態学

2011年02月25日 | M3.霊長類の本:ニホンザル[Japanese M
食べる速さの生態学―サルたちの採食戦略 (生態学ライブラリー) 食べる速さの生態学―サルたちの採食戦略 (生態学ライブラリー)
価格:¥ 2,205(税込)
発売日:2002-05

 この本は、京都大学の中川尚史さんが、主にニホンザルが食物を食べる速さについて書いたものです。副題には、「サルたちの採食戦略」とあります。1999年に、生態学ライブラリー4として、京都大学学術出版会から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  1. さまざまな出会い
  2. 生息環境の質を表す尺度としての採食速度
  3. 食物パッチの質を表す尺度としての採食速度
  4. 食物の質を表す尺度としての採食速度
  5. 食物摂取量を推定する尺度としての採食速度
  6. 採食速度の個体差
  7. 社会に影響を及ぼす採食速度

 著者の中川尚史さんは、ご自分の専門を「採食生態学」とされています。本書の第7章には、「速く食べることができれば、必要なカロリーや栄養素を摂取するのに時間がかからず、採食時間が短く済む。採食時間が短く済めば、残った時間を自由に使える。・・・(中略)・・・群れを作る霊長類の場合には、群れの個体同士のお付き合いの時間も必要だ。・・・(中略)・・・実際サルを観察しているとただ何もせずにじっと休んでいる時間が、かなり多い。・・・(中略)・・・休息は他のどんな行動よりもカロリー消費量の少ない行動であるから、採食時間を短くすることが休息時間を長くとることにつながれば、その分カロリーを節約することもできそうだ。」と書かれており、興味深い考察だと思いました。

Nakagawa1999


ニホンザルの本38.スノーモンキー

2011年02月24日 | M3.霊長類の本:ニホンザル[Japanese M
スノーモンキー スノーモンキー
価格:¥ 3,675(税込)
発売日:1996-11
スノーモンキー (新潮文庫) スノーモンキー (新潮文庫)
価格:¥ 620(税込)
発売日:2001-01
スノーモンキー (とんぼの本) スノーモンキー (とんぼの本)
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2005-05-24

 本書は、写真家の岩合光昭さんによる写真・奥様の岩合日出子さんによる文で、長野県地獄谷のニホンザルについて書かれたものです。1996年に新潮社から出版され、その後、文庫化されています。

 「スノーモンキー」と聞くと、通常は、人間以外の霊長類で最も最北に生息する、青森県下北半島のニホンザルを思い浮かべますが、長野県地獄谷のニホンザルは雪深い冬には温泉に入るサルとしても有名です。

 本書は、カラー写真と文章で地獄谷のニホンザルについて紹介されており、ニホンザルの写真集として楽しむには最適の本です。

Iwago1996


ニホンザルの本37.ニホンザル

2011年02月23日 | M3.霊長類の本:ニホンザル[Japanese M

Kawaitokuda1971

 この本は、河合雅雄さんと徳田喜三郎さんによる監修・西川 治さんによる撮影で、ニホンザルについて書かれたものです。1971年に、角川書店から出版されました。アマゾンで検索しましたが、ヒットしませんでしたのでリンクさせていません。

 本書の内容は、以下のように、全4章に分かれます。

  • 雪の中に生きる(原 荘悟・徳田喜三郎・林 勝治・河合雅雄)
  • サルのリーダーと群れ(河合雅雄・杉山幸丸・竹下 完・仙石三郎)
  • サルの家族(三戸梅代・三戸サツエ)
  • セックスと文化(徳田喜三郎)

 本書は、出版されてから年月が経っていますが、ニホンザルの写真が多く掲載されており、かつ、わかりやすい文章でニホンザルの生態について書かれているので参考になります。


ニホンザルの本36.ニホンザルの自然誌

2011年02月22日 | M3.霊長類の本:ニホンザル[Japanese M
ニホンザルの自然誌―その生態的多様性と保全 ニホンザルの自然誌―その生態的多様性と保全
価格:¥ 7,980(税込)
発売日:2002-04

 この本は、森林総合研究所の大井 徹さんと増井憲一さんによる編で、2002年に東海大学出版会から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全5部からなります。第1部北のサル(第1章~3章)・第2部山岳地帯のサル(第4章~7章)・第3部里のサル(第8章~10章)・第4部南のサル(第11章~13章)・第5部ニホンザル考(第14章~17章)という内容です。

  1. 北限のサル:青森県下北半島(中山裕理)
  2. 絶滅への階梯:岩手県五葉山(大井 徹)
  3. 北国の孤島に生きる:宮城県金華山島(斉藤千映美・佐藤静枝)
  4. 森林限界を越えて:長野県北アルプス(泉山茂之)
  5. 与える者・乞うもの:栃木県日光(小金澤正昭)
  6. 豪雪の谷に生きる:石川県白山(太郎田(滝澤)均)
  7. ダムに追われるニホンザル:富山県黒部峡谷(赤座久明)
  8. 捨てられるリンゴ、そしてサル:長野県伊那谷(森光由樹)
  9. 温泉街に棲む:神奈川県西湘・静岡県熱海(岡野美佐男)
  10. 猿害防止に取り組んで:広島県広島市(林 勝治)
  11. 野外博物館の試み:広島県宮島(金井塚 務)
  12. サル学発祥の地から:宮崎県幸島(渡邊邦夫)
  13. 分布南限の島:鹿児島県屋久島(半谷吾郎)
  14. タイワンザル渡来(白井 啓)
  15. ニホンザルの形態変異と環境要因(濱田 穣)
  16. ニホンザルの生態的多様性(大井 徹)
  17. ニホンザルに学ぶ自然学の立場から(増井憲一)

 本書では、日本各地のニホンザルの生態や形態について書かれており、ニホンザルの変異が、大変参考になります。

Ooi_masui_2002


アクセス3万到達

2011年02月21日 | A2.ご挨拶[Greetings]
      
              アクセス3万到達!
 本日、2011年2月21日(月)に、アクセスが3万に到達しました。これも、このブログを訪問していただいた皆様のおかげです。このブログは、2009年6月5日から始めましたので、平均して毎月約1500・毎日約50のアクセスがあったことになります。これからも、どうぞ、よろしくお願いいたします。

ニホンザルの本35.ニホンザルの自然社会

2011年02月21日 | M3.霊長類の本:ニホンザル[Japanese M
ニホンザルの自然社会―エコミュージアムとしての屋久島 ニホンザルの自然社会―エコミュージアムとしての屋久島
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2000-01

 この本は、関西学院大学の高畑由起夫さんと京都大学の山極寿一さんによる編で、屋久島のニホンザルについて書かれたものです。副題には、「エコミュージアムとしての屋久島」とあります。2000年に、京都大学学術出版会から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  • 序章.私たちはサルと屋久島から何を学んだのか?(高畑由起夫・山極寿一)
  • 第1章.サルの分布を決めるもの(半谷吾郎・座間耕一郎・好廣眞一)
  • 第2章.サルと植物(野間直彦)
  • 第3章.ヤクシマザルの彩食行動と群れの社会変動(丸橋珠樹)
  • 第4章.雌と雄の生活史(古市剛史)
  • 第5章.コミュニケーション:クー・コールを通してニホンザルの心をのぞく(杉浦秀樹・田中俊明)
  • 第6章.自然保護の歴史(丸橋珠樹)
  • 第7章.屋久島オープン・フィールド博物館への道(湯本貴和)

 本書は、屋久島のニホンザルについて、最新の情報が書かれており、大変、参考になります。

Takahata_yamagiwa_2000


私の仕事・本13.身体発達

2011年02月20日 | B1.私の仕事:本[My Work:Book]

Shintaihattatsuf

(*画像をクリックすると、拡大します。)

 この『身体発達』は、日本女子体育大学(当時)の片岡洵子先生・大妻女子大学の真家和生先生・電気通信大学(当時)の坂本和義先生による編集で、2001年9月22日に、ぶんしん出版から出版されました。その後、何度か改訂されています。私は、第2章ヒトの発達と老化の内、「2.2 骨の発達と老化」(p.88からp.107)を分担執筆しました。

 本書の内容は、以下のように、全4章13に分かれます。

序章(片岡洵子)

第1章.進化から見たヒトの身体の発達

 1.1 進化からみたヒトの身体の特徴(真家和生)

 1.2 進化からみたヒトの器官の発達(西原克成)

第2章.ヒトの発達と老化

 2.1 感覚器の発達と老化(坂本和義)

 2.2 骨の発達と老化(楢崎修一郎)

 2.3 筋肉の発達と老化(室 増男)

 2.4 脳・神経の発達と老化(板倉直明)

 2.5 体力の発達と老化(与那正栄)

第3章.子どもの身体発達

 3.1 ことばの発達(二階堂邦子)

 3.2 あそびの発達(高崎裕治)

 3.3 運動の発達(桜木真智子)

 3.4 障害児の運動の発達(山崎昌廣)

第4章.ヒトの一生における身体発達と老化

 4.1 ヒトの一生における身体発達と適切な運動(片岡洵子)

 4.2 高齢者の生活と健康(鈴木隆雄)

Shintaihattatsub

(*画像をクリックすると、拡大します。)

*以下は、私が分担執筆した「骨の発達と老化」のPDF(1.77MB)です。

「Shintaihattatsu.pdf」をダウンロード


私の仕事・和文論文5.遺跡における出土人骨の取り扱い方

2011年02月19日 | B2.私の仕事:論文・和文[My Work:Pap

Bgarf19f

(*画像をクリックすると、拡大します。)

 この論文「遺跡における出土人骨の取り扱い方」は、2001年4月27日に、(財)群馬県埋蔵文化財調査事業団の『研究紀要第19号』に書いたもので、p.105からp.114に掲載されました。実際は、論文というよりはマニュアルのようなものですが・・・。

 この論文の要旨は、以下の通りです。

[要旨]

 これまでは、人類学者に遺跡での出土人骨の発掘を依頼する例が多かったが、近年、人骨の形態学を専攻する人類学者の数が激減しているため、考古学者が人骨を取り上げざるをえない状況がおきている。そこで、本稿では、人骨の特徴について図を用いて解説し、発掘方法・記録方法・梱包・クリーニング・保存方法・注記の位置・科学分析を依頼する際の注意点について解説した。人類学者は、人骨からその性別・死亡年齢・身長等を推定するが、その際、重要な部位は頭蓋骨・歯・上腕骨・寛骨・大腿骨・脛骨であり、次に橈骨・尺骨・腓骨・脊椎骨の順番となる。理想的には、すべての人骨を注意深く取り上げることは言うまでもないが、もし、あまりにも保存が悪い場合や取り上げを急いでいる場合は、頭蓋骨と歯を重要視すると良い。また、歯だけでも性別と死亡年齢をある程度は推定できるので、歯冠部だけでもきちんと取り上げると良い。取り上げの際は、少しずつ人骨を露出させて、乾燥させてから取り上げると破損しにくい。手や足には、全体の206個の骨の内、106個もの小さな骨があるので、一つ一つを取り上げるよりも、一括して取り上げた方がかえって人骨の漏れが少なくなる。また、頭蓋骨周辺には、上顎骨や下顎骨からはずれた歯が見つかる可能性が高いので、注意深く掘るか、ふるいにかけると良い。現場での保存処置は、あまりすすめられない。特に、パラフィンの使用は止めるべきであり、水溶性ボンドを水に溶かしたものを塗布すると年代測定にかけられない。もし、保存処置が必要な場合は、B-76を使用し、人骨の水洗やクリーニングが終了し、乾燥し終わった状態で室内で行う方が良い。取り上げた後の人骨は、密封性の高い容器には入れず、十分に乾燥させてから容器に入れるようにする。また、軍手を使用したり、紙・脱脂綿や綿を梱包材に使用すると年代測定に支障が出る。年代測定用の試料には、肋骨・大腿骨や脛骨の緻密質・歯根が良い。DNA分析の試料には、肋骨・脊椎骨・歯根が良い。食性分析には、肋骨が良い。

 論文の構成は、以下のように、全13部に分かれます。

  1. はじめに
  2. 人骨の特徴
  3. 人骨から得られる情報
  4. 発掘方法
  5. 記録方法
  6. 梱包及び輸送
  7. クリーニング
  8. 保存方法
  9. 注記
  10. 鑑定
  11. 報告書
  12. 科学分析
  13. おわりに

Bgarf19b

(*画像をクリックすると、拡大します。)

*以下は、この論文「遺跡における出土人骨の取り扱い方」のPDF(2.15MB)です。

「BGARF19.pdf」をダウンロード

 


ニホンザルの本34.ニホンザルの母と子

2011年02月18日 | M3.霊長類の本:ニホンザル[Japanese M
ニホンザルの母と子 ニホンザルの母と子
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:1999-07

 この本は、大阪大学の中道正之さんが、ニホンザルの母子関係について書いたものです。1999年に、福村出版から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  1. 子ザルの誕生
  2. 子ザルの成長
  3. 子育てスタイル
  4. 柔軟な子育て
  5. 子ザルの社会的発達
  6. おとなのメス
  7. 第一位オスの交代

 本書では、主にニホンザルの母子関係について書かれています。第4章には、ニホンザルの母親が死んだ子ザルを持ち運ぶ事例が紹介されていますが、ワオキツネザルの事例も紹介されています。ワオキツネザルの母親は、子ザルが死んだ場合特有の音声を出すものの、死体を持ち運ぶという行動が目撃されていないそうですが、それは手がものをつかむようにはできていないためという見解が示されており、大変、興味深い内容でした。

Nakamichi_1999


ニホンザルの本33.サルの群れの歴史

2011年02月17日 | M3.霊長類の本:ニホンザル[Japanese M
サルの群れの歴史―岡山県勝山集団の36年の記録 サルの群れの歴史―岡山県勝山集団の36年の記録
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:1997-11

 この本は、武庫川女子大学の糸魚川直祐さんが、岡山県勝山の野生ニホンザルについて書いたものです。1997年に、どうぶつ社から出版されました。副題には、「岡山県勝山集団の36年の記録」とあります。

 本書の内容は、以下のように、全7章からなります。

  • 第1章.観察のはじまりと経過
  • 第2章.集団のメンバー構成
  • 第3章.母系血縁系
  • 第4章.成体オス
  • 第5章.集団の変遷
  • 第6章.サルの群れの歴史
  • 補章.変わる社会と変わらぬ社会

 本書は、大阪大学文学部心理学教室・大阪大学人間科学部比較行動論講座・大阪大学人間科学部附属比較行動実験施設が、1958年以来、岡山県勝山の野生ニホンザルを長期にわたって観察した結果が書かれており、参考になります。

Itoigawa_1997


ニホンザルの本32.今わかる!サル山のすべて

2011年02月16日 | M3.霊長類の本:ニホンザル[Japanese M
今わかる!サル山のすべて―赤面でござるのライフ&セックス大開帳 今わかる!サル山のすべて―赤面でござるのライフ&セックス大開帳
価格:¥ 1,300(税込)
発売日:1997-04

 この本は、長野県環境保全研究所の陸 斉(くが ひとし)さんによる監修・サル山研究会による編で、動物園のニホンザルのサル山について書かれたものです。1997年に、どうぶつ出版から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全13章からなります。

  • ビバ・サル山
  • ウキウキ・サルブロマイド
  • サルマンガッ!
  • サルに聞いた抱かれたい・抱きたい芸能人BEST3
  • そこのあなた!買わずに立ちサルべからず
  • サル山への扉
  • こんなの答えられん!
  • サル度チェック
  • サルの故事ことわざ:その1
  • サル山に捧げるオマージュ
  • サルの故事ことわざ:その2
  • サル晴れた日に
  • サル新聞

 ニホンザルのサル山は、日本国内の多くの動物園にあります。本書の中でも、「サル山への扉」では、全29問の質問に対して回答する形でわかりやすく疑問が整理されており、大変、参考になります。

Saruyama_1997


ニホンザルの本31.日本文化と猿

2011年02月15日 | M3.霊長類の本:ニホンザル[Japanese M
日本文化と猿 (平凡社選書 (154)) 日本文化と猿 (平凡社選書 (154))
価格:¥ 2,835(税込)
発売日:1995-01

 この本は、アメリカのウィスコンシン大学の大貫恵美子さんが、ニホンザルと日本文化の関わりについて書いたものです。1995年に、平凡社選書154として、平凡社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全4部8章からなります。

第1部.猿と日本文化

 第1章.理論的背景

 第2章.日本人の隠喩としての猿

第2部.意味の歴史的変容

 第3章.日本文化の中で猿が担った役割と意味:その歴史的変容

 第4章.象徴人類学における社会的背景:猿廻しの歴史

 第5章.日本人の再帰性における非定住民および猿の位置づけ

第3部.意味構造:基本構造・プロセスとコンテキストの中での構造・多重構造

 第6章.中世後期の猿廻しの芸

 第7章.現代の猿廻し

第4部.仲介から再帰性へ:猿の意味の歴史的変容と儀礼の構造

 第8章.歴史・神話・儀礼における意味の構造

 本書は、文化人類学を専攻する著者の大貫恵美子さんが、文献と猿廻しのフィールド研究により日本文化におけるニホンザルが書かれており、大変、参考になります。

Onuki_1995